イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:イスラエルの攻撃で一家全滅 戦争犯罪の動かぬ証拠

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2023年10月27日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争

イスラエル軍がガザ地区への攻撃を強める中、アムネスティはイスラエル軍による無差別攻撃などの違法な攻撃を調査・確認してきた。アムネスティは、10月7日から12日にかけてのイスラエル軍による空爆を受けた人たちに話を聞き、衛星画像や写真などを調べた。

この記事では、イスラエル軍の5件の攻撃を示す。いずれも国際人道法に違反する攻撃だった。

ハマスの壊滅のためにあらゆる手段をとると公言するイスラエル軍の攻撃は、市民の命を軽視していることは明白だ。ガザでは、水、医薬品、燃料、電気などが著しく不足している。アムネスティが目撃者や被害者から得た証言で、イスラエルの攻撃によるパレスチナ人家族の破壊ぶりが浮き彫りになった。

イスラエルは、16年にわたるガザ封鎖で世界最大の「天井のない監獄」に置かれてきたガザ市民への攻撃を即刻停止すべきだ。

ガザのパレスチナ保健省によると、10月7日以来、イスラエル軍によるガザ地区への数千の空爆で少なくとも3,793人が死亡した。うち約1,500人が子どもだ。負傷者の数はおよそ12,500人に上り、1,000人以上の遺体がいまだがれきの下敷きになっている。

イスラエルでは、同国保健省によれば、ガザ地区の武装組織が10月7日に攻撃を開始して以来、1,400人以上が死亡し、約3,300人が負傷した。ガザの武装組織は無差別にロケット弾を発射し、戦闘員をイスラエル南部に送り込み、民間人を故意に殺害したり、人質に取ったりなどの戦争犯罪を犯した。イスラエル軍によれば、ハマスの戦闘員は200人以上の民間人の人質や軍の捕虜をガザ地区に連れ去ったという。

攻撃開始から数時間後、イスラエル軍はガザへの大規模な砲撃を開始したが、ハマスや他の武装集団も、イスラエルの民間人地域に無差別にロケット弾を撃ち続けている。この攻撃も戦争犯罪として捜査されるべきだ。どのような状況であれ、意図的な民間人の殺害を正当化することはできない。アムネスティは、ハマスをはじめとする武装組織に対し、すべての民間人の人質の解放とロケット弾攻撃の停止を求めている。

一方、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区では、少なくとも79人のパレスチナ人がイスラエル軍や入植者に殺害されている。この件も、アムネスティは調査している。

アムネスティはガザでの攻撃の調査を続けているが、今回は、住居ビル、難民居住区、民家、市場に対する5つの攻撃について報告する。イスラエル軍は軍事目標だけを攻撃しているというが、多くの場合、攻撃時に戦闘機などの軍事目標があったことを示す証拠は発見されていない。また、イスラエル軍がパレスチナの民間人に事前警告をしなかったなど、民間人の犠牲を出さないようにする予防措置を怠った。

国際刑事裁判所の検察官が、すべての当事者による戦争犯罪や国際法上の犯罪の証拠について、捜査を迅速に進めることが重要だ。パレスチナ人に対するイスラエルのアパルトヘイト体制の解体と正義なくして、現在進行中の市民への攻撃が終わることはない。

国際社会はイスラエルに対し、ガザの完全封鎖を解き、ガザへの人道支援を認めるよう求めるべきだ。また、イスラエルにガザ封鎖の解除も促さなければならない。さらに、イスラエルは、住民の強制移動に相当する可能性のある「避難命令」を撤回する必要がある。

代償を払うガザ市民

イスラエル軍によるガザ地区への攻撃は、10月7日から12日までの間に5回あった。イスラエル当局はアムネスティのガザへの入境要請を認めないため、アムネスティは、ガザを拠点とする現地の調査員を通じて、17人の目撃者と6人の犠牲者親族に電話で聞き取りをした。また、アムネスティのクライシス・エビデンス・ラボが衛星画像を分析し、攻撃現場の写真やビデオを検証した。

一家全滅

10月7日午後8時20分頃、イスラエル軍はガザ市のアル・ゼイトゥーン地区にある3階建ての住宅を攻撃した。この攻撃で一族15人が死亡した。うち7人が子どもだった。

この攻撃で自宅が損壊した隣人は、「イスラエル軍から警告を受けていなかった」と話した。攻撃された3階建て住宅に人が大勢いたという事実は、警告がなかったという話を裏付ける。

