イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:ガザ紛争犠牲者のための裁きが予断を許さない状態に

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2010年9月17日
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争
2008年から2009年にかけてガザとイスラエル南部で起こった紛争の間に、イスラエル軍とパレスチナ武装グループ双方が戦争犯罪、人道に対する罪の可能性のある行為、その他国際法の重大な違反行為をしたと国連事実調査団が結論づけてから1年経った今日、アムネスティ・インターナショナルは説明責任が今なお果たされていないことを非難するとともに、裁きを求める犠牲者の希望が今や予断を許さない状態にあると警告する。

9月13日の月曜日に始まった今会期の間、国連人権理事会はイスラエルとパレスチナ双方の部隊が犯したと申し立てられている犯罪を調査するために、両者がどのような手段を講じたか、またその調査の程度と効果について検証するため、2010年3月に理事会が任命した専門家委員会の報告書を考究することになっている。

調査に対しアムネスティが独自に行った評価によると必然だと思われるが、とくにもし専門家委員会が、両者ともに適切な調査をしていないか、犯した犯罪のための裁きと説明責任を確保するための手段を講じていないと報告しているのならば、理事会は国際的な司法解決を求める時が今訪れているのかどうかも、熟慮しなければならない、とアムネスティは考えている。

リチャード・ゴールドストーン判事に率いられたガザ紛争についての国連事実調査団の報告書は、イスラエル政府とガザ地区の関係当局が誠実な調査を行なうために6カ月の猶予を与えられるべきだと勧告した。それに応え、国連人権理事会と国連総会はイスラエルとパレスチナの当局に対して、独立した信頼性のある、そして国際基準に合致した調査を行なうよう要請した。

イスラエル当局および事実上の統治者であるハマス双方ともに、そのような調査を行なったり、国際法の下で犯罪者を訴追するための取り組みを明示したりする義務を果たしていないというのが、現在本件について手に入る情報を元にしたアムネスティの評価である。もしこのことが専門家委員会によって確証されれば、人権理事会は国際刑事裁判所(ICC)を関与させる可能性も含め、両当局が内部手段で紛争犠牲者のための説明責任を確保し国際的な司法解決を支える機会を逸した、と結論づけなければならない。

2009年1月22日時点でイスラエル、パレスチナ自治政府ともにICCのローマ規程を批准していないが、パレスチナ自治政府の代表としてパレスチナの法務大臣は「2002年7月1日以来パレスチナ地域で犯された」犯罪についての管轄権を受け入れるとの宣言をICCに提出している。この宣言は事実調査団の報告書に記載されているすべての犯罪をカバーする可能性を秘めている。

多くの指導的な国際法専門家たちは、国家としてのパレスチナの地位については議論の余地があるけれども、パレスチナ自治政府がそのような宣言をする資格はあるという見解を示している。

もし専門家委員会の報告書で、両当局が本当に犯罪を調査したり訴追したりすることができず、そのつもりもないと確認されたならば、ICCの検察官はICCが管轄権を有しているかどうかについて公式の司法決定を模索すべきである。もし管轄権を有しているなら、検察官はICCの予審裁判部に対して直ちに調査を正式に認可するよう要請すべきである。もし予審裁判部が、ICC検察官はパレスチナ自治政府の宣言に基づいて行動できないと決定するならば、国連安全保障理事会がこの状況をICC検察官に付託する法的資格を有することになる。

さらに、専門家委員会の調査結果とICCの調査の状況に関係なく、紛争中になされた国際法下の犯罪についての普遍的管轄権をすべての国家が国際法の下、行使できることをアムネスティは明記しておく。したがって、戦争犯罪もしくは他の重大な国際法違反に関与した証拠がある人びとは、普遍的管轄権を行使する国家に入国した場合、逮捕され、裁かれるべきなのである。

背景情報

2008年12月27日から2009年1月18日の間、およそ1,400名のパレスチナ人と13名のイスラエル人が22日間の紛争で殺害された。イスラエル人の3名とパレスチナ人死亡者の数百名は民間人であった。

2009年9月15日に発表された事実調査団の報告書は、著名な南アフリカの裁判官であるリチャード・ゴールドストーン判事の指揮の下でまとめられたものである。その報告書は、向う見ずに行動し、民間人の生命を軽視し、軍事目標と民間人を区別しなかった結果、多数の死傷者が出た事件とともに、国連施設や民間財産、インフラ、医療施設・職員への攻撃を含むイスラエル軍による一連の重大な違反行為を記載している。報告書はまた、ハマスと他のパレスチナ武装グループによるガザからイスラエル南部に向けて放たれる無差別ロケット弾の発射が、戦争犯罪を構成していると述べている。

2010年3月25日に人権理事会で採択された決議13/9は、全当事者による事実調査団の勧告実施の際の進捗状況について、第15会期(2010年9月13日から10月1日まで)の理事会で国連事務総長が包括的報告書を提出するよう求めていた。2010年8月、事務総長は人権高等弁務官が内部調査に関してイスラエルとパレスチナの国連派遣団から受け取った文書を理事会の専門家委員会に送るよう要請した。ガザ紛争についての国連事実調査団の報告書に対する事務総長の2回目の追跡調査では、事実上の統治者であるハマスからの資料を含んでおらず、イスラエルとパレスチナの調査の適切性についての本質的な評価がなされていなかった。

アムネアスティ発表国際ニュース
2010年9月15日