- 2020年9月24日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ヨルダン
- トピック:難民と移民
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ヨルダン当局は8月10日、少なくとも16人のシリア難民をヨルダンとシリアとの間にある非公式の難民キャンプに移動させた。
ルクバンキャンプは、いずれの国の管理下にもない中間地帯の砂漠にあり、およそ1万人の難民が生活する。
難民は、十分な食料や清潔な水を手に入れることができず、医療や衛生面でも問題を抱えている。あまりに環境が劣悪なため、シリアへの帰国を選んだ家族もいる。また、このキャンプからシリアに強制送還された男性もいる。
難民の拘束や強制送還は、難民の自由に対する権利と移動の自由の権利の明白な侵害であり、ルクバンキャンプへの移送は、適切な生活水準と健康に対する権利の侵害にあたる。
アムネスティは、ヨルダン当局に対し同キャンプへの強制移送を直ちに止め、すでにキャンプにいる難民をヨルダンに戻すよう求めている。また、キャンプにいる人たちに、飲料水、食料、医薬品などの生活必需品を届け、また、国際的な人道支援を認めることも不可欠だ。
アムネスティは、難民男性2人、キャンプの代表者2人、看護師1人、女性患者1人、国際人道支援団体職員1人から話を聞いた。
突然の強制移送
ホッサムさんとバッサムさん(いずれも仮名)の男性2人には、妻と、それぞれ5人と3人の子どもがいる。
両家族は、ヨルダン国内のシリア難民キャンプに5年ほど暮らしていたが8月10日、突然、何の説明もなく拘束され、着の身着のまま、ルクバンキャンプに移送された。キャンプに着いたときには、所持品も所持金もなく、飲み水や食料を買うことすらできなかった。
拘束時、バッサムさんの家族と息子(19歳)は、尋問を受け、ホッサムさんは、家族のヨルダンの居住証明書を没収された。2人の男性は、「なぜここに送られたのか、理由がわからないし、法的な訴えもできない」と話した。
この2家族以前には、7月末に2家族が、8月上旬には16人が、強制的にキャンプに送られた。
シリアへの帰還を余儀なくされる
7月にルクバンキャンプに移された2家族のうち1家族は、キャンプ内があまりにも劣悪なため、ひどい扱いを受ける危険があるにもかかわらず、シリアに戻った。
重大な人権侵害を受けるおそれのある地域へ難民を強制的に移送することは、国際法上で禁止されている行為にあたる。こうした移送によって、シリアから逃れてきた難民が同国に戻るという苦渋の選択をせざるを得なくなっていることは、ルクバンキャンプの生活がいかに耐え難いものであるかを、浮き彫りにしている。
また、新型コロナウィルス感染症が大流行する中での移送は、感染拡大につながるおそれもある。1万人が生活するルクバンキャンプには、隔離スペースはなく、医療設備も概して、お粗末だ。移送の際には治安部隊員がシリア人の体温を測定していたが、「これでは不十分だ」と難民たちは話す。
医療不足が死を招く
アムネスティはこの5月、ヨルダン当局に対し同キャンプにいる人たちが、ヨルダンの医療を受けられるよう対応を求めた。しかし、現在までのところ、治療希望者の入国は認めておらず、いくつかの深刻な事態を生んできた。
一人の妊婦は、死産という悲劇に見舞われた。キャンプ内の看護師によると、死産は飲料水不足の結果だろうということだ。
シリアとヨルダンの両国政府は、早急にルクバンキャンプへの人道支援を認めるべきだ。
ヨルダンは、3月に感染拡散防止を理由に救援物資の国内通過を禁止したため、同キャンプへの国際支援は止まってしまった。半年たった今も、禁止措置は解除されていない。
シリアの場合、昨年9月まで同キャンプへの人道支援は、認められていたが、この1年はできなくなっている。
ヨルダン政府は、早急に支援隊の国内通過を認めなければならない。
アムネスティはまた、国際社会に対しヨルダンで暮らすシリア難民の第三国定住受け入れを大幅に拡充すること、またヨルダン政府への大規模な財政支援を行うことを求めている。
背景情報
2015年初め、シリアの紛争から逃れてきた難民数万人が、ヨルダンとシリアの国境にある中間地帯で足止めを食らった。しかし、国連によると、その年の半ば以降、ルクバンキャンプにいる難民のおよそ75パーセントがシリアに戻り、現在は1万人ほどになっている。
アムネスティ国際ニュース
2020年9月15日
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