ソマリア:フェイスブックは報道の自由の敵か味方か

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2020年5月15日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ソマリア
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(C)Particular
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フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者は、「フェイスブックは表現の自由を守るプラットフォームだ」と自画自賛しているが、ソマリアの記者にとって、この発言ほど虚しいものはない。

ソマリアでは、記者の仕事は世界でも最も過酷な仕事の一つといえる。政府軍とアル・シャバブ(ソマリアで最大規模のイスラム系武装勢力)が衝突する紛争地の取材は、しばしば命がけだ。

記事を書く上でも神経をすり減らす。政府に批判的な記事を書くと、ブラックリストに載り検閲などの嫌がらせを受け、武装集団を批判すれば、命を狙われる。

そんな状況の中でも、そうした記事を直接、受け取ることができるフェイスブックのようなソーシャルメディアは、市民にとって生命線だ。

一方、フェイスブックから突然、門戸を閉ざされてしまった記者にとって、仕事は、さらにやりにくくなっている。

フリーの記者、アリ・アダン・ムーミンさんは昨年 6月19日、朝起きるとフェイスブックからのメールが目に入った。「フェイスブックの使用を停止します。これは最終決定です」という内容だった。理由を求めると「利用基準違反」とういうことだった。ムーミンさんは、一瞬にして6万人のフォロワーを失った。

他にも9人の記者が、同様の停止措置を受けた。通知は、一方的で有無を言わせず、申し立ても認めなかった。

政府と反政府勢力の板挟み

ソマリアは、記者を狙った殺人犯が罪を問われない件数が過去5年最も多い国として不名誉な記録を持つほど、記者には危険な国だ。

武装勢力アル・シャバブの支配地域の問題についての記事を書く場合は、命を狙われる覚悟が必要となる。どうしても武装勢力に否定的なものになってしまうからだ。

アル・シャバブは、記者の殺人のほとんどが自分たちの犯行であると主張している。従来型メディアとソーシャルメディアの両方を巧みに利用して、「軍事的成功」を誇示し、政府勢力に負け犬の汚名を着せる。

一方で、政府も黙ってはいない。戦闘力をアル・シャバブ以上だと誇示する広報活動を展開すると、記者は政府と反政府の板挟みになり、厳しい選択を迫られる。

モハメド大統領や政権幹部は、主要メディアの検閲、ソーシャルメディアによる市民の意見の統制、国策の推進などに余念がない。

ソマリア社会に不可欠なフェイスブック

ソマリア人の圧倒的多数が、政治、社会、宗教などの議論の場としてソーシャルメディアを利用し、SNS が政治的ツールとなっている。その中でも、フェイスブックは良かれ悪しかれ、都市住民の最新情報を得るツールなのだ。

現政権も、政治的成果などを市民に伝える手段にフェイスブックを利用する。

それほどソマリア社会に浸透しているフェイスブックだけに、記者が朝、目を覚ますとフェイスブックが使えなくなっているということが、どれほど深刻な問題であるか、容易に察しがつく。別のフリー記者も、昨年3月に同様にアカウントが停止された。

個人に利用違反があったとすれば、フェイスブックがまずその利用者に警告を発し、不服申し立ての道を開くなどの手順を踏むことが不可欠だ。

フェイスブックなどを市民とのコミュニケーション媒体として利用する記者にとって、アカウント停止は、死活問題だ。とりわけ、来年初め、建国以来初の1人1票の選挙を予定するソマリアにとって、SNSの利用を阻止する傾向は極めて大きな問題だ。

ソマリア市民やメディアが、情報を得る権利や表現の自由の権利を行使する上で、フェイスブックが果たす役割は大きい。フェイスブックが、このまま表現の自由を侵害し続けるとすれば、ザッカーバーグ最高経営責任者が唱える「表現の自由」は、空虚でしかない。

まずやるべきことは、アカウントに停止警告を出す際に、適切な手続きを踏むことだ。同時に、市民、特に言論の旗手であるジャーナリストに対して、その表現の自由に圧力がかからないように対応しておくことも重要だ。

ソマリア市民は、情報の入手や意見表明をする上で、すでに大きな壁にぶつかっている。フェイスブックが、新たな障壁になるようなことがあってはならない。来年明けには、総選挙が控えている。もし、フェイスブックが壁になれば、市民や記者が失うものはあまりに大きい。

アムネスティ国際ニュース
2020年5月3日

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