ウクライナ:ロシア占領地域のウクライナ人の移送は戦争犯罪

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2022年11月20日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ウクライナ
トピック:

ロシア当局が、ウクライナの占領地域から民間人を強制的に移送・国外追放したことは、戦争犯罪に相当し、人道に対する罪である可能性も高い。

ロシア軍と親ロシア派勢力は、ロシアが占領するウクライナ地域の民間人を遠く離れたロシア支配地域やロシア国内に移送している。その過程で子どもを親から引き離すという国際人道法に反する行為もあった。

移動を強いられた人たちの話では「選別」にかけられた上に、時には恣意的な拘禁や拷問など不当で暴力的な扱いを受けたという。

住み慣れた土地から数百キロも離れた場所に移送され、子どもは家族から引き離された。ロシアの侵攻によるウクライナ市民の悲劇がここでも浮き彫りになっている。

それ自体が国際的犯罪にあたるウクライナ侵攻以来、ロシア軍はウクライナの市民を無差別に攻撃し、多数を殺害し、生活を破壊し、家族を引き裂いてきた。子どもも例外ではなかった。

強制移送や国外追放は、戦争犯罪にあたる。国際社会は、人道に対する罪として調査する必要がある。

移動を強要され今も拘禁されている人たちは、解放されるべきであり、人道に対する罪などにあたる行為に関与した人物全員が、その責任を追求されなければならない。さらに、ロシアは、拘束した子どもたちを家族のもとに返した上で、その家族がウクライナ支配下地域に帰還できる措置を取るべきだ。

アムネスティは、ロシアが占領する別の地域やロシア国内に移送された人たちに接触した。

ひとりの女性は、選別の過程で息子から引き離されて拘束され、息子と会えなくなった。女性が受けた対応は、明らかに国際人道法に違反する。

選別の過程で拘禁された人たちはアムネスティに、「殴打、電気ショック、殺害の脅しなどひどい扱いを受けた」と語った。多数が、水や食料を与えられず、鮨詰め状態で拘禁された。

アムネスティは、子どもを含む男女88人に話を聞いた。大半がマリウポリの住民だった。ハルキウ、ルハンスク、ヘルソン、ザポリージャの住民もいた。ほぼ全員、特にマリウポリの人たちは「ロシアかロシア支配地域へ行くよりほかない、強制的な状況だった」と話した。

アムネスティは、ロシア占領下にあるドネツク地方の「ドネツク人民共和国」を含む地域のロシアへの併合は違法だと考える。

マリウポリからの強制移送

今年3月初旬、ウクライナ南東部マリウポリがロシア軍に包囲され、市民は避難することができなくなった。市街が砲撃にさらされ、家庭では水道水や電気などが使えなくなった。

3月半ば、数千人がロシア占領地域から逃れたが、ロシア軍による制圧がマリウポリ全域に拡大する中、他の都市への道路が封鎖され、住民はロシア占領地域への移動を強いられた。複数の住民によると、「ドネツク人民共和国」への避難者用バスに乗らざるを得なかったという。

ミレーナさん(33歳)は、マリウポリから脱出しようとしたとき、「どこに避難すればいいか尋ねまわったけど、(ロシア兵に)『ドネツク人民共和国』か、ロシアにしか行けない、と言われた」と話した。ミレーナさんの夫はウクライナ軍の元海兵隊員で、ロシア国境を越える際に拘束され、いまだに解放されていない。

子どもの強制移動

武力紛争法は、支配地域に住む市民を強制的に移動させることを禁じている。ウクライナが掌握する地域へ逃れようとした子どもが、ロシア軍の検問所で止められ、ドネツク州のロシア支配下組織に引き渡された事例が数件あった。

国際人道法違反にあたる家族から引き離された少年(11歳)と母親は4月半ば、マリウポリのイリッヒ製鉄所でロシア軍に拘束された。また、マリウポリにある高齢者や障がい者の施設の92人の入居者全員が、ドネツクから強制的に移送させられた。

アムネスティは、ウクライナの高齢者が自宅を出た後、ロシアあるいはロシア支配地域の施設へ収容されたとみられる複数件の事例を調べた。支配地域に入れば、ロシアからの帰還やウクライナにいる家族と再会することが難しくなる。

複数の人たちが、一旦ロシアに入るとロシアの市民権申請への圧力を感じ、行動も制限されると証言した。孤児や親がそばにいない子ども、障がい者などは、ロシアの市民権を得る手続きが簡略化された。これは、ロシア人家族にとってウクライナの孤児らの養子縁組が容易にできることを意味し、国際法に違反する。

こうしたことは、強制移送・国外追放が意図的な政策であることを示しており、戦争犯罪というだけでなく、人道に対する罪に相当する可能性が高い。

選別、拘禁、拷問

ロシア占領地域やロシアに逃れ、あるいは移送されたウクライナ市民の多くが、「ドネツク共和国」に入るとき、ロシア国境を越えるとき、またロシアから第三国に向かうときに、暴力的な選別手続きを受けた。この手続きは、プライバシーと身の安全に対する権利を侵害する。選別では、写真撮影、指紋採取、携帯電話の検査、尋問などが行われていた。

アムネスティは、拘禁中に拷問などの暴力を受けた7人に話を聞いた。

ビタリイさん(31歳、男性)は、4月28日に避難者用バスでマリウポリを出ようとした際に拘束された。書類に不備があるとして他の男性とともにバスに押し込まれ、ドネツクに近い町に連れて行かれ、他の男性15人とともに拘禁された。その後尋問を受けた時には、両手を縛られ、頭から袋をかぶせられてひざまずかされ、殴る蹴るなどの暴行を受けた。

アムネスティが調査した他の事例には、国際人権法上の強制失踪や、戦争犯罪にあたる不法監禁、拷問、非人道的扱いがあった。

アゼルバイジャン出身の学生フセインさん(20歳)は、3月中旬にマリウポリからザポリージャに逃れる際に拘束され、1カ月間近く拘禁された。ウクライナ軍の一員と疑われ、尋問中ひどく殴られたという。何度も電気ショックを与えられ、気を失うとバケツの水をかけられ、求められた通り「兵士だ」と答えると、さらに殴られた。この拷問が何日も続いた。

ロシアと親ロシア派勢力は、拘束した人たちへの暴力や虐待を直ちにやめなければならない。

国際刑事裁判所検察局や関連当局は、避難者らに対する犯罪行為を調査しなければならない。国外追放や強制移送、拷問、選別中に行われた国際法上の犯罪に責任を負う者は全員、裁きを受けるべきだ。

戦争犯罪の責任追求

アムネスティは、ロシアがウクライナに侵攻して以来、戦争犯罪などの国際人道法違反にあたるロシアの行為を調査し記録してきた。

アムネスティは、ウクライナの侵略と人権侵害を行ったロシア軍の兵士や幹部への責任追求を繰り返し求め、進行中の国際刑事裁判所によるウクライナでの調査を歓迎してきた。ウクライナをめぐる包括的な責任追求には、国連と関連機関の協調した取り組みだけでなく、普遍的管轄権の原則に基づく国家レベルでの行動が必要です。

アムネスティ国際ニュース
2022年11月10日

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