イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:不処罰で繰り返される市民の犠牲

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2021年5月19日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争

© Mustafa Hassona/Anadolu Agency via Getty Images)
© Mustafa Hassona/Anadolu Agency via Getty Images)

イスラエル軍とガザ地区のパレスチナ武装グループは、過去数回の衝突でもあった民間人の殺傷、家屋やインフラの破壊などの国際人道法違反を繰り返してはならない。

5月10日以降、パレスチナ武装グループは、イスラエル中央部の居住地域とガザ地区との境界近郊の町を1500発を超えるロケット弾で攻撃し、民間人を殺傷した。一方、イスラエル軍によるガザ地区への空爆で、ガザ市民が死傷し、少なくとも集合住宅2棟とオフィスビル1棟が損壊した。こうした建物を標的とする攻撃は、パレスチナ住民に対する集団的懲罰に相当する。

ガザ地区では、子ども14人を含む少なくとも53人が死亡し、イスラエル側では7人が犠牲になった。今後、武力衝突の激化で、民間人の流血の惨事が繰り返され、家屋や道路、施設などの破壊の拡大が懸念される。

すべての紛争当事者は、民間人を保護する絶対的な義務がある。紛争当事者は、国際刑事裁判所の厳しい捜査を受けることも忘れてはならない。また、過去のように、国際人道法違反行為が裁かれずにすむなどと考えてはならない。

衝突の激化で、民間人が紛争の矢面に立った2008年、2012年、2014年が思い起こされる。2007年以降、ガザ地区はイスラエル軍により違法に封鎖されてきた。この封鎖は集団的な処罰にあたる。封鎖されたガザ地区は、イスラエル軍の攻撃を受け、多数の市民が犠牲になり、町は破壊された。

イスラエル軍とパレスチナ武装グループの双方が、罪を問われないまま戦争犯罪などの違反行為に加担してきた。イスラエルはこれまで、ガザを違法に攻撃し民間人を殺傷するなど、戦争犯罪や人道に対する罪などにあたる攻撃をしてきた。

一方、パレスチナの武装グループも、国際人道法に違反する行為をしながら、裁かれることはなかった。アムネスティは、パレスチナ武装グループによるロケット弾の無差別な砲撃を一貫して非難してきた。正確に照準を合わせることができないロケット弾を人口密集地域で使用するのは、イスラエルとガザ地区の境界近くの市民を身の危険にさらすことになる。戦争犯罪にあたる可能性もある。

今回の衝突では、イスラエル中部のロッド市郊外の村に住むパレスチナ人(50歳)と娘(15歳)が、ロケット弾とみられる砲撃を受けて、死亡した。イスラエルが村として公認されていないため、シェルターがなく、ロケット弾の飛来を知らせる警報設備もなかった。

集団的処罰

イスラエル軍は5月11日早朝から、ガザ地区の多数の集合住宅を攻撃した。13階建のアパートが倒壊し、瓦礫となった。住民は、攻撃の事前通告を受けていたため避難していた。5月12日には、数棟の高層ビルが攻撃を受け、倒壊して瓦礫となった。特定のアパートが攻撃対象だったため、周辺のビルは部分的な損傷ですんだところもあった。

民間の建物や施設を狙った攻撃や広範囲で不当な破壊は、戦争犯罪にあたる。高層住宅全体を破壊し、数十家族の住居を奪うのは、集団的処罰に相当し、国際法に違反する。建物の一部が軍事目的で使用されているとしても、イスラエルには、攻撃方法を選び、市民とその財産への影響を最小限にする義務がある。

アパートの最上階部を狙った攻撃があったが、階下に住む女性と障がいを持つ息子が犠牲になった。攻撃を受けた別のアパートでは、武装グループ「イスラム聖戦」のパレスチナ人兵士3人が死亡した。砲撃音で目を覚ました住民の一人は、「建物が狂ったよう揺れた。慌てて階下に降りて外に飛び出した。建物は壊れなかったけど、考えただけでもぞっとする」と話した。

アムネスティは、国際社会と米国をはじめとした国連安保理理事国が、紛争の両当事者を人道法違反で非難し、民間人を巻き込まないよう警告するよう求めている。米国は決断の先送りをやめ、国連安保理が速やかに紛争当事者に強く働きかける声明を出せるようにすべきだ。

安保理理事国は、強固で公正な立場に立ち、直ちにイスラエル、ハマスなどのパレスチナ武装グループへの武器禁輸措置を取らなければならない。国際人道法違反と人権侵害をこれ以上繰り返させてはならない。

また、 国際社会は、イスラエルが今回、紛争の再発に至った根本原因に対処するよう圧力をかけなければならない。戦争犯罪などの国際法違反、入植地の拡大、ガザの封鎖、パレスチナ人の強制退去や土地収奪などの問題だ。

アムネスティ国際ニュース
2021年5月11日

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