日本:戦時性暴力の被害女性たちの歴史と人権をテーマとする表現への攻撃が続いていることに深刻な懸念

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2019年8月21日
[日本支部声明]
国・地域:日本
トピック:女性の権利

開催三日で中止に追い込まれた国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2019』の企画展「表現の不自由展・その後」は、いまだ再開の見通しがたっていない。アムネスティ・インターナショナル日本は、公人による発言や匿名の脅迫者による圧力によって市民の表現の自由が侵害され続けていることに、あらためて深刻な懸念を表明する。

今回の企画展では、特に「平和の碑(平和の少女像)」が、攻撃の対象となっている。この「平和の碑」は、日本軍性奴隷制(日本軍「慰安婦」制度)の被害を受けた少女たちをモチーフとし、戦時性暴力の被害女性たちの歴史と人権をテーマに作成された芸術作品であり、日本軍性奴隷制の国際法上の責任を問う象徴として世界各地に設置されているものである。

今回、政治的圧力をかけた複数の公人が、「平和の碑」について「日本人の心を踏みにじるもの」、「我々の先祖がけだもの的に取り扱われるような展示物」などと発言している。8月3日に企画展の中止が発表された後も、大阪府知事が「平和の碑」を含む展示内容について、「反日プロパガンダ」であり愛知県知事は辞職相当だとの発言を行うなど、公人による「平和の碑」を攻撃する発言が続いている。こうした状況の中で、芸術祭実行委員会には脅迫メールが770通も届いており、愛知県が警察に被害届を出したことが報じられた。さらに、『あいちトリエンナーレ』芸術監督を招き18日に開催予定だった別のシンポジウムも中止に追い込まれた。

これらの公人の発言は、日本軍性奴隷制について、その歴史的事実のみならず、人権侵害に対する国家責任や被害者の尊厳などをも否定する言動である。これまでにも、こうした言動が公人によって繰り返されてきたため、国際的な人権条約機関は、日本軍性奴隷制の被害者たちが再被害を受けているとの懸念を表明するとともに、「被害者を侮辱し又は事件を否定するあらゆる試みの糾弾」を日本政府は行うべきであり、そのために効果的な立法や行政上の措置を直ちにとるべきである、と日本政府に対して勧告している(自由権規約委員会の2014年日本政府報告書審査総括所見など)。日本政府は、「平和の碑」の展示を攻撃する今回の公人の言動に対して、これを是認することなく公式に反駁し、日本軍性奴隷制の被害者の尊厳を傷つける発言をくい止めるための具体的な措置を取らねばならない。

「表現の不自由展・その後」中止から2週間がたった。企画展の実行委員会は展示再開を求め続けており、『あいちトリエンナーレ』の他の展示作品の作者からは、企画展の出品作家に対する連帯と展示中止に対する抗議の意を表すとして、展示の一時中止等が相次いでいる。企画展の再開を求める市民の署名活動も行われている。 アムネスティ日本は、「表現の不自由展・その後」における表現の自由の侵害を助長した複数の公人の言動にあらためて強く抗議するとともに、日本政府に対して、同展が再開できる環境を早期に整えるために必要な具体的措置をただちに取ることで、表現の自由を保障する政府の責任を果たすよう強く求める。

以上

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