イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:ガザ・イスラエル紛争における説明責任の必要性

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2013年3月 1日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争

イスラエル政府とパレスチナ武装グループの双方は、2012年11月のガザとイスラエル南部での8日間の武力紛争の間、戦争犯罪や国際法の下での犯罪などの人権侵害を行なった。アムネスティ・インターナショナルは、それらの人権侵害に対して、司法の裁きや真相究明、補償の問題に取り組むことを望んでいる。

ガザとイスラエル南部において2008年から2009年にかけてあった武力紛争でイスラエル軍、パレスチナ武装グループ双方がおかした戦争犯罪、および人道に対する罪の可能性のある行為について、国際法に沿って調査を行なうことをイスラエル政府および事実上の統治者であるハマスは怠ってきた。その結果、8日間の武力紛争で人権侵害が生じた。人権理事会や国連事務総長、国連総会に信頼すべき報告書がいくつか提出されたにもかかわらず、国連安全保障理事会はこのガザの状況について国際刑事裁判所(ICC)検察官へ付託していない。2008-2009年の戦争犯罪を含む国際法の下での犯罪について説明責任や実施義務を果たさないことは、免責や違反行為のサイクルを助長することになる。

イスラエル軍は2012年11月14日、「防御の柱」というコードネームの大規模な軍事作戦をガザで開始し、最初の空爆でハマスの軍事部門の指導者を殺害した。それからの8日間、エジプトの仲介による休戦合意が11月21日になされるまで、30名余の子どもたちとおよそ70名の民間人を含む約150名のパレスチナ人、4名の民間人を含む6名のイスラエル人が犠牲になった。イスラエル軍やハマスの軍事部門、他のパレスチナ武装グループの行為は、戦争犯罪であった。イスラエル空軍は居住区域に爆撃とミサイル攻撃を行なった。桁外れの攻撃もあり、その結果民間人の死傷者が多数発生した。イスラエルは、民間の施設と軍事目標を常に区別するという義務にしたがっていないケースがいくつかあったようである。数度の無差別攻撃を行ない、民間の所有物、報道関係施設、政府の建物や警察署を損壊させた。イスラエル海軍もまた、人口が密集した沿岸地域に無差別砲撃を行なっている。

2012年11月18日、8歳未満の子ども4名と10代の少女1名、成人女性4名を含むアル=ダル家の10名と近所の住民2名は、イスラエル軍のガザ市空爆で自宅を攻撃され殺された。イスラエル軍の報道官が「攻撃は偶発的だった」「戦闘員を狙った」などあれこれ語った。だが、その主張を裏づける証拠はなく、対象物の名称も違っていた。

2012年11月19日には、5歳のモハメド・アブ・ズールと叔父2名が殺され、多数が負傷した。近所の家屋がイスラエル空爆の標的となっていたのである。

2012年11月のガザ紛争の間、ハマスの軍事部門と他のパレスチナ武装グループは1500発余りのロケット弾と迫撃砲弾をイスラエルに向けて発射し、民間人を殺害し、民間の財産に損害を与えた。

11月の武力紛争が拡大する間とその前にも、ハマスやファタハ、イスラム聖戦、パレスチナ解放人民戦線、サラフィー主義者のグループと連携するパレスチナ武装グループは、イスラエルに向けてロケット弾と迫撃砲弾を無差別発射することで戦争犯罪を犯している。いくつかはガザに落下し、少なくとも2名のパレスチナ人が殺された。イスラエルの家屋や他の建物に命中し、4名のイスラエルの民間人を殺害し多数を負傷させ、民間の財産に損害を与えたものもある。犯罪責任の容疑者たちは、ハマス当局によって責任を問われてはいない。

2012年6月19日、パレスチナ武装グループが発射したロケット弾がガザ市アル・ゼイトゥン近郊の家屋に命中し、自宅にいた2歳のハディール・アーマド・ハダッドは殺され、8歳の従兄弟は重傷を負った。

2012年11月15日、ガザのパレスチナ武装グループが無差別に発射したロケット弾が、キルヤット・マラチの家屋に当たり、ミラ・シャルフ、イツク・アムサレム、アーロン・スマジャのイスラエル民間人3人が殺され、数名が負傷した。

2012年11月21日に成立した休戦はおおむね守られた。だが、イスラエルが立入禁止区域と見なすガザの境界区域内で、同国兵士がパレスチナ人に向けて発砲している。その際に約4名のパレスチナ人が殺され、2歳の子どもたちを含む多数が負傷した。

報道によると2013年2月6日、イスラエル軍法務総監であるダニー・エフロニ少将は、2012年11月の軍事作戦の間にパレスチナ民間人が殺された70件について調査を開始すると表明した。調査の詳細は不明だが、以前のイスラエル軍の調査のやり方から見て、当初の調査は単に軍人による軍人のための作戦上の任務報告となるかもしれないと、アムネスティ・インターナショナルは懸念している。この調査は国際法や他の調査基準を満たすものではない。それらの法・基準は、調査当局が軍から独立していること、刑事責任追及の目的での捜査資格があること、命令を下した上官や政府高官を含む全当事者を尋問する権限が与えられていることを要件としている。つまり、国際法の下での犯罪責任があると訴えられた者は、他のあらゆる特別な管轄権、特に軍事的な管轄権を排して、通常の文民法廷の管轄権においてでのみ捜査されなければならない。

同様に事実上の統治者であるハマスについては、調査を開始したのか、無差別ロケット弾発射の方針変更を検討しているのかさえも分からない。

2012年11月のガザ紛争終結後、パレスチナが国連総会で非加盟国家の認定を受けたことを、アムネスティは注目している。もしパレスチナがICCを定めたローマ規程に加盟すれば、国際法下の犯罪の個人の刑事責任を追及する見通しが大きく開けるだろう。

司法の裁きと真相究明、補償は、免責と将来の違反行為に対する最善の予防策である。アムネスティは、人権理事会に対し、2012年11月と2008年12月から2009年1月にかけてガザ紛争の当事者が犯した犯罪の裁きと真相究明、補償を追求するよう要請する。

またイスラエルと、ガザの事実上の統治者であるハマスに対して、2012年11月の国際法の下での犯罪と他の人権侵害の報告について迅速かつ徹底的、独立的、中立的調査を実行するよう人権理事会が要請することを求める。

さらに、アムネスティは人権理事会が国際社会に対し、国際法の下での犯罪調査のため、ガザ地区とイスラエルに適切な資格を持つ専門監視員の派遣を要請するよう促す。調査が行なわれ、刑事責任の容疑者が裁かれるまで、安保理は紛争当事者すべてへの武器禁輸を実施しなければならない。禁輸措置が解かれるまで、すべての国家はイスラエル、事実上の統治者であるハマス、ガザのパレスチナ武装グループへの武器、弾薬、関連装備の輸出を即時中止すべきである。

人権理事会が国際社会に対し、普遍的管轄権と国際刑事裁判所(ICC)経由など国際レベルでの裁きと真相究明、補償へのあらゆる道を開いておくよう促すことを、アムネスティ・インターナショナルは要請する。

また人権理事会がパレスチナに対し、留保や留保宣言することなく、ローマ規程および関連するすべての人権条約、人道法の条約に直ちに加盟するよう促すことを、アムネスティ・インターナショナルは要請する。

アムネスティ国際ニュース
2013年2月20日