スイス:民族プロファイリング裁判 欧州人権裁判所が国の人種差別を非難

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2024年3月13日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:スイス
トピック:

モハメド・ワ・バイレさんが国から人種差別を受けたと欧州人権裁判所に提訴した裁判で、欧州人権裁判所はスイスの人種差別を全面的に非難し、民族プロファイリング事件で初めて、身元確認はバイレさんのプライバシーの権利と非差別の権利を著しく侵害していると結論づけた。これはバイレさんにとってはもちろん、スイスで、そして欧州全体で人種差別を受けている人びとにとって、大きな勝利である。

2015年、スイス市民である黒人のバイレさんは通勤途中にチューリッヒの駅で警察から身分証の提示を求められたが、理由の説明がなかったため、拒否した。その結果、バイレさんは100スイスフラン(約17,000円)の罰金を科された。

この裁判は、警察による民族プロファイリングや人種差別からの法的保護を促進し、欧州各国に指針を示すという意味で格好の事例になる。国際法と国際基準が示すところは極めて明確だ。身元確認や所持品検査は、当事者が犯罪を犯した疑いがある場合のみ可能であり、差別的判断が立ち入る余地はない。このことは国際法や国際基準でも明記されている。

民族プロファイリング(警察などの捜査機関が、人種や肌の色、国籍、民族的な出身をもとに職務質問や取り調べの対象者を選ぶこと)は、国際人権条約と欧州人権条約のいずれにも違反する。スイスは、民族プロファイリングの防止に向け、国際基準に沿った法律やガイドラインへの改正とその実施に取り組む必要がある。

バイレさんの事例は氷山の一角に過ぎないとみられる。長年にわたり欧州の国々は民族プロファイリングがあることを認めず、対処することもなかった。欧州各国は今回の判決を警鐘と受け止め、警察による差別的な扱いを積極的に防止する義務を果たさなければならない。

英国ではこの判決の1週間前、首都警察がギャング関連犯罪のデータベースの利用を停止した。このデータベースは、10年以上にわたり民族プロファイリングや人種的偏見が懸念されていた。

背景情報

アムネスティはこの裁判で法執行活動における非差別の権利の観点から第三者の立場で意見を提出し、スイスが民族プロファイリングを防止し、民族プロファイリングを適切に捜査する義務を怠っていると指摘した。

アムネスティ国際ニュース
2024年2月19日(3月4日更新)

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