フィリピン:貧困層を殺害し続ける警察

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2017年2月 2日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:フィリピン
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フィリピンでは、大統領の指示により警察が、人道に対する罪である超法規的処刑を繰り返し、薬物犯罪の疑いがあるとして数千人もの人びとを殺害してきた。

警察は全土で、ほとんどが無抵抗で貧しい市民を、でっち上げた証拠をもとに殺害し、時に殺し屋を雇い、その金品を盗み取り、捜査報告をねつ造するという卑劣な行為を重ねている。アムネスティは、現地での聞き取りなどでその実態を調査し報告書にまとめた。

大統領が犯罪を撲滅すると誓った街のあちこちで、いまや警察の手で違法に殺害された遺体が転がっている。

薬物撲滅一斉捜査の名のもとに、警察、雇われた殺し屋、あるいは武装した何者かに、この1カ月間で1000人以上の市民が犠牲になった。ドゥテルテ氏が大統領に就任して以後の7カ月間で、7000人以上が薬物関連で殺害されたが、そのうち少なくとも2500人が警察の手によるものだった。

アムネスティは、警察に殺害された犠牲者のうち33件・59人の事件を調べた。調査員は3地域、20都市で110人に聞き取りし、警察の捜査報告書にも目を通した。

丸腰の市民を殺害 調書をねつ造

警察の常套句は「相手が先に発砲した」だった。目撃者によると、警察は深夜に家宅捜査に入り、丸腰の相手に対して、拘束することもせず発砲したという。ときには、薬物と武器を仕込んでそれを証拠品とした。

また、とある男性は、そばにいた妻が「お願い。やめて」と懇願する中で、射殺された。別の事件では、降伏する男に 「床に伏せろ」と叫ぶ声が聞こえた後、銃声が鳴り響いた。

聞き取りをした他の人も、最愛の家族がどれほど非人間的な扱いを受けたかを語った。犠牲者のほとんどは、社会で最貧街の弱者であり、なかには8才の子どもいた。

経済原理の殺害

警察が殺害に走る背景には、上層部からの圧力(例えば、「薬物容疑者を無力化せよ」という指令)のほか、殺害人数に応じた秘密裡の報奨金制度がある。

巡査長の話では、1人殺害するごとに8000ペソ(161米ドル)から15,000ペソ(302米ドル)までの現金で払われるという。一方、 銃撃戦になっても死者が出なければ支払われない。

ベテラン警官によると、葬儀場と結託し、死体を持ち込むごとに見返りをもらっている警官もいる。目撃者によれば、警官は犠牲者宅から物を盗んでは私腹を肥やしている。

この半年間の薬物関連の殺害事件のうち、4100件以上が正体不明の武装した者たちの犯行だった。たとえば、オートバイに乗った2人が標的に近づき射殺し、走り去る。現地では、彼らを「2人乗り」と呼んでいる。

聞き取りをしたプロの殺し屋の話では、警官から頼まれ、薬物使用者を1人殺すと5000ペソ(100米ドル)、薬物密売者を1人殺すと15000ペソ(200から300米ドル)が支払われる。ドゥテルテ氏の就任前までは、「仕事」は月に2件だったが、今や週に3、4件になっているという。

標的はしばしば、地元の自治体が作成した信ぴょう性に欠ける容疑者リストから選ばれる。たとえ、薬物を使用したのがずっと以前であっても、あるいは薬物量がほんのわずかであっても、リストから名前が消えることはない。

アムネスティはフィリピン政府に対し、これらの超法規的処刑を直ちにやめさせる措置を取るよう要求している。

同国は、この人権危機を自力で解決するべきである。しかし、実効性がある対応を取らないのであれば、国際社会が、国際刑事裁判所に予備捜査を求めるべきである。

アムネスティ国際ニュース
2017年2月1日

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