- 2014年11月26日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:フィリピン
- トピック:
容疑者の写真を見つめるマギンダナオ州知事のエスマエル・マグダダトゥ氏。彼は、フィリピン最悪の政治的虐殺事件で親族を失った。(C)NOEL CELIS/AFP/Getty Images
ジャーナリストに対する世界最大の攻撃とされるマギンダナオの虐殺事件へのフィリピン当局の対応は非常に遅く、このままでは、司法に対する愚弄となる。
2009年11月23日、立候補者の一行が100人以上の武装した者たちに襲撃され、58人が殺害された。犠牲者の中には同行していたジャーナリストなどメディア関係者も32人もいた。襲撃者には警察や軍の者がいたと伝えられている。一行はフィリピン南部のマギンダナオ州を回っていた。有力なアンパトゥアン一族が支配する地域である。
「正義の遅延は正義の拒否に等しい」という言葉がある。マギンダナオの虐殺から5年たつが、事件はフィリピンの裁判制度の中で遅々として進まず、いまだに1人も裁きを受けていない。
逮捕状が出た容疑者197人のうち、半数近くが いまだに野放しである。1件も裁判が終わっておらず、有罪になった加害者はまだいない。
この事件では、ケソン市地方裁判所で民事・刑事事件の裁判が進行中だが、遅延や妨害がある。また、審議の大半は、保釈聴聞会である。犠牲者の家族は、国家警察委員会に対し、襲撃に関与したとされる警官の解雇を求めているが、どのように対処されるかは、まだ分からない。
虐殺の証人とその家族は、事件以来、襲われたり殺されたりしており、政府の保護が欠如していることが浮き彫りになっている。先日も、有力な証人がマギンダナオ州で襲われて殺された。2009年11月からこれまでに、少なくとも証人とその家族8人が 殺害されている。こうした殺害についても、これまで誰も裁かれたという話はない。
証人の殺害は正義の欠如を新たに生み、犠牲者家族が正義を得られる可能性を狭める。これは、フィリピンのように、裁判事件で証人の証言を偏重してきた国では、とりわけ言えることである。
デニス・サカルさんとブッチ・サウダガルさんの2人の女性は虐殺の第一容疑者たちに不利な証言をすることになっていたが、2014年11月18日、マギンダナオで正体不明の男たちに射殺された。
アリホル・アンパトゥアンさんは、検察によれば犯人の特定に協力することになっていたが、2012年2月、至近距離から撃たれて亡くなった。虐殺に関与した武装グループの運転手をしていたと法廷で証言したエスマイル・アミル・エノグさんは、2012年5月に行方が分からなくなり、後にチェンソーで切られたバラバラ死体で発見された。
フィリピン当局は一致団結し、十分な要員を割いて、この恐るべき虐殺事件に優先して取り組まなければならいない。
アムネスティ国際ニュース
2014年11月23日
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