アムネスティの調査では、攻撃時にこの地域に軍事目標があったことを示す証拠は見つかっていない。もしイスラエル軍が、攻撃時に民間人しかいないことを知りながら攻撃したのであれば、戦争犯罪を犯したことになる。軍事行動の正当性を示すのは攻撃側の責任であり、イスラエルはその責任を果たすべきだ。たとえイスラエル軍が軍事目標だと考えて標的にしたとしても、民間人が密集する地域で、民間人が多くいる時に、これだけの数の民間人の死傷者と破壊を引き起こす方法で、住居ビルを攻撃することは無差別攻撃にあたる。死傷者を出す無差別攻撃は、戦争犯罪である。

10月10日にイスラエル軍の空爆を受けたガザ市のアル・サハバ通りでは、一家12人と隣人4人が死亡した。イスラエル軍は、この地域のハマスを標的にしたと発表したが、詳細情報はなく、軍事標的があった証拠も示さなかった。

アムネスティは、この攻撃で妹、2人の兄弟とその妻、5人のめいとおい、2人のいとこを失った男性に話を聞いた。「3階建ての実家が爆撃を受けた。突然のことで、みんな家にいて逃げる余地もなかった」

隣人の男性(37歳)も犠牲になった。3人の幼い子どもは全員負傷を負った。

不十分な警告

イスラエル軍は、市民にまったく警告を発していないか、発したとしても不十分だった。イスラエル軍が市民に安全な避難場所を確保したことはなかった。ジャバリア市場への攻撃では、避難命令に従って家を出た住民が、逃げた先で犠牲になった。

10月8日、イスラエル軍の空爆がガザ地区中心部の難民たちが暮らす居住区を攻撃し、2人の子ども(3歳と5歳)とその両親が亡くなり、2歳の娘と3歳のおいも負傷した。亡くなった父親の弟によれば、隣人が攻撃の警告を電話で受けたため、兄の家族も自分の家族もすぐに家を出たが、5時間たっても攻撃がなかったので、身の回りの物を取りに一度家に戻ったそうだ。しかしその時に爆弾が隣のアパートを直撃し兄の家も破壊されたという。

警告したからといって、武装組織が国際人道法に基づく義務から免れるわけではない。特に、警告してから時間が経過していたことを考えれば、直前に民間人がいるかどうかを確認すべきだった。またこれが、証言のように民間の建物に対する直接攻撃だったとすれば、戦争犯罪を構成する。

自分の子どもを探し続ける家族たち

10月9日午前10時30分頃、イスラエル軍の空爆は、ガザ市の北数キロに位置するジャバリア難民居住区の市場を襲い、少なくとも69人が死亡した。この市場の通りは、ガザ北部で特に賑わう商業地域として知られているが、9日のこの時間帯は、イスラエル軍からの「避難命令」のテキストメッセージを受け取って、早朝に手ぶらで自宅から逃げ出した近隣地域の数千人の人たちで埋め尽くされていた。

アムネスティのクライシス・エビデンス・ラボは、空爆後の市場を撮った動画を検証した。映像は、多層階の建物が密集する人口密集地を捉えていた。少なくとも3棟の建物が完全に破壊され、周辺の複数の建物が激しく損傷していた。映像では、がれきの下に多数の遺体も確認された。

イスラエル軍によれば、「ハマスのメンバーがいたモスク」を狙ったというが、その主張を裏付ける証拠を示さなかった。アムネスティが分析した衛星画像では、市場通り付近にモスクは確認できなかった。いずれにしても、政治グループのメンバーであるというだけで標的にしていいということにはならない。

目撃者の証言、衛星画像、検証されたビデオによれば、民間人に多くの犠牲者を出したこの攻撃は無差別であり、戦争犯罪として捜査されなければならない。

この攻撃で19歳の息子を亡くしたジヤド・ハマドさんは、イスラエル軍からのメッセージを受け取り、攻撃の前日に、5キロも歩いて国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)が運営する学校の校内に家族で避難していた。息子は家族のためにパンとマットレスを買いにジャバリア市場に行き、命を落とした。

ハマドさんによると、息子の遺体を見つけた死体安置所には多数の遺体が収容され、地獄さながらだったという。床にころがる遺体の山から、だれもが自分の娘や息子らを探していた。ハマドさんは遺体のズボンから息子を特定することができた。

