イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:ガザ住宅攻撃の惨劇が明らかに

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2014年11月 6日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争

がれきと化した自宅に座り込み、ガザ紛争で破壊された家々 を見つめるパレスチナの子ども (C)2014 Pacific Press
がれきと化した自宅に座り込み、ガザ紛争で破壊された家々 を見つめるパレスチナの子ども (C)2014 Pacific Press

イスラエル軍は、ガザ地区で家族が在宅中の家々を攻撃し、多数の民間人を殺害してきた。中には戦争犯罪に相当するものもある。アムネスティ・インターナショナルは、この攻撃の実態を、最新の報告書で明らかにした。

今年7月から8月にかけイスラエル軍の「境界防衛」作戦で、多くの住居がなんの警告もなく、住民もろとも激しい攻撃を受けた。アムネスティは、報告書「瓦礫の下の家族:住宅街へのイスラエルの攻撃」の中で、この攻撃の8つのケースを詳述した。一連の攻撃で、子ども62人を含む104人以上が殺された。イスラエルがしばしば、大規模な空爆でガザの民間住宅を壊滅状態にし、ときに家族全員を殺害している実態を明らかにした。

イスラエル軍は、大胆にも戦争法を無視して住宅街に何度も攻撃を加えているにもかかわらず、虐殺行為を何とも思っていない様子である。

アムネスティは、調査の過程で数多くの証言を生存者から得た。証言した人びとは、姿が見えない最愛の子どもや家族を探して、破壊された自宅の瓦礫を必死に掘り起こしたという。

調査した複数のケースで、軍事目標らしき人物を確認した。しかし、いずれの場合でも、イスラエルが行った市民の大量殺害と財産破壊は、攻撃で得た軍事的利益に対して明らかに過剰である。

たとえ、これらの住宅街の1家屋に戦闘員がいたとしても、イスラエルは、戦闘に巻き込む民間人の生命を保護するために可能なあらゆる事前措置を取る義務を免れない。過剰な攻撃の繰り返しによって、その戦術は欠陥だらけで、国際人道法(戦争法)の原則とはまったく相容れないことが明らかである。

最も犠牲者を多く出した攻撃は、アル=ダリ家の3階建の建物に対するもので、4家族36人が殺された。うち18人が子どもだった。イスラエルはこの家屋を狙った理由を公表していないが、アムネスティは家屋内に軍事目標らしき複数の人物を確認した。

1人の戦闘員を狙って25人の民間人が犠牲に

次に犠牲が多かったのは、ハマスの軍事部門であるアル=カッサム旅団のメンバーを標的にした攻撃だろう。標的の人物はアブ=ジャメ家の外にいた。家屋は完全に破壊され、子ども19人を含む市民25人が殺された。標的が何であったにせよ、この2つの攻撃は甚だしく過剰な攻撃に該当し、国際法上、家屋内に多数の一般住民がいると分かった時点で、中止もしくは延期すべきであった。

イスラエル高官は、これらの攻撃を正当だとする根拠を挙げていない。調査したケースの中には、アムネスティが軍事目標を確認できなかった場合もある。こうしたケースでは、故意に民間人もしくは民用物を直接狙った模様で、これは戦争犯罪にあたる。

調査したすべてのケースで、標的となった家の住民には何の事前警告もなかった。もし警告があったなら、これほどの犠牲は避けられたのは明白だろう。これは悲劇である。市民の被害を最小限にする法的義務が明らかにあり、その手段がある場合、当局には、一般住民が多くいる家を意図的に破壊する理由を説明する責任がある。

住宅街へのイスラエルの攻撃は、家族全員の生命を奪う悲劇的な結末をもたらした。攻撃を受けた中には、安全を求めてガザの他の地域から逃れてきた親類であふれかえっていた家庭もあった。

ミサイル3発が命中したアル=ハラック宅は、ほこりと混乱の中、ばらばらになった体の部位があちこちに散乱する凄惨な状況に陥った。

パレスチナ医療評議会の医師で、その家屋に住んでいたハリル・アベド・ハッサン・アマールさんは、当時の様子を次のように語っている。「誰も助けられなかったということが恐ろしかった。子どもたちは皆、焼け焦げ、誰が自分の子で誰が近所の子なのかも分からなかった。救急車に運べる者は誰でも運んだ。判別できたのは長男のイブラヒムだけ。履いていた靴で分かったんだ。2日前に買ってやったばかりだった」。

近所に住んでいたアイマン・ハニヤさんは、生存者を探すトラウマについて語った。
「思い出せるのは、目撃した体の一部だけ。歯や頭、腕、内臓、すべてが散乱していた」。同じ家屋の別の生存者は、息子の体の断片で一杯になったバッグを抱きしめていたことを話してくれた。

重大な国際法違反行為が裁かれない

イスラエルは今のところ、この報告書に詳述した攻撃のいずれについても認めていない。アムネスティが攻撃理由の説明を求めたが、回答していない。

紛争中、少なくとも1万8000軒が破壊もしくは居住不能となった。最近のガザ紛争でのイスラエル軍の攻撃で、子ども519人を含むパレスチナ市民1500人余りが殺された。パレスチナ武装グループもまた戦争犯罪を行っており、イスラエルに向けてロケット弾数千発を発射し、子ども1人を含む市民6人を殺害した。

今、肝心なことは、国際人道法のいかなる違反行為についても説明責任があるということであり、イスラエル当局はこれに応えなければならない。国際社会は、重大な違反行為とまったく裁かれないという罪という悪循環が長く続いている状況を終わらせるために、緊急に手段を講じなければならない。

イスラエルとパレスチナ当局が戦争犯罪の申し立てに対する公平な独立調査を怠ってきたことを考えると、国際社会は国際刑事裁判所の関与を支持することが肝要である。

アムネスティはイスラエルとパレスチナ当局に対し、ローマ規程に加入し、国際刑事裁判所にイスラエルと被占領パレスチナ地域(OPT)でなされた犯罪を捜査する権限を付与することを、あらためて要請する。アムネスティはまた国連安全保障理事会に対して、イスラエルと被占領パレスチナ地域における状況を国際刑事裁判所に付託するよう求める。そうすることで同裁判所の検察官は、すべての当事者が犯したとされる国際法上の犯罪の申し立てについて捜査できる。

イスラエルは、アムネスティなどの国際人権組織のガザへの立ち入りを拒みつづけている。アムネスティはガザに拠点を置く2人のフィールドワーカーの助けを得て、離れた場所からこの報告書のための調査を行なわざるをえなかった。イスラエルはまた、国連人権理事会によって設立された調査委員会にも協力しないと表明している。

イスラエルが独立した人権監視員をガザに入れることを認めないのには、違反行為を隠ぺいする、もしくは国際社会から隠そうとする意図が見て取れる。自らの人権への取り組みを証明するには、国連の調査団に全面的に協力し、アムネスティのような国際人権組織のガザへの立ち入りを許可しなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2014年11月5日