- 2020年2月18日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
- トピック:
(C) Mark Wilson/ Getty Images
米国のトランプ政権は1月28日、イスラエルとパレスチナの和平案を発表したが、国際法を侵し、パレスチナ人の権利をさらに奪う散々な提案である。その内容は、イスラエルとパレスチナとの間で、今後も悲劇と人権侵害を引き起こすための手引書といえる。
トランプ大統領は、「繁栄への和平」と題する180ページからなる提案を示し、「この和平案は、イスラエル側がすでに合意している現実的な2国家共存だ」と述べた。ただ、和平案は、パレスチナとの協議を欠いたまま作成されている。
トランプ大統領が「世紀の取引」と呼ぶこの提案に盛り込まれた施策は、国際法に違反するものばかりであり、国際社会はこの和平案に反対すべきである。
提案では、イスラエルの土地と引き換えに、ヨルダン川西岸地区にあるヨルダン渓谷と違法入植地の大部分をイスラエルの統治権下に置くとしている。
米国は、この措置を土地交換の原則だと強調するが、パレスチナ地域の併合の助長にほかならず、明らかな国際人道法違反である。
半世紀を超える占領の中で、イスラエルのパレスチナ差別は日常化し、パレスチナ人の権利は否定され、権利を奪われた被害者への補償の道は閉ざされてきた。
和平案は、こうしたイスラエルの冷酷で違法な政策をあらためて承認したに過ぎない。
土地交換では、パレスチナ人比率が高いイスラエルの地域を、将来、パレスチナ国家となる地域に移転すると提案している。しかし、これでは、イスラエルのパレスチナ市民の選挙権が、移転ではく奪される懸念が出てくる。
また、パレスチナ難民に対して、イスラエル領に帰還する権利を認めない代わりに、補償制度の創設を提案する。
パレスチナ人難民は520万人を超え、世界的にも多い。1948年のイスラエル建国により故郷を追われたパレスチナ人には、国際法にもとづき帰還する権利がある。この帰還権は、政治交渉で奪うことができない個人の権利である。
昨年12月、国際刑事裁判所の検察官は、パレスチナでの予備審査の結果、被占領パレスチナ地域(ヨルダン川西岸とガザ地区)において戦争犯罪があったとする結論に至ったとして、国際刑事裁判所の確認が取れ次第、捜査を開始すると発表した。
しかし、トランプ政権の和平案は、提案の交渉中はいかなる場合も、パレスチナはイスラエルと米国の国や人を相手取って国際司法機関に訴訟を起こしてはならないと主張し、現在係争中の訴訟に関しては、その取り下げを求めている。
国際刑事裁判所の取り組みに横槍を入れた形である。
公正で持続可能な和平の実現には、双方の市民の人権に配慮した和平提案が不可欠である。戦争犯罪などの重大な人権侵害の被害者のために、加害者側の責任を問い、被害者への補償が盛り込まれなければならない。
トランプ政権の提案は、こうした基本原則を満たしていないばかりか、現在、進行中のパレスチナ人とイスラエル人双方のための正義に向けた努力を無にしようとするものである。
アムネスティ国際ニュース
2020年1月28日
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