タイ:米国大使への捜査で「不条理な」表現の自由への制限が浮き彫りに

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2015年12月16日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:タイ
トピック:

米国のグリン・デービース駐タイ大使が、タイ王室の1人を中傷したとして不敬罪の容疑で警察の捜査を受けている。タイは表現の自由を違法とする不敬罪をやめるべきである。

デービース大使は11月25日、タイ外国人特派員協会で、タイ王室に対する不敬罪で有罪となった人びとが長期の刑を言い渡されていることに懸念を表明していた。

多数の人びとが、平和的に権利を行使しただけで不敬罪が適用され、投獄されている。中には上告する権利もないまま軍事裁判にかけられている人もいる。

個人的な懸念を正当化するために不敬罪で告発できるということ自体が、同国の表現の自由が過剰に制限されているという事実を物語る。

どのような行為が不敬罪に当たるのか公の規定がないにもかかわらず、だれもが不敬罪で告発することができる。警察はすべての告発を捜査する義務があると言う。また、告発に対して何の行動も取らなかった警官は、自身が不敬罪を犯したとみなされる可能性がある。

刑法は、国王、王妃、王位継承者あるいは摂政に対して、中傷する、侮辱する、あるいは脅迫する者は、何人も3年以上、最高15年の刑に処すと定めている。

不敬罪で有罪になり投獄された人びとは、まるで国の治安上の重大な罪を犯したかのような扱いを受ける。今年の10月と11月に、不敬罪容疑者2人が、治安容疑者のための軍の一時的な拘禁施設内で死亡した。2人は被拘禁者への適切な保護措置もなく拘禁されていた。

米国大使の発言を、刑事事件として取り扱うこと自体が、表現の自由の不当な扱いを示している。定義があいまいな不敬罪という誰の害にもならない「罪」で、一般市民が告発され、長年投獄される可能性がある。

名誉棄損は、刑法で扱うべきではない。タイ当局は、表現の自由に関する国際的な義務を果たすためにも、この法律を廃止あるいは改正すべきである。また、表現の自由の権利を平和的に行使したことで処罰を受けている人びとに対する起訴をすべて取り下げ、こうした人びとを釈放すべきである。

タイの軍事政権が2014年5月のクーデターで権力を掌握して以来、かつてないほど多くの人びとが不敬罪で起訴され有罪判決を受けている。

国王と王族に代わり他人が不敬罪の告発を行うという規定により、不敬罪を定めた法律が個人的あるいは政治的な目的のために不正に使用される可能性が生じている。また、この規定により、自警団のような方法による取り締まりや表現の自由への抑圧が生まれている。

不敬罪の裁判は秘密のベールに包まれている。ある反政府活動家はこの法律を、「敵を攻撃するには便利な方法」と評している。

アムネスティ国際ニュース
2015年12月9日

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