タイ:同性間のパートナーシップ法が実現へ。日本の現状は?

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2020年7月29日
[ブログ]
国・地域:タイ
トピック:性的指向と性自認

© Getty Images
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2020年7月8日、タイ政府は、同性カップルについても、婚姻関係にある夫婦とほぼ同じ権利が認められるように、法改正を行うと発表しました。このニュースは世界中を駆け巡り、日本でもSNSで「台湾でもタイでも。アジアに広がる同性婚は、もう欧米だけの話ではありませんよ」「日本でも早く同性婚が認められるようになってほしい!」といった声があがっています。

「シビルパートナーシップ」とは?

タイ政府によって国会での審議入りが決まったのは、「シビルパートナーシップ」の認定を可能にする法案です。「シビルパートナーシップ」とは、法律によって認められたパートーナー関係を意味します。国や地域によって制度の内容が異なり、例えば、同性カップルだけでなく異性間でも利用できる国もあれば、同性カップルに限られる国もあります。また、男女の婚姻と同等の権利が同性カップルに付与される国がある一方で、同性カップルが養子を持つことを禁止している国もあります。

タイの法案は、シビルパートナーシップを希望するカップルのどちらかがタイ国籍で、ふたりとも17歳以上であれば、性別を問わずに申請できるというものです。シビルパートナーシップが認められると、例えば、男女の夫婦と同様に、双方の財産の管理権、相続件が法的に認められるほか、養子を迎え入れることも可能になります。

タイで、同性間のパートナーシップ法が実現へ。日本の現状は?

© Amnesty Internationl

法案の国会提出までの長い道のり

2013年にタイでシビルパートナーシップ法案の草案が作成されてから、内閣の承認を得るまでに、実に7年の歳月が流れました。2012年にバンコクで、同性カップルが、当時は男女間でのみ認められていたパートナーシップ制度の申請を断られたことを発端に、同性カップルのシビルパートナーシップを求める活動が広がり、社会の関心が少しずつ高まっていったのです。昨年のバレンタインデーには、シビルパートナーシップの申請を断られた同性カップルたちが、現地の支援団体と共に抗議活動を行うなど、今回の国会審議入りの裏には、同性婚を願う人たちの根気強い働きかけがありました。

パートナーシップでなく、同性婚の実現を望む切実な声も

今回の報道に対し、多くの喜びの声が聞かれる一方で、反対の声も上がっています。反対する人の多くは、男女間の結婚制度と比べた場合の不平等さを指摘しています。そもそも同性婚が実現すれば、同性間のシビルパートナーシップ制度は必要ないという観点から、反対派の人たちは、シビルパートナーシップが「偽り(Fake)」の平等であるとし、Twitter上では、#SayNoToPartnershipBill 「パートナーシップにNoと言おう」と呼びかけるハッシュタグも見受けられます。

実際に、シビルパートナーシップ法案で明確に規定されていない権利もあり、男女間の結婚と比べてどのくらい平等な制度になるか、疑問が残る点もあります。例えば、相手の苗字を名乗れるかどうか、結婚によって得られる税金の控除や、自治体からの福祉サービスが受けられるかについての言及がないことや、外国人パートナーがいる場合、配偶者ビザを取得することができるかどうかなど、シビルパートナーシップによって保障されることが決まっていない権利も少なくないのです。

しかしながら、同性間のシビルパートナーシップ制度が、タイの同性婚の実現への大きなステップとなる可能性もあります。

タイで、同性間のパートナーシップ法が実現へ。日本の現状は?

© Amnesty International Ukraine

同性婚へのマイルストーン

既に同性婚を実現している多くの国で、同性婚施行前に、同性間のシビルパートナーシップ制度(シビルユニオンと呼ばれています)を導入しています。例えば、2001年に世界で初めて同性婚を実現したオランダは、3年前の1998年に、シビルユニオンを認めました。オランダに次いで2003年に同性婚を実現したベルギーも、遡って2000年に、それまでは男女間に限られていたパートナーシップ制度の権利を、同性パートナーにも拡大しています。その後、2005年に同性婚を実現したスペイン、カナダについても、州ごとで異なりますが、その数年前から同様の施策を行っています。このように、同性間の法的なパートナーシップ制度は、同性婚に至るまでの「ファーストステップ」ともいえる重要な制度といえるのです。

日本のパートナーシップ制度はどうか?

日本で最近耳にすることの多い「同性パートナーシップ制度」ですが、2015年11月5日世田谷区と渋谷区で施行されたことを皮切りに、現在では全国の自治体で50例を超え、日本の総人口の4分の1以上をカバーするほどの広がりを見せています。同性カップルは、同性パートナーシップ制度を認めている自治体に対し、パートナーであることを申告することで、証明書の発行を受けることができます。この取り組みは、自治体によって条例、または要綱により規定されていますが、法的保障はなく、結婚と同等の権利を得ることはできません。そのため、一部結婚と同等の権利が保障されている、タイのシビルパートナーシップ制度や、欧米のシビルユニオンとは、まったく異なるものであることを理解する必要があります。

国の法律がないため地方自治体単位でできることが限られていますが、それぞれの努力により、さまざまな取り組みが行われています。例えば先日、茨城県は、パートナーシップ制度の認定を受けた県職員に対し、法律上の夫婦と同様の福利厚生を認めると発表しました。兵庫県明石市のLGBTの相談窓口では、当事者の専門職員が対応することを決定しています。多様性を認め合う社会の実現に向け、地方自治体の取り組みがさらに広がることで、政府の法整備への後押しになることが期待されています。

日本での同性婚に向けた運動はどこまで進んでる?

日本でも、同性婚の実現に向けた運動が進んでいます。政府に対し、同性婚を認めることを訴える日本初の裁判が2019年2月14日に始まり、現在は、札幌、東京、名古屋、福岡、大阪で裁判が進行しています。新型コロナウイルスの影響で東京と大阪の次回の裁判期日は7月末日現在で未定となっていますが、福岡で7月30日(第3回)、札幌で8月5日(第6回)、名古屋では9月8日に(第6回)予定されており、今後の同性婚訴訟の進展に関心が集まっています。

タイの動きを弾みに

タイで同法案が可決されれば、昨年の台湾に続き、同性パートナーシップ制度を法的に認める国は、アジアで2カ国目となります。アジア圏のLGBTの権利拡大がまたひとつ前進することになるのです。タイの法案実現が、日本のLGBTの権利拡大の弾むことが期待されます。

 

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