ヨルダン:後見人制度に従わない女性の拘禁をやめよ

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. ヨルダン:後見人制度に従わない女性の拘禁をやめよ
2019年11月 5日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ヨルダン
トピック:女性の権利

ヨルダン政府は、女性を抑圧する男性後見人制度を使って女性を管理したり自由を制限するのをやめるべきである。

ヨルダンの女性は、婚外で生まれた赤ん坊を当局に取り上げられるなど、性行動や結婚、出産をめぐるさまざまな屈辱的な扱いを受けている。アムネスティの調査で、その実態があらためて浮き彫りになった。

女性が婚外での性交渉や後見人の許可を得ない無断外出をすれば、当局に拘禁されたり「処女テスト」を強要されるおそれがある。婚外で出産すれば、国に赤ん坊を取り上げられてしまう場合もある。

政府は、女性団体が長年、取り組んできたこうした人権侵害問題に、早急に対応する必要がある。

まずは、行政権の濫用による女性の拘禁、そして女性の自由を奪う後見人制度の問題に着手すべきである。

この数年間、政府はジェンダーに基づく人権侵害に対処するため、複数の重要な改革を行ってきた。その一つが、窮地にある女性のための保護施設「ダール・アムネ」の開設だ。

こうした施策に加え、今後は、男性の後見人制度や社会規範に従わない女性に対する拘禁や虐待そのものをなくす取り組みが欠かせない。

アムネスティは、昨年6月から今年10月までの約1年半、現地の女性121人に聞き取りをした。さらに今年2月には、所轄官庁の担当者らと対話し、ヨルダン首相とも直接、調査結果の主要点を共有した。報告書には、政府から10月に届いた調査結果に対する国の見解も収めた。

男性後見人に従わないと拘束

各地の自治体は、手厳しい犯罪防止法を乱用して多数の女性を拘束している。

首相官邸によると今年前半、行政上の法律違反で拘束されていた女性1,259人が釈放され、現在は149人が拘束されている。拘束理由は、婚外交渉や男性後見人の許可を得ない外出などさまざまだ。

今年に入って婚外交渉で拘束された女性は85人で、無断外出のみで拘束された女性は1人もいないということだった。ところが、アムネスティや地元の弁護士たちの調べで、自治体は、しばしば後見人の要請に応じて、無断外出という理由のみで拘束命令を出してきたことは明らかだった。

アムネスティは今年2月、ヨルダン最大の刑務所を訪れ、無断外出あるいは婚外交渉で裁判もなく拘禁されている女性22人に話を聞いた。

ほとんどの女性が、すでに何カ月も拘禁されており、男性家族による保釈金での釈放を待っていた。9月現在、少なくとも30人が拘束されていた。

ほぼ全員が、後見人に虐待されたり、自分が選んだ結婚相手が認められなかったりという理由で逃げ出したという。国内法では、女性が30才未満の場合、結婚には、男性の後見人(通常、父親、兄弟、叔父)の同意が必要とされる。

父親に「駆け落ちした」と訴えられて1年以上も刑務所暮らしをする女性は、実際は、家を出たのは駆け落ちではなく、父の虐待から逃れるためだったが、無断外出と見なされ逮捕されたと説明した。管轄自治体の副知事の前に引き出されて、副知事に「父親が保釈金を払うまで刑務所に拘禁する」と言われた。

行政拘禁中あるいはすでに釈放された女性4人は、拘束されたきっかけは、婚外妊娠を知った病院からの通報だった。うち1人の女性は、相手の男性との結婚を望んだが、自分の両親は他界し、残された家族は女性のみで結婚を認める男性後見人がいなかったため、拘禁された。 

2人の女性は、子どもが生まれてDNA検査の結果が出るまで拘束された。父親とされる男性が、自らの婚外交渉の疑いを晴らしたかったためだった。

前進と今後の懸念

2月の内務省担当者の話では、自治体が、無断外出や婚姻外交渉の女性を拘束するのは、殺害もありえる家族の暴力から女性を守るためだという。また、従来の行政当局による拘置に代えて設置したのが、新たな保護施設ダール・アムネだということだった。市民団体も、この施設ができたことで行政による拘禁の件数が減るだろうと評価する。

9月半ば現在、保護施設はこれまでに75人を受け入れた。

しかし、施設ができたからといって従来の行政拘禁がなくなったわけではなく、多くの女性は、相変わらず拘束され、その多くが一定期間拘禁された後、有無を言わさずに後見人の元へ戻される。

また婚姻外交渉の罪で起訴されるおそれがあり、有罪なら最大3年の刑を受ける。

屈辱的な「処女検査」

無断外出で拘束された未婚の女性たちは、アムネスティに「警察に連行され、処女検査を受けさせられる」と語った。「処女検査」は、女性が膣性交をしたのかを調べる非科学的な検査で、国際法が禁じる拷問にあたる。

ある女性(20才前後)は、暴力的な父親らから逃れるため妹と家出を繰り返したが、そのたびに警察に捕まり、病院に連れられ、検査を受け、処女であることを証明したという。検査は、父親の命令だった。警察では、父親には検査を要求する権利があると言われた。

他の数人の女性も同様のことを話していた。検査は、明確な強制という形をとらなくても、拘束中の女性には拒否できなかった。

警察が検査に関与することで、家族の男性が女性の性を監視・管理する権利があるという差別的な考え方を助長している。

婚外出産では子どもと引き離される

未婚女性の場合、拘禁だけでなく、出産した子どもが取り上げられて国の保護下に置かれるというさらなる苦難が待ち受ける。首相官邸は、新生児になんらかのリスクがあるときのみ、母親から引き離すと説明するが、女性権利活動家や弁護士らの話は異なる。

実際、女性5人が、新生児を警察に取り上げられたとアムネスティに語った。刑務所内の国営幼稚園は、婚外子の幼児を預からないからだ。

差別的な扱いは、移住労働者にも適用される。2人の家事労働者は、生まれた子どもを取り上げられないように自国に戻って出産した。地元NGOによると、同様のケースが20件はあるという。未婚の女性は、新生児の出生届けを出し、その法的身分を得るのに四苦八苦する。

ある女性は、子どもを登録する上で他の方法がなく、強かんした相手と覚悟の結婚をした。「結婚したくなかったけれど、そうしたほうがいいと言われたから。いつか殴り殺されるかもしれないけれど、他に選択肢はなかった」

強かんされて身ごもり、出産して投獄された未婚女性が、数人いた。収監中は、子どもと引き離されたり、出生届を出せなかったりしたという。

女性から子どもを強制的に引き離す対応は拷問に等しく、この慣行を直ちにやめるべきである。

当局は、婚外子の子どもにつきまとう汚名をさらに汚すのではなく、不名誉を取り除き、子どもとの暮らしを願う未婚女性の支援にこそ、取り組まなければならない。

待ったなしの改革

アムネスティはヨルダン当局に対し、市民社会と連携して女性の権利を保護する取り組みを強化するよう求めている。

行政当局に拘束される女性が減ることが期待されるダール・アムネの開設は、一つの前進であり、女性の権利を保護する政治的意志の表れである。

今、特に必要とされることは、法律と政策を包括的に見直し、女性が自分の性と生殖に対する意思決定を自由にできる社会を築くべきである。

アムネスティ国際ニュース
2019年10月23日

最新のニュースを配信中!メールマガジンに登録する

関連ニュースリリース