ウクライナ:紛争拡大すれば数百万人が人道危機に

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2022年2月 9日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ウクライナ
トピック:

ロシアによる軍事力行使の脅威が迫る中、ウクライナでの武力紛争が再び激化すれば、周辺地域を含めた人権は壊滅的な状況になるおそれがある。市民の生活や生命、都市のインフラが脅かされ、食糧不足は深刻化し、いずれ大規模な立ち退きが起きる可能性もある。

紛争の脅威の影響は、経済的、社会的権利の面ですでに現れている。食品をはじめとする生活必需品の価格が上昇し、市民の健康の権利と適切な生活水準の権利が脅かされ始めた。高齢者、幼児、低所得者らは、特に深刻な影響を受けている。

この2週間、学校は治安上の問題から断続的に閉鎖され、教育を受ける権利が影響を受けている。ロシアでもルーブルの価値が下がり、物価が上昇している。

ロシアがウクライナとの国境に軍を集結させていることによる脅威は、すでにウクライナ市民ら何百万人の人権に影響を及ぼしている。もし、ロシアが侵攻すれば、壊滅的な事態になるだろう。

ウクライナでは近年、東部都市ドンバスでロシアが関与する紛争が起き、クリミアは、違法に併合された。市民の権利はロシア軍に踏みにじられ、地域社会や家族は、引き裂かれた。もう同じことを繰り返させてはならない。

軍事紛争では、市民は保護され、暴力行為は罪に問われなければならない。アムネスティは、厳しく監視し、当事者が誰かを問わず、国際人道法や人権法に反する行為があれば、公表する。

ロシア軍による人権侵害

この数年、ロシア軍はさまざまな状況で国際法を軽視してきており、今後も同様の行動をとる懸念は大きい。

例えば、ロシアは2015年、シリアのホムス、イドリブ、アレッポの住宅街を空爆し、少なくとも200人の市民が亡くなった。2020年には、シリアの学校や病院を空爆した。

ウクライナ東部で今も続く紛争で、ロシアの支援を受けた分離派武装勢力が、国際人道法に反して人口密集地域で不正確な武器を使用した。また、住居や個人の建物を拠点に攻撃を加えた。

ロシア軍の紛争介入には、国際人道法に対するあからさまな違反の過去がある。ウクライナ、シリア、あるいは国内のチェチェンでもそうだった。また、ロシアはしばしば戦争法を軽視し、市民を保護するどころか、攻撃対象にしてきた。

ウクライナで新たに民兵が誕生する可能性があることも重大な懸念だ。東部ドンバスでロシアの支援を受ける武装勢力は、国際人道法を無視することでつとに知られている。

難民危機のおそれ

2014年から2015年にかけて特に衝突が激しかった東部ドンバスの紛争では、両陣営による人道法違反が頻発し、深刻な人道危機を引き起こした。100万人を超える市民が住み慣れた土地を追われ、1万3,000人以上が命を落とし、今も犠牲者は増えている。

土地に留まった人や戻った人は、経済状況が悪化する中、その日暮らしの厳しい生活を強いられている。

ウクライナ社会政策省によると、ドンバス紛争や占領下のクリミアから逃れたおよそ145万人が、今も国内で避難生活を送っている。軍事的緊張が高まれば、国内避難民はさらに増え、数百万人が近隣国に庇護を求め、欧州全体の人道問題に発展するおそれもある。

またウクライナは、ロシア、ベラルーシ、中央アジアの人びとが庇護を求める国でもある。だが、もしロシアがウクライナに対して軍事行動を起こせば、難民問題はかつてなく深刻になるだろう。

ウクライナ内外への影響

紛争ではウクライナでのゲリラ戦が長期化する可能性があり、また武器の違法な流出、野放図な軍事企業の参入、暴力と不処罰のまん延などで、地域の人権状況はさらに悪化する。経済状況が悪化すれば、その影響はウクライナ経由のパイプラインで届くロシアの天然ガスに依存する欧州にも及ぶだろう。

今後、欧州のど真ん中で核保有国と他の国々を巻き込む武力衝突が起きれば、地政学的な抑制と均衡が崩壊し、世界の人権に予測できない影響を及ぼすおそれがある。

西側とロシアの関係が悪化すれば、世界中の地域紛争で当事者による積極的介入が増え、エネルギー政策が武器として使われ、外交政策の手段としての武力行使に備える国が増える潜在的可能性がある。

アムネスティ国際ニュース
2022年1月28日

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