- 2017年12月10日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:フィリピン
- トピック:
ドゥテルテ大統領が就任した昨年6月以来「麻薬撲滅作戦」の名のもとに、警察は市民数千人を不当に殺害してきた。その上、手を下した警官は、いまだに誰一人として罪に問われていない。
フィリピンは、司法・警察当局はともに、市民を殺害した警官の責任を問う意思も能力もないことを示してきた。司法が機能しないとなれば、国際的な司法機構が介入し、加害者に法の裁きを受けさせるしかない。さもなければ、フィリピンの街角で超法規殺人がさらに続くことになる。
国際刑事裁判所は、この事態に関する予備審問を開始し、事実の解明に向けて手広く手段を講じなければならない。対象には、市民に銃の引き金を引いた警官のみならず、殺害や人道に対する罪を命令・励行した上司や関係者も含む。
実際、ドゥテルテ大統領や警察幹部は、あからさまに殺人を支持してきた。これは、国際法では犯罪責任が問われる行為である。
子どもたちもターゲット
掃討作戦では、子どもたちも60人が犠牲になった。
「お願い、やめて!」と叫ぶ子どもにも、警官は容赦なかった。しかも、家族が見ている前でのことだった。
また、アムネスティの調査チームが、マニラの拘置所を視察した際、不潔な未成年者用拘置所ですし詰めにされた子どもたちの姿を目の当たりにした。子どもたちは、薬物犯罪の容疑で拘置されていた。
子どもたちの話では、逮捕時に殴られ、激しい暴行を受けた上、身に覚えのない薬物といっしょに写真を撮らされたという。
子どもの犠牲者の一人、キアン・デロス・サントスさん(17才)が8月に殺害された時には、全国規模の激しい非難が沸き起こった。警察側は正当防衛を主張したが、殺害時の映像や目撃者の証言から、複数の私服の係員が、丸腰の少年を路地まで引きずっていき、銃殺した事実が明らかになった。
この事件では、国際的な注目も集めたこともあり、関係者12人以上が取り調べを受けた。しかし、誰も処分を受けたり送検されることはなかった。
最近、国際刑事裁判所は、子どもに対する犯罪には、特別な注意を払い、捜査もすると表明していた。そうであれば、今こそ、フィリピンに介入するときである。
今年1月、アムネスティは、フィリピン当局に対して超法規的処刑を即刻停止し、大統領や警察幹部による殺害の扇動や奨励をやめるよう要請した。また、違法とみられる殺害事件は、公正で実効性がある捜査をするよう、強く求めた。
しかし、当局は、これらの要請にまったく耳を貸さなかった。
国際刑事裁判所の介入に期待するしかない。ドゥテルテ大統領らを説得し、その方針を変えさせるには、国際的な圧力が不可欠だ。
アムネスティ国際ニュース
2017年12月4日
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