- 2014年9月19日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:タイ
- トピック:
軍は5月20日に戒厳令を敷き、その2日後に権力を掌握した。(C) epa
何百にも上る恣意的拘束、拷問や虐待の報告、表現と集会の自由の全面規制、軍事法廷の不当な裁判がタイで不安を引き起こしているが、いまだ終息の兆しはない。
アムネスティは、5月20日に軍が戒厳令を発令しその2日後に権力を掌握して以来の人権状況を包括的に調査し、報告書にまとめた。
クーデターから3カ月、調査で浮かび上がって来たのは、軍事政権による幅広い人権侵害だ。
当局は、人びとの不安を煽るような抑圧や人権侵害に終止符を打ち、国際的人権義務を尊重し、オープンな討論、議論を認めるべきだ。
以下は、報告書の要旨である。
恣意的拘束
「国家平和秩序評議会」として知られる軍事政権は反対意見を抑えるために恣意的な逮捕や拘束を組織的に行っており、その数は数百人に上る。その多くが前政権の協力者だった。
拘束は長くても1週間ほどだが、起訴も裁判もなく弁護士との接見もできず、外部との連絡を絶たれる場合もあった。釈放条件として「政治的活動」に従事しないことを約束する念書に署名したため、いつ起訴されるかわからない恐怖のもとに暮らしている人もいる。
拷問と虐待
アムネスティは、多くの人が殴打、窒息や模擬処刑などの拷問を受けているという信頼に足る情報を得ている。同国の拷問は長年問題となっており、以前戒厳令が施行された地域をはじめとする拘束場所で広く行われている。
5月27日に拘束された政治活動家クリツダ・カナセンさんは、取り調べ中兵士らから繰り返し激しい殴打を受けビニール袋を被せられて窒息させられそうになった。
表現と平和的集会の自由
「国家平和秩序評議会」はまた、表現と平和的集会の自由を全面的に規制しているが、その結果、人びとは議論の場を失い、自己検閲をするという事態になっている。
インターネットでは数百のサイトが削除されたりブロックされている。マスコミを監視する検閲委員会が設置され、ネット上で軍に批判すると投獄される恐れもある。
人権擁護家
表現と平和的集会の自由の規制は、アムネスティ・タイ支部などの人権擁護団体や活動家に重大な影響を及ぼしている。
また、クーデター以前に始まった記者や人権活動家を名誉棄損罪で起訴する動きは、今も続いている。
勧告
この報告書は、タイが人権を回復し国際的義務に見合う人権を保障するように勧告している。
軍事政権は国民和解を果たすことを目標に掲げている。そうであるならば、方向を転換し人権を尊重するよう、国際社会は、現在行われている国連人権理事会の定期会合などあらゆる機会を利用して、軍事政権に促すべきだ。
アムネスティ国際ニュース
2014年9月11日
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