アムネスティの調査員がハマドさんと電話で話している間にも周辺の空爆音が聞こえた。

この聞き取り調査の後も、強制移動の規模も破壊の状況も拡大し、10月9日以降の全面封鎖による壊滅的な影響で、国内避難民の状況はさらに悪化している。

国連人道問題調整事務所によると、10月19日までにガザでの避難民数は100万人に達した。そのうち中央ガザと南ガザにあるUNRWAの緊急避難所に約52万7,500人が逃れている。

死者を数えることすらできない

10月10日午後4時30分、イスラエル軍の空爆がガザ市のシェイク・ラドワン地区にある6階建ての建物を襲った。この空爆で建物は完全に破壊され、少なくとも40人の民間人が死亡した。

衛星画像によると、同じ通りにある複数の建物も、10月10日から10月11日にかけて被害を受けていることがうかがえる。アムネスティは、同地区の家屋破壊を裏付けるソーシャルメディアに投稿された2本の動画を特定した。そのうちの1つには、がれきの中から乳児の死体を引っ張り出す人たちの姿が映っていた。

娘と孫4人が殺された男性はこう語る。

「娘は、この地域が過去の攻撃で比較的安全だったために、子どもを連れてここに来た。今、がれきを手で取り除こうとしているところだ。死者の数を数えることもできない」

アムネスティの調査によると、空爆された建物の1階にはハマスのメンバーが住んでいたが、その者は空爆時は留守だった。もしその者が戦闘員だったとしても、戦闘員がいるからといって民間の建物やそこにいる民間人が軍事目標になるわけではない。国際人道法は、攻撃が無差別または違法であることが明らかになった場合、攻撃を中止または延期するなどして、民間人や民間人の財産への被害を最小限に抑えるために、実行可能なあらゆる予防措置を講じるよう求めている。

これらの予防措置は、シェイク・ラドワンでの空爆時に取られていなかった。建物には民間人が多数住んでいて、彼らの身の危険が予測できたはずだ。民間人を殺傷したこの空爆は無差別攻撃であり、戦争犯罪として捜査される必要がある。

アムネスティの要請

イスラエル当局に対して

  • 違法な攻撃を即刻停止し、国際人道法を遵守すること。民間人への被害を最小限に抑えるために必要な措置を講じ、民間人と民間物への直接攻撃、無差別攻撃、過度な攻撃をやめること。
  • ガザの民間人への人道支援をただちに認めること。
  • 現在の惨状と人道上の必要性に鑑み、集団的懲罰に相当し戦争犯罪であるガザに対する違法な封鎖を至急解除すること。
  • 100万人以上が移動を強いられている「避難」命令を撤回すること。
  • 被占領地パレスチナに関する独立調査委員会に対し、一刻を争う証言や証拠の収集など調査を認めること。

国際社会、特にイスラエルの同盟国であるEU加盟国、米国、英国に対して

  • ガザの民間人を違法な攻撃から保護する措置を取る。
  • 国際法上の犯罪に相当する重大な違反行為が行われているため、紛争当事者に対する包括的な武器禁輸措置を実施すること。各国はイスラエルに武器や軍事物資、関連技術、部品と構成要素、技術支援、訓練、財政支援などの供給をやめること。また、パレスチナの武装組織に武器を提供する国に対しても、同様の要請をするべきである。
  • ガザでのイスラエルの犯罪と違反行為を間接的にでも正当化する発言や行動を避けること。
  • ガザ地区における16年間の違法な封鎖を解除するようイスラエルに圧力をかけること。ガザの封鎖は市民への集団的懲罰に相当する戦争犯罪であり、イスラエルのアパルトヘイト体制を象徴する。
  • パレスチナの状況に関する国際刑事裁判所の現行の捜査への全面支持と必要な資金の確保を約束すること。

国際刑事裁判所の検察官に対して

  • パレスチナの状況に関する現捜査を加速させ、全当事者の犯罪の疑い、特にパレスチナ人に対するアパルトヘイトの罪を検証すること。

ハマスとその他の武装勢力に対して

  • 民間人に対する意図的な攻撃、無差別ロケット弾の発射、人質を取ることを直ちにやめること。民間人の人質を無条件で直ちに解放すること。

アムネスティ国際ニュース
2023年10月20日

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