ウクライナ:人権を謳歌するプライド・マーチ

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2016年6月21日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ウクライナ
トピック:性的指向と性自認

ウクライナの首都キエフで6月12日、LGBTI(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・インターセックス)のプライド・マーチが開催され、無事終了した。アムネスティ・インターナショナルは、警察や政府が主催者に協力を惜しまず、厳重な警備体制を敷いたことを歓迎する。

これにより同国は、例年とは異なり、LGBTIの人びとの表現の自由と平和的集会の権利を守るという国際的な義務を果たした。このプライド・マーチは、性的少数者であることに基づく差別への闘いの大事な一歩である。また、プライド・マーチが暴徒に頻繁に襲撃を受けている他国の模範となる。

当日は、およそ2,000人の参加者が、LGBTIの平等を訴えてキエフ市内を練り歩いた。参加した人びとは、極右グループから「実施すれば流血騒ぎになる」との脅しに屈することなく、行進を実現させた。警察は、襲撃を未然に防ぐため一部の周辺道路や地下鉄の駅を閉鎖した。また、警官や警備隊約7,000人を動員して厳重な警備にあたり、参加者の安全を確保する対策を講じた。

その結果、暴力行為を計画したり、働こうとした57人を拘束した。終了後、1人の参加者が、数人に暴行を受けて病院に運ばれた。幸いけがは軽かった。警察は、犯人グループの割り出しにあたっている。

プライド・マーチには、在外公館や国際機関の代表者らも参加した。ヴェルホーヴナ・ラーダ(ウクライナ最高議会)の議員7人が姿を見せ、LGBTIコミュニティへの連帯を示した。

背景情報

ウクライナのこれまでのプライド・マーチは、混乱を極めた。

2012年5月20日にキエフで計画されていたプライド・マーチは、さまざまな個人やグループから襲撃の脅迫を受け、警察が「参加者の安全を保障できない」としたため、主催者はやむなく実施を見送った。

2014年7月5日も同様の背景で実施されなかった。

2013年に同国初のプライド・マーチが開催され、約100人の参加者に対し、反対する人びと500人が集まった。計画では、キエフ市内で行うことになっていたが、これに裁判所が禁止命令を出したため、郊外での実施となった。同市は、同日は祝典「キエフデー」が重なっているとして、祝賀に無関係なデモの全面禁止を裁判所に申請したが、これは却下された。

2015年もキエフ郊外で実施されたが、デモ主催者と警察との調整がなされておらず、避難対策もなかった。その結果、1,500人以上の警察官と国家警備隊を動員したにもかかわらず、約10人の参加者が同性愛嫌悪者から襲撃を受け負傷した。警察官も少なくとも5人が負傷し、うち1人は重傷だった。警察は暴行した28人以上を逮捕したが、暴力行為で裁かれたのは4人のみで、執行猶予2年の刑を命じられた。

2014年5月、ウクライナは初の差別禁止法を採択した。しかし、活動家たちが要求していた、性的指向や性自認にもとづく差別禁止の明文化は、議論されたが最終文には盛り込まれなかった。

2015年11月、国会議員は、人種、身体障がい、性的指向や性自認などの特質を持つ人への差別禁止を明記した労働法改正案を可決した。これまでこの改正案は、議員らの強い抵抗を受けていた。

アムネスティ国際ニュース
2016年6月14日

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