- 2018年4月25日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イラク
- トピック:地域紛争
イラクの国内避難民キャンプで、「イスラム国」(を自称する武装グループ)と、わずかでも関係があったと見なされた女性や子どもたちが、人道支援を受けることできず、自宅に戻ることもできないでいる。性暴力の被害も多い。
こうした女性や少女は、家族の中の男性が「イスラム国」に関わったとして拘束や「強制失踪」させられたり、殺害されたりしている。しかし多くの場合、男性は単に「イスラム国」の支配地域から逃れてきただけであったり、「イスラム国」容疑者リストなるものに似た名前があったり、「イスラム国」で運転手や調理人をしていたという理由で被害に遭っている。
大黒柱や息子を失った家族は、周囲から差別や迫害を受け、絶望の淵に置かれている。自治体や部族の中には、「イスラム国」と関係があったと見なされた女性や子どもが町や地域に戻ることを認めないところもある。
女性や少女は、住み慣れた町を追われ、行き場所を失い、頼る者もいない。避難民キャンプで自立する道しか残されていないが、キャンプでは除け者にされ、食糧や水などの最低限の物資すら与えられない。このよう屈辱的な扱いは、いずれ新たな暴力を生む危険性もある。このような状況では、イラクが目指す真の持続的な平和を築くことはできない。
イラクでは、「イスラム国」との戦闘は終わったかもしれない。しかし、多くの女性にとって苦悩は終わっていない。
孤立無援と性的虐待
アムネスティは、8カ所の国内避難民キャンプを訪れ、92人から聞き取りをした。また、国連担当者、内外のNGOの活動員、避難民キャンプの担当者からも話を聞いた。
アムネスティの聞き取りによれば、女性たちは、「イスラム国」と関係しているという理由で食糧支援や医療を受けることができない。就業や移動に必要な身分証明証や書類の入手もままならない。キャンプから出ることが許されないところも1カ所あった。事実上の拘禁状態である。
希望を失い孤立無援の女性たちは、キャンプ内外の治安隊員、警備員、民兵らから性的虐待を受ける危険性が極めて高い。いずれのキャンプでも女性たちは、現金や支援物資、他の男性から身を守るための保護などの見返りに性的関係を強要されている。
また女性たちは、強かんを受けるリスクも高い。聞き取りをした中で4人の女性が、強かんを目撃したか、近くのテントから悲鳴が聞こえたと話している。
20才のダナさん(仮名)は、「何回も強かんされそうになった。治安隊員から性的関係を執ように迫られた。連中は私を「イスラム国」の戦闘員のように見ている。いずれ強かんされると思う。それをみんなに見せびらすはず」と語った。
聞き取りをした女性のほとんどが、同様の恐怖を口にした。「イスラム国」と関わったと疑われた女性は、キャンプにいる男性から人とみなされず、差別的な扱いを受けている。彼女たちを守るべき者たちが、敵と化しているのだ。
イラク政府は、女性への暴力を決して許さないという姿勢を打ち出すべきである。そのためにも、加害者を捕え、罪を問うとともに、武装した男性をキャンプから排除しなければならない。
八方ふさがりの女性たち
いくつかの地域では、「イスラム国」とのつながりがあると見なされた女性が自宅に戻ることを認めないという命令が、自治体や部族により出されている。その女性らの自宅の入り口には「イスラム国」と書かれ、水や電気を切られることもある。
女性たちが地元に戻ると、立ち退き、略奪、脅しや暴力などを受ける。このような迫害を受けたことがあるマハさん(仮名)は、絶望的な状況にあった。
「どうして空爆で死ななかったのか、と思うことがある。自殺をしようと、灯油をかぶったけれど、火をつけることができなかった。息子のことを思うと思いきれなくて」
イラクに対する人道支援が減ると、マハさんのような女性は増えるだろう。しかし、人道支援の大幅削減はすでに計画されている。
イラク政府は、5月の総選挙を控え、キャンプの閉鎖と統合をもくろんでいるため、現在キャンプにいる避難民は、近々退去を求められる。
政府は、すべての家族が帰宅しても、脅しや暴力、拘束などを受けないこと、また必要とする支援を受け、医療、公的書類を得られるように保障するべきである。
また、当局は、「イスラム国」に関わったとして「強制失踪」させた何千人もの男性を自宅に返すべきである。
国から疎外され、町から迫害されるという悪循環に終止符を打つために、イラク政府と国際社会は、すべてのイラク人の権利を尊重する取り組みをすべきである。これなくして、イラク国内の和解と和平はあり得ない。
アムネスティ国際ニュース
2018年4月17日
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