フィリピン:国連報告が求める「麻薬戦争」に対する国際調査

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. フィリピン:国連報告が求める「麻薬戦争」に対する国際調査
2020年6月17日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:フィリピン
トピック:

(C) Amnesty International
(C) Amnesty International

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は6月4日、フィリピンの人権状況に関する報告書を公表した。

報告書の内容は、2016年に大統領に就任したドゥテルテ氏が主導する「麻薬戦争」に対する痛烈な告発だ。この「戦争」では、貧困地域の市民に銃が向けられ、数千人が犠牲になってきた。

報告書は、麻薬取り締まりの中で、警官による市民の殺害や人権侵害、殺人を犯した警官の不処罰、家宅捜索での証拠偽造など数々の事実を明らかにした。また、メディア、人権擁護活動家、政治活動家らに対する圧力や暴力、さらに、銃使用を奨励する政府高官の発言、表現の自由に対する脅威などがあったことも述べられている。

報告書は、警官による犯罪を徹底捜査することが喫緊の課題だと提言している。報告書が指摘するように、市民を殺害した警官が何の罪も問われてこなかったのは、重大な問題だ。不処罰が、さらなる人権侵害を許している。

人権理事会は、警官による殺人や人権侵害について、独立した国際調査団を設置すべきだ。機関の設置は、警官の不処罰問題を質す上で大きな一歩となるだろう。

一方、国際社会は、国際調査団の設置を支援し、市民の殺害が続く限り、監視を続けるというメッセージをフィリピンに送らなければならない。また、犠牲者家族や人権擁護活動家への連帯を示すことも求められる。

ドゥテルテ大統領は、誤った政策を取り下げ、犠牲者への正義と補償を実現し、公衆衛生と人権に基づいた麻薬対策を打ち出すべきだ。

背景情報

国連人権高等弁務官事務所の報告は、昨年7月に国連人権理事会で採択された決議にもとづく。この決議が採択に至った背景には、アムネスティをはじめとした市民団体の運動があった。

ドゥテルテ政権が4年前に打ち出した「麻薬戦争」は、国際社会や国内外の人権団体から強い非難を受けた。しかし、同氏は批判を顧みず、警官に銃の使用を奨励し、処罰しないどころか昇進に結びつけるような発言もした。

警官による殺害がまかり通る中、活動家、記者、弁護士、教会幹部、労組幹部などが、その人権活動や反政府的発言で当局の攻撃や圧力を受けた。直近では、フィリピンの大手放送局ABS-CBNが営業停止に追い込まれ、新型コロナウイルス感染拡大の中では、隔離や外出禁止令の違反者に、銃の使用も辞さないとの警告が出された。

昨年の国連人権理事会の決議に基づき出された今回の報告書は、悪化するフィリピンの人権状況に対応する上で重要な一歩となった。

今後、人権理事会に求められるのは、フィリピンに対するより強力な取り組みであり、特に当局による殺人の捜査とフィリピン政府に説明責任を果たさせる役割を負う国際調査団の設置だ。

アムネスティ国際ニュース
2020年6月4日

英語のニュースを読む

関連ニュースリリース