メキシコ:女性を標的とした殺人が多発 怠慢捜査でおびやかされる女性の命

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. メキシコ:女性を標的とした殺人が多発 怠慢捜査でおびやかされる女性の命
2021年10月 1日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:メキシコ
トピック:

メキシコ州で多発する女性を標的とした拉致・殺害事件の捜査で、証拠の紛失、なおざりな捜査、ジェンダー差別の視点の欠如など捜査当局の不作為が、際立っている。その結果、犯罪者が逮捕や起訴されず、処罰されない事案が増えている。アムネスティの調査でわかった。

捜査当局の怠慢ぶりは、市民団体や被害者遺族も指摘する。フェミサイド(女性を標的とした殺人)は全土で発生しているが、その捜査や再発防止が機能不全に陥っていることも、全土の問題なのだ。

どの事件も、被害者遺族に計り知れない苦しみを与える。その上、真相究明、犯人の処罰、補償を求める遺族に、捜査当局の怠慢が追い打ちをかける。

こうした状況を踏まえて、アムネスティはメキシコ政府に対し、国をあげて女性への暴力問題に優先的に取り組むよう求めてきた。

各州政府も法律に従ってフェミサイドの捜査や犯人逮捕、再発防止などに取り組むべきだ。州政府もメキシコが加盟する女性の権利を保証する国際的な条約や協定に従う義務を負う。

メキシコでは、2020年だけで3,728人が殺され、そのうち940人が、フェミサイドの犠牲者とみられる。フェミサイドは、全32州で起きている。

アムネスティは、拉致後に殺害されたフェミサイドを象徴する4つの事件を調査し、それぞれの事件の捜査が、いかに欠陥だらけだったかを、報告書で詳述した。

4事件の犠牲は、2004年に殺されたナディア・ムチノ・マルケスさん、2015年に行方不明になったままのダニエラ・サンチェス・クリエルさん、2017年と2018年に、それぞれ失踪後死体で発見されたダイアナ・ベラスケス・フロレンチオさん、フリア・ソサ・コンデさんだ。いずれの事件でも捜査当局は、犯行現場で適切な捜査や証拠保全や検死を怠り、証拠や証言記録を紛失するなどしていた。

当局は、常に必要な捜査をすべてしているとは限らないため、遺族が、自ら捜査の口火を切ることもある。遺族は時に、事件の詳細を上層部に知られたくない捜査員から圧力や嫌がらせを受けることもある。また、当局の捜査や訴追などの司法手続きには、フェミサイド事件の捜査の国際ルール違反にあたるジェンダー視点の欠如が見受けられることもある。

アムネスティの調査で、メキシコ州当局が捜査に必要な要件を満たしていないことも明らかになっている。必要な人的・物的資源が不足し、収集した証拠を保管する場所にも事欠く。捜査員は、その業務量が過多な上、必要経費の一部を自己負担している。適切な捜査に求められる技能の研修実施も喫緊の課題だ。

調査で露呈した捜査当局の怠慢は、女性たちが生きる権利を奪われ、遺族たちは、法的保護や裁判で訴える権利を侵害されている。

アムネスティは、犠牲者らの権利保護に向け、以下の提言をする。

  • メキシコ州検事総長へ:ジェンダーに基づく暴力に関わる犯罪を担当する部署は、職員がその役割を的確に果たせるよう、適切な労働環境を提供し、人的・財政的資源を確保することを保障する。ジェンダー差別の視点で女性の拉致・殺害を捜査する手法を習得する必要があり、その研修を実施する。
  • メキシコ州議会へ:連邦検察長官事務局、特にジェンダーに基づく暴力に関わる犯罪を担当する部署は、その職務を適切に遂行する上で必要な人的・財政的資源を保持することを保障する。
  • メキシコ州人権委員会へ:女性への暴力犯罪、特に女性を標的とした拉致・殺人の捜査が頓挫している問題を調査し、アムネスティの報告書が指摘する各種問題に対処する提言を行う。
  • 連邦当局へ:メキシコ全土に発生している特に女性を標的とした拉致・殺人事件および捜査の不作為が深刻な事態にあることを公に認める。

アムネスティは 報告書の公表と並行して、#HastaSerEscuchadas(Until they Are Heard「聞き入れられるまで」)キャンペーンを始めた。その狙いは、関係当局が、捜査上の失態を認め、アムネスティの提言を実行し、犠牲者と遺族が被った損失を補償する手続きを開始するように、当局に働きかけることにある。

アムネスティは、真実・正義・補償を求める遺族とともに声を上げ、それらが実現するまで遺族を支援する活動を続ける。

アムネスティ国際ニュース
2021年9月20日

英語のニュースを読む

関連ニュースリリース