南北アメリカ地域:新型コロナ対策における人権侵害

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2020年10月21日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:南北アメリカ地域
トピック:

(C) Amnesty International
(C) Amnesty International

拡大する新型コロナウイルス感染症に対応する上でまず第一に考えるべきは、基本的人権の尊重だ。しかし、南北アメリカ地域では、人びとの間に不平等と差別が拡大し、あらわになっているのが現実だ。アムネスティは、米州機構総会に出席する各国首脳宛の公開書簡の中でこのように指摘した。

感染症への対応で際立つのが、南北アメリカ地域の多数の国が、抑圧的な手段と不必要な力を行使していることだ。同地域では、ウイルスが大流行する以前から、構造的な社会的・経済的格差が問題となっていたが、新型コロナ危機での対応が、地域全体で不平等と差別を助長する結果となっている。

中でもエルサルバドル、パラグアイ、ベネズエラなどでは、警察や軍の管理下の隔離施設に数万人を収容するなどの厳しい対策が取られている。隔離期間の事前告知がなく、最小限の感染防止策も取られず、国際人権法が求める第三者による確認手続きを踏まないまま、隔離を強制することは、恣意的な拘禁にあたる。

さらに、隔離施設が差別的な状況を助長し、当局が十分な食料や水、医療を提供しない場合は、残虐で非人道的、品位を傷つける扱いに相当する可能性があり、健康に対する権利の侵害にもなりうる。

近年、人権侵害や拷問などの国際法上の犯罪行為がみられるチリやニカラグアなどの国においても、人権の保障義務の点から、米州機構の加盟国は、それぞれの関係当局にこうした状況に対する調査の徹底を求めることが不可欠だ。

とりわけニカラグアでは、感染症の拡大を防止する対策を取ること、権利を行使しただけで拘束されている人びとを釈放すること、医療従事者ら医療現場で働く人たちが、国を批判しても圧力を受けない措置を取ることなどが不可欠だ。

南北アメリカ諸国は、治療薬やワクチンの配分で自国本位の対応を極力、排除すべきだ。互いに協力して、新型コロナウイルス感染症への対応に必要な医療措置や、承認後のワクチン接種を、誰もが受けられるようにすること、また、ウイルス感染や重症化のリスクが高い人や、社会から見捨てられ治療薬やワクチンに手が届かない人に対する支援を怠ってはならない。また、国家間の協力は、二国間ではなく地域全体の要請を優先しなければならない。市民の求めと人権規範や基準に従い、治療薬やワクチンの配分におけるガイドラインを定めることも求められている。

アムネスティは、前例のない危機にある中、南北アメリカ諸国が人権を尊重する仕組みを強化することも不可欠だと考える。この点においては、米州機構の加盟国と事務総長に対し、南北アメリカ諸国間の人権保護機関の自主性と独立性の尊重を強く求める。

さらに、独立した調査ルートを確立し、米州人権委員会に申し立てられた案件すべてを適切に追跡調査すること、それによって当事者の安全と公的管理の透明性を確保し、必要に応じた責任の所在の明確化と補償措置を可能にすべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2020年10月15日

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