イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:パレスチナ人へのワクチン拒否 極まる差別

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2021年1月14日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
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(C) GettyImages
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イスラエル政府は、パレスチナ人にも新型コロナウイルスのワクチンを配布すべきだ。イスラエルは1967年の中東戦争以来、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区とガザ地区を占領してきた。占領国としての国際的責任を果たし、ヨルダン川西岸地区とガザ地区に住むパレスチナ人も直ちに公平にワクチン接種できるようにすべきだ。

イスラエルでは、昨年12月23日に新型コロナワクチンの接種が始まり、これまでに全人口の1割以上の住民が1回目の接種を終えている。どの国よりも高い人口比の接種率が評価されている。しかし、接種対象は、イスラエル人とエルサレムのパレスチナ人だけだ。西岸地区とガザ地区に住む約500万のパレスチナ人は、対象になっていない。

新型コロナ感染対策においても、イスラエルは、パレスチナに対する露骨な差別的政策を変えようとしていない。イスラエル人には、記録的な速さでワクチン接種が進められ、500万人のパレスチナ人は除外されている。イスラエル人の命がパレスチナ人の命よりも重いという姿勢が、これほど鮮明になるのもまれだ。

イスラエル当局は、国際法に従い、支配下に置くパレスチナ人にもワクチンを等しく配布すべきだ。また、ワクチンをはじめとする医療品が、被占領パレスチナ地域に滞りなく届けられるようにすべきだ。

イスラエルの保健省は、被占領地域のパレスチナ人向けを含むワクチンの具体的な配布計画を明らかにしていないし、パレスチナの保健当局が負担するワクチン費用の支払についても何も決めていない。

新型コロナウイルス感染拡大が続く中、イスラエルはパレスチナ人への差別をやめ、パレスチナ人がワクチン接種を含む医療的措置を受けられるようにすべきだ。イスラエルは、ジュネーブ第4条約に基づき占領地域に医療機関や病院を設置し、医療サービスの提供、公衆衛生の実施などの義務を負っており、感染症や伝染病の拡大対策も例外ではない。

西岸地区のパレスチナ当局とガザ地区を事実上統治するハマス政権は、パレスチナ住民へのワクチンを独自に購入する資金がない。そのため、国連などが主導する「COVAX (コバックス)」に期待を寄せる。COVAXは、新型コロナウイルスのワクチンを世界各国で共同購入して分配する国際的枠組みで、参加国には公平にワクチンが配布される。しかし、この枠組みでのワクチン配布は、まだ始まっていない。そのため、パレスチナ人が迅速にワクチン接種を受けられるよう、イスラエルが十分な財政的支援をする必要がある。

同時にイスラエルは、ガザ地区の人や物の出入りを著しく制限する軍事封鎖も解除するべきだ。新型コロナウイルス感染が拡大する中、封鎖による医療体制への影響は計り知れない。半世紀にわたる占領と10年超の封鎖により、ガザの住民は、必要な医療を受けられなくなっている。感染拡大と差別的ワクチン政策により、パレスチナ住民に対する差別と不平等は、深刻になるばかりだ。

イスラエルは、国際人道法と国際人権法の下、占領国としての義務を果たさなければならない。義務とは、被占領パレスチナ地域における住民の心身の健康を極力維持することだ。

ワクチン配布政策には、排除や差別があってはならず、いかなる意思決定も虐げられている人びとへの配慮を最優先しなければならない。人権や健康を擁護する10の団体が昨年12月22日、イスラエルに対してワクチンが占領下のパレスチナ人にも行き渡るよう求める声明を出している。

12月初旬、イスラエルは、ファイザーとワクチン800万回分の供給について合意した。イスラエルの人口のおよそ半分の400万人弱が、必要な2回の接種を受けることができる。また、モデルナとも600万回分のワクチン購入で合意したことで、さらに300万人分のワクチンを確保している。

ワクチン配布が急速に進む中、アムネスティはすべての国と企業に対し、居住地、人種、民族、ジェンダー、収入などの理由で、ワクチン接種を受けられない人がいるという事態が生じないよう求めている。

背景情報

世界保健機関(WHO)によると、1月3日現在、被占領パレスチナ地域では、感染者が初めて確認された昨年3月以来、15万9,034人が感染し、1,600人近い死者が出ている。

一方、イスラエルでは初の陽性者が報告された昨年2月以来、43万5,866人が感染し3,400人近くが亡くなった(イスラエル保健省1月3日発表)と発表している。複数の情報によると、昨年12月初旬、ワクチンの1回目の配布分、31万3,000回分がイスラエルに届き、12月末までに追加の380万回分が届いているはずだ。

半世紀以上にわたる占領と差別政策で、イスラエルはパレスチナ人の基本的権利を奪い、大規模な人権侵害を犯してきた。1990年代にイスラエルと合意した暫定平和協定により、パレスチナは、被占領西岸地区の一部の管轄権を持つが、限定的で名ばかりだ。東エルサレムを含む被占領西岸地区では256の入植地におよそ60万のイスラエル人が入植する。イスラエル人による入植は、国際法違反だ。

アムネスティ国際ニュース
2021年1月6日

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