日本:パブリック・コメントの制限ではなく、市民参加の機会の保障を

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2025年5月13日
[NGO共同声明]
国・地域:日本
トピック:

国の政策決定の過程で多数のパブリック・コメントが寄せられることを問題視し、大量の投稿への対策を検討する旨が報道されています。パブリック・コメントは、政策に広く一般の意見を求めるために設けられている制度です。しかし、現在のパブリック・コメント制度は、その対象を法律に基づく命令等に限っており、広く市民に政策の当否を問う制度とはなっていません。また、パブリック・コメントが実施されても、「実施時期が遅い」、「実施期間が短い」、「提出された意見が十分に検討されない」など運用上の問題もあります。パブリック・コメント制度の改善には賛成しますが、市民の参加を制限する方向の見直しをすることは強く憂慮します。

日本は民主主義国家です。国民主権の理念の下、政府は「国民の的確な理解と批判」の下に、公正で民主的な行政の運営を行わなければなりません(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」第1条参照)。市民が意思決定に参加する機会を設け、多様な立場からの意見を踏まえた上で意思決定を行うことは、民主主義の要請です。市民が意思決定に参加する方法は、選挙を通じ、代表者を選ぶことに限られるものではありません。早期の段階から市民参加のもとで政策を検討する場が必要です。例えば、政策形成に関する協議会、意見交換会、公聴会、説明会、意見募集、提案制度等、様々な仕 組みがあります。しかし、残念ながら、現在の日本においては、市民の参加権が保障されておらず、実効的な市民参加の仕組みがありません。そのために、市民は、政策について意見を伝えようと、パブリック・コメントの機会を利用しています。

環境分野では、1992年の国連環境開発会議(地球サミット)で採択された「環境と開発に関するリオ宣言」において環境問題の解決には市民参加が不可欠であることが確認され、第10原則では「環境問題は、それぞれのレベルで、関心のある全ての市民が参加することにより最も適切に扱われる。」と述べられています。環境問題は地球規模の課題であり、問題を解決する政策を実現するためには、市民ひとりひとりが社会変革の必要性を理解し、自らの行動を変容させることが求められるからです。

1998年には、国連欧州経済委員会(UNECE)のイニシアティブにより、市民参加を権利として保障するオーフス条約(「環境問題における情報へのアクセス、意思決定への市民参加及び司法へのアクセスに関する条約」)が採択されました。オーフス条約では、①情報アクセス、②意思決定への参加、③司法アクセスの三つの権利を市民の手続的権利として保障しています(日本は未批准)。2015年に国連加盟国の全会一致で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に含まれる持続可能な開発目標(SDGs)でも、市民参加の促進が求められており、この点においても、日本政府は、市民参加を推進する国際的な責務を負っています。

日本政府が行うべきは、パブリック・コメントを制限する対策の検討ではなく、広く市民の声を聴き、市民と対話し、政策決定に民意を反映できるように市民参加を促進するための法制度を整備することです。私たち市民団体は、日本でも、市民参加が市民の手続的権利として保障されることを求めます。

国の政策決定の過程で多数のパブリック・コメントが寄せられることを問題視し、大量の投稿への対策を検討する旨が報道されています。パブリック・コメントは、政策に広く一般の意見を求めるために設けられている制度です。しかし、現在のパブリック・コメント制度は、その対象を法律に基づく命令等に限っており、広く市民に政策の当否を問う制度とはなっていません。また、パブリック・コメントが実施されても、「実施時期が遅い」、「実施期間が短い」、「提出された意見が十分に検討されない」など運用上の問題もあります。パブリック・コメント制度の改善には賛成しますが、市民の参加を制限する方向の見直しをすることは強く憂慮します。

以上

2025年5月13日

院内集会「政策決定プロセスに幅広い市民参加を」主催者一同
オーフスネット
グリーン連合
原子力市民委員会
国際協力NGO センター(JANIC)
日本環境会議
ワタシのミライ
アムネスティ・インターナショナル日本