ウガンダ:強制退去から13年 正義を求め続ける先住民族

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2021年11月15日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ウガンダ
トピック:強制立ち退き

ウガンダの先住民族ベネトの人びとは、ケニア国境にまたがるエルゴン山の森にある先祖代々の土地から強制的に退去させられてから13年が経った今も、水道やトイレ、医療に事欠く再定住地での悲惨な暮らしを強いられている。

アムネスティは、強制退去を受けたベネトの61人に聞き取りをした。この調査で、およそ1万8千人が、強制退去を受け続けたことで、健康や住居、教育の権利などを含む権利全般で数々の影響を被ってきたことが明らかになった。

ムセベニ大統領と政府が彼らの窮状を改善すると再三約束したにもかかわらず、生活様式の崩壊による苦しみは今も続き、森林監視員からの暴力の脅威もつきまとう。

ベネトの人びとが最初に先祖伝来の土地を追われたのは、1983年の国家森林局による強制立ち退きだった。続いて1993年、森林が国立公園に指定されたのを機に野生生物局によって退去させられた。さらに野生生物局は2008年にも、国から代替地を提供されたにもかかわらず国立公園内に住み続けていると主張して200家族を追い出した。

ベネトの人びとは、先祖伝来の土地を奪われただけではない。移住先では今に至るまで、泥と木の棒でできた粗末で一時しのぎの小屋に住み、飲料水や電気がなく、医療や教育も受けられない過酷な環境に置かれ続けている。

ベネトの人びとが住む森は、1993年に国立公園に指定された。その後、森に入ろうとすると、野生生物局の係員から、暴力や銃撃、また拷問など国際法に反する扱いを受けたとして、ベネトの人びとは野生生物局に抗議した。また、住民は、森に配属された野生生物局の監視員から、森で農業や放牧、伝統行事などをしないよう脅されたという。

政府は、ベネトの人びとを森の先住民とみなし、古来から慣れ親しんだ土地に戻さなければならない。ムセベニ大統領は、この問題への善処を何度も約束したが、何の対応も取られないまま歳月が過ぎた。

ベネトの人びとは、正義を訴える先もなく、なすすべもない状態が続いている。この事態は、国内法と国際法に従って、速やかに改善されなければならない。

アムネスティは、同国の多数の政府機関に調査結果を提示し、ベネトの人びとの権利保護に向けた協力関係を築いている途上だ。

各地で起きる強制立ち退き

立ち退きを強いられたのはベネトの人びとだけではない。

ウガンダ北部のアパアの住民は2018年5月、居住地が野生動物保護地区にあたるとしてウガンダ兵と野生生物局から強制立ち退きを受けた。2018年5月までに、250家屋以上が火をつけられ、数百人が家を失った。違法で暴力的な住民排除は、2019年と2020年も続いた。

西部のキリャンドンゴでも工業型農業開発による強制退去があり、その被害件数は、今年1月の時点で2,300戸あまり、3万5千人以上にのぼる。

2016年、ムセベニ大統領は、判事を委員長に据えて全国各地の土地紛争を調査する委員会を立ち上げたが、委員会の最終報告書は、いまだに出ていない。

この事態で明らかなのは、ウガンダ政府が、法と実務の両面で強制退去を停止する必要があるということだ。政府は、先祖伝来の土地の所有権などの先住民族の権利を尊重するだけでなく、すべての人の居住の権利を差別なく保障しなければならない。

政府は折に触れ、ベネトの人びとを強制退去させる理由として、気候変動とその対策としての自然保護の必要性を挙げている。世界の先住民族は何世紀にもわたり、生態系と共生することで持続可能な生活を続けてきた。国がベネトの人びとと一緒にエルゴン山を管理するなら、彼らが持続可能な生活を続けることは明らかだろう。

学術研究によると、自然保護は、国が対等なパートナーとみなした先住民族とともに取り組む時、最もうまくいくという。自然保護が人権侵害をひきおこしたり、人権侵害の正当化に使われたりすることがあってはならない。

立ち退きは、いかなる時も最終手段であり、その実施は、必ず国際人権基準が定める適正手続き要件に従わなければならない。ウガンダが加わるアフリカの協定や国際条約は、立ち退きを最小限と規定し、強制立ち退きを禁じている。加盟国としてウガンダもこれらの国際規定に従う義務がある。

狩猟採集と牧畜の両方で生活するベネトの人びとは、山の未開人を意味する「ンドロボ」と揶揄されることが多い。その土地問題は、植民地時代に遡る。英国植民地政府が、有史以前からベネトの祖先が住んでいたエルゴン山の荒れ地と草原を、森林保護区と宣言した。独立から60年近くたった今も問題は続き、事態は年々悪化している。

アムネスティ国際ニュース
2021年11月8日

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