- 2019年5月24日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:スイス
- トピック:女性の権利
スイスでは、性暴力の発生件数が一般的イメージよりはるかに多いことがアムネスティの調査でわかった。
16才以上の女性4,495人に聞き取り調査をしたところ、20%(5人に1人)が「性暴力を受けたことがある」と答え、10%以上が「強かんされたことがある」と答えた。しかし被害届を出したのは、8%に過ぎなかった。
性暴力の被害者が全体の20%に達するのは驚きだが、被害を訴える女性が8%と少ないのは、さらに衝撃的だ。性暴力がはびこる一方で泣き寝入りをしているということである。この背景には、旧態依然とした法律の壁がある。
スイスも批准しているイスタンブール条約(女性に対する暴力および家庭内暴力の防止と撲滅に関する欧州評議会条約)は、強かんをはじめとした同意なき性行為はすべて犯罪とみなすべきとしている。しかし、スイスの法律では、強かんかどうかの判断は、同意の有無ではなく、身体的暴力や脅迫、威圧があったかどうかに基づく。
法の上でも、現実問題でも、物理的な抵抗をしなければ、性行為に同意したものとみなされてしまう。しかし、この考え方には、重大な問題がある。性的暴行を受けると被害者は動きたくても動けない、声を上げられない状態になり抵抗などできないというのが専門家の一致した見方だからだ。
同意の有無ではなく抵抗や暴力の有無で判断する現状では、被害者が訴えに二の足を踏むだけではなく、性暴力が犯罪であるという認識が社会に広まりにくい。被害者が声をあげること、そして性暴力は犯罪だという認識は、強かんの撲滅と加害者処罰の両面で極めて重要である。
欧州31カ国の法律をみると、性行為に同意がなければ強かんとみなす国は、スウェーデン、英国、アイルランド、ルクセンブルク、ドイツ、キプロス、アイスランド、ベルギーの8カ国だ。他の国の法律では、暴力や脅迫が強かんの構成要件となっているが、実際の強かんには、暴力や脅迫がないことがほとんどだ。
スイスの関係当局は、この調査結果を警鐘と受け止め、早急に法律改正に向けて動くべきである。
アムネスティ国際ニュース
2019年5月21日
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