イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:パレスチナ人被拘禁者に対する拷問 拘束急増の中で

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2023年11月21日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争

イスラエル当局はこの4週間、占領下のヨルダン川西岸地区一帯でパレスチナ人に対する行政拘禁(起訴・裁判なしで拘禁すること・恣意的拘禁の一形態)を劇的に増やしている。そして囚人に対する屈辱的な処遇を助長する非常事態を延長した一方で、拘束中の拷問や死亡に関する調査をしてこなかった。

非政府組織パレスチナ囚人クラブによると、10月7日以降、イスラエル軍は2,200人以上のパレスチナ人を拘禁した。イスラエルの人権団体ハモクドによると、起訴や裁判もなく行政拘禁されているパレスチナ人の数は、10月1日に1,319人だったのが、11月1には2,070人と1カ月間で激増した。

行政拘禁はイスラエルがパレスチナ人に対するアパルトヘイトを実行する上で重要な手段で、10月7日以前の時点で、すでに過去20年で最多となっていた。拘禁期限は際限なく延長が可能だ。

釈放された人たちや人権派弁護士からの証言、動画や写真は、囚人がイスラエル軍から激しい殴打や屈辱的な仕打ちなど、拷問にあたる扱いや虐待を受けたことを示している。

10月7日のハマスなどの武装勢力による誘拐や即決処刑は戦争犯罪であり、強く非難されなければならない。とはいえ、こうした攻撃があったからと言って、イスラエル当局は、ガザ地区の民間人への攻撃や集団的懲罰、パレスチナ人囚人に対する拷問や恣意的拘禁などを正当化することはできない。拷問の禁止は絶対的であり、いかなる事態でも、停止や逸脱は許されない。

アムネスティの調査員は、釈放された6人、拘禁が続く人たちの家族3人、釈放に取り組む弁護人3人の計12人に聞き取りをした。また、これとは別の釈放された人たちの証言を精査し、動画や画像を分析した。

拷問や屈辱的行為

アムネスティは過去数十年間、西岸地区一帯の拘禁施設内でイスラエル当局による拷問が広く行われていることを記録してきた。ただ、この4週間は、パレスチナ人被拘禁者に対する拷問や辱めの凄惨な様子が、動画や画像で冷然と公開されている。目隠しをされ、服を脱がされ、両手を縛られたパレスチナ人が、イスラエル兵士から殴打や屈辱的な扱いを受けている姿がオンラインに上げられているのだ。

アムネスティのクライシス・エビデンス・ラボが分析したある画像では、目隠しをされ、衣服をはぎ取られたパレスチナ人3人のそばには、イスラエル陸軍が着るような緑のオリーブ色の制服を着た兵士がいるのが見える。イスラエルの新聞ハアレツによると、この画像は10月12日に撮影されたものだという。

アムネスティは、屈辱的な扱いを受けた女性2人にも話を聞いた。2人は、占領下の東エルサレムの警察署で14時間にわたって恣意的に拘束され、辱められ、裸で身体検査を受けさせられ、あざけられ、ハマスを呪うように言われた。

10月31日にソーシャルメディアで公開され、クライシス・エビデンス・ラボが分析した動画では、拘束された男性9人が映っていた。彼らは兵士に囲まれ、全裸や半裸にされ、目隠しをされ、手錠をかけられていた。9人はそのアクセントからパレスチナ人だと特定できる。兵士の制服も武器も、イスラエル地上軍の標準装備である。

同じ日にX(旧ツイッター)に上げられた別の動画には、パレスチナ人らしき男性が目隠しをされ、その周りで男性をあざけるようにして踊っているイスラエル軍の軍曹の姿があった。

最近釈放された占領下の東エルサレムのパレスチナ人は、エルサレムの拘禁施設でイスラエル人尋問官から激しい暴行を受け、打撲傷を負い、肋骨が骨折したと語った。暴行は他の被拘禁者にも行われたという。

イスラエル当局によると、10月7日以降、パレスチナ人4人が拘禁施設内で死亡した。そのうち2人はガザ地区からの労働者で、地元紙の取材を受けて軍が公表した。

国際法では、占領地での保護対象者に対する拷問や虐待は戦争犯罪だ。イスラエルで拘禁されている被占領パレスチナ地域のパレスチナ人囚人のように、占領地外での拘禁も強制移送にあたり、国際人道法違反である。

刑務所での非人道的扱い

イスラエル矯正局は、11月1日現在、6,809人のパレスチナ人を収容していることを人権団体ハモクドに伝えた。

イスラエル当局は10月31日、「刑務所における非常事態」を1カ月延長した。この「非常事態」は、イスラエルの国家安全保障大臣に、受刑者に対する各種の制限や懲罰を科す実質無制限の権限を与えるものだ。具体的には、弁護人や家族との面会の禁止、過密な独房への収容、屋外での運動禁止、長時間の水や電気の遮断などで、被拘禁者に対する残酷で非人道的な扱いの強化が事実上容認されることになる。

赤十字国際委員会は、パレスチナ人が10月7日以降、家族や弁護人との接触を認められていないことを確認した。末期の病状にある男性のパレスチナ人の妻は、アムネスティに、10月7日以来、夫に会えず、病状を知ることさえできないと嘆いた。

10月7日以来、毎週数人の被拘禁者と面会してきたパレスチナ人弁護人によると、被拘禁者は屋外での運動を禁止され、受刑者の人数確認では全員床にひざまずかされたり、私物は、女性の生理用品を含め、一切没収されたりするという。

恣意的拘禁の急増

人権団体ハモクドによると、パレスチナ人の行政拘禁は増加傾向にあり、10月1日に1,319人、11月1日には2,070人を超えた。イスラエルが「治安上の理由のため」と分類するパレスチナ人被拘禁者は、多くの場合、起訴も裁判もないままに拘禁され、そのほとんどは、半年ごとに無期限に更新できる行政拘禁命令を受けている。

イスラエルの行政拘禁は、当局が安全保障上の理由で個人を拘禁するもので、拘束される本人や弁護人にはその理由を知らされず、国際法の下で自由を剥奪されたすべての人に保障される適正手続きを事実上回避する措置だ。イスラエルは、行政拘禁をパレスチナ人の迫害手段として利用してきた。

イスラエル当局は、国際法では認められていない「非合法戦闘員法」を適用し、10月7日のハマス主導の攻撃時にガザ地区からイスラエルに入ったパレスチナ人105人以上を起訴も裁判もなしに無期限に拘束している。このうち何人がハマスの攻撃に関係したかは明らかにされていない。

イスラエル当局はまた、イスラエルへの入国許可を持つガザ地区からのパレスチナ人数千人を少なくとも3週間、軍事基地に隔離拘禁した。新たな形態の恣意的拘禁である。多くは釈放されたが、現在何人が拘禁中なのか、イスラエル当局からの公表はない。

イスラエルは、パレスチナ人囚人に対する非人道的な緊急措置を直ちに撤回し、家族らとの面会を認めると同時に、恣意的に拘束しているパレスチナ人全員を釈放しなければならない。

アムネスティはイスラエルに対し、赤十字国際委員会が刑務所や拘置施設を訪問し、拘禁中のパレスチナ人の状況を査察する許可をだすよう求める。

一方、イスラエルの司法当局は、拷問や虐待などの不当な扱いについて公平かつ独立した聞き取りを実施し、不当行為の責任者を公正な裁判で訴追しなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2023年11月8日

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