- 2019年2月13日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
- トピック:
イスラエルが占領するパレスチナへのイスラエル人の入植は、国際人道法に違反し、戦争犯罪にあたる。入植地はパレスチナ人から奪った土地であり、入植者によるパレスチナ人への度重なる攻撃も報告されている。
違法な入植地で利益を得ているのが、旅行サイトだ。大手旅行サイト4社、エアビーアンドビー(米国)、Booking.com(オランダ)、エクスペディア(米国)、トリップアドバイザー(米国)は、入植地にあるホテルや観光スポットを紹介し、観光客を送り込み、パレスチナ人に対する人権侵害を助長する結果となっている。
アムネスティは、4社による入植地の施設案内やイスラエルの人権侵害について、現地での聞き取りを含む調査を実施し、報告書にまとめた。
アムネスティの調査員は昨年2月から10月にかけて、ヨルダン西岸の被占領パレスチナ地区にある4つのパレスチナの村と東エルサレムのシルワン地区、ヘブロンのパレスチナ人居住区に入った。いずれの取材地も、その近くにはイスラエル入植者が運営する観光名所がある。
入植地での事業を宣伝
アムネスティの調べでは、入植地の宿泊施設や観光スポットの各社掲載件数は、エアビーアンドビー300件以上、トリップアドバイザー70件以上、Booking.com 45件、エクスペディア9件だった(いずれも調査時点)。それぞれが、ホテルや観光地をつぶさに紹介するが、その観光地がイスラエルによる入植地にあることを説明する文言は載せていない。
近年、イスラエルは、観光産業の育成に多額の資金を投じてきた。観光客を呼び込むことで、パレスチナの土地への入植を既成事実化し、正当化している。また、ユダヤ人と地域との歴史的つながりをアピールするために、あえて遺跡近くにイスラエル人を入植させてきた。さらに入植者には、パレスチナの土地や資源を活用するよう働きかけた。そして、旅行サイトは、入植地周辺の自然保護区や遊歩道、砂漠のサファリにウェブサイト訪問者をいざなう。その結果、入植地の観光客は、非日常体験を楽しむ一方で、地元のパレスチナ人は、日常的に人権侵害に直面するという、異様な事態が現れている。
人権侵害からの利益
エルサレムの北40キロほどにあるシロに近い2つのパレスチナの村は、1990年代後半以降で5,500ヘクタール(55平方キロメートル)を超える土地を失った。多くのパレスチナ人が村を去り、わずかに残った人たちは、入植者からしばしば攻撃を受けている。4社とも、シロの観光施設を掲載するが、同地が入植地であることを説明するのは、Booking.comだけだ。
ベドウィンも観光開発で住み慣れた土地を追われ、生活の糧を失っている。その地域に近い砂漠での体験は旅行サイトで「砂漠の静けさと心温まるイスラエルのおもてなし」などと紹介され、1泊235米ドル(約26,000円)で販売されている。
古代遺跡で知られるスシャでも入植が進み、多くの村人が土地を奪われてきた。遺跡は、周辺のオリーブ畑、ワイナリー、ブドウ畑などとともにエアビーアンドビーとトリップアドバイザーで写真付きで紹介されている。
イスラエルは、パレスチナ人の土地を観光地に仕立て、拡大のためにさらに土地を奪っているが、その恩恵にあずかるのは、入植者と彼らと事業を行っている旅行サイト企業だけだ。
4社は、イスラエルの人権侵害を直視し、違法な入植地にあるホテルや観光地の紹介を自社サイトから削除すべきである。「共有と相互信頼」をうたい文句にする4社が、人権侵害の片棒を担いではならない。
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、企業には、国際人道法および人権法を尊重する責任がある。4社は、被占領パレスチナ地域のホテルや観光地の案内をすべて削除しない限り、国際法に違反し自社の企業理念にも反する事態が続く。
アムネスティは、調査報告書を公表するにあたり、4社には事前に調査結果を伝え、意見を求めた。Booking.comとエクスペディアからは回答があったが、他の2社からは無回答だった。届いた回答は、報告書の巻末に掲載している。
入植地生産物の輸入規制を
入植地が利益を生む構図は、観光業だけではない。入植地で生産された農産物や製品が海外に輸出され、数百億円もの収益を生んでいる。アムネスティは、これらの生産物についても、各国政府と関係企業に対し、取り扱い禁止を求めている。
アムネスティ国際ニュース
2019年1月30日
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