イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:ガザ民間人43人が死亡した空爆 米製爆弾を使用

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2023年12月22日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争

被占領ガザ地区中部のデイルアルバラであった民間人家屋への2度の違法な空爆で、イスラエル軍が米国製の精密誘導爆弾(JDAM)を使用していたことがアムネスティの現地調査でわかった。アムネスティは家屋の瓦礫の中から見つけた弾薬の破片からJDAMを特定した。

これらの空爆は、民間人・民用物への直接攻撃、あるいは無差別攻撃で、アムネスティは戦争犯罪として調査するよう求めている。

10月10日の空爆では一家24人が、10月22日の空爆では別の家族19人が犠牲になった。2家族合わせた死者数は、子ども19人、女性14人、男性10人の計43人にのぼる。アムネスティが得た住民の証言では、いずれの空爆でも事前警告がなかったという。

米国バイデン政権は、米国製のJDAMによる違法な攻撃で多数の民間人が犠牲になったことを警告として受け止めるべきだ。

また今回の2家族の犠牲は、ガザ地区への砲撃で民間人を違法に殺傷してきたイスラエル軍の責任を問う上で新たな証拠になる。

ガザでのかつてない民間人の死者と家屋の破壊が激化する中、米国をはじめとする国々は、国際法に違反する行為に使用されるおそれがあるイスラエルへの武器供与を直ちに停止する必要がある。違法行為に使用されることを承知の上で武器供与を続ければ、違反行為の責任を共に負うことになりかねない。

戦争犯罪やその他の違法行為の証拠に照らせば、米国は武器の移転と売却に関する自国の法律と政策に従う必要がある。これには、「通常兵器移転政策」や「民間人被害事件対応ガイダンス」などがあり、両方とも民間人被害や人権または国際人道法の侵害を助長または助長するおそれがある武器の移転を防止するためのものである。

アムネスティの調べでは、空爆地点における軍事目標があったことや建物内にいた人たちが正当な軍事目標だったことを示す兆候は何一つ確認できなかった。したがって、空爆が民間人を狙った攻撃だったという懸念が拭えない。たとえイスラエルが軍事目標を狙ったのだとしても、人口密集地での兵器の使用は無差別攻撃にあたる可能性があり、戦争犯罪としての捜査が求められる。

アムネスティの武器専門家と遠隔探査分析の専門家は、衛星画像や、アムネスティの調査員が現地で撮影した、破壊された家屋や兵器の破片の写真を分析した。

標的や周辺の建物に大きな被害があったことから、爆弾の重さはおそらく1発は2,000ポンド(907kg)、もう1発が1,000ポンド(454kg)以上の重さがあったと考えられる。

アムネスティは、生存者や犠牲者の親族に聞き取りをし、衛星画像と目撃者の証言が破壊の場所・期間において一致することを確認した。11月21日にイスラエル軍に今回の2件の空爆についての質問状を送ったが、12月5日現在、回答は届いていない。

アムネスティは以前から国連安全保障理事会に対し、ガザとイスラエルとの紛争の全当事者に包括的な武器禁輸の実施を求めてきた。また、国際刑事裁判所の検察官に対し、全当事者の戦争犯罪やその他の国際法上の犯罪について、2021年に開始された捜査を迅速化するよう求めている。

国際人道法違反を支援しない義務

武力紛争の当事者は常に民間人・民用物や戦闘員・軍事目標を明確に区別しなければならない。民間人・民用物への直接攻撃や無差別攻撃は禁止されている。

イスラエル軍は軍事目標を攻撃する際、民間人の死傷や家屋などへの損害を回避し、被害を最小限におさえるよう、実行可能なあらゆる予防措置を講じる義務がある。標的が軍事目標であるという特定を徹底すること、民間人への被害を最小限に抑える攻撃手段と方法を選択すること、攻撃が過剰でないかどうかを評価すること、可能な場合には民間人に効果的な事前警告を与えること、攻撃が違法であることが明らかになった場合には攻撃を中止することなどだ。

アムネスティは、イスラエル軍が軍事目標とする攻撃対象の特定が不十分だとして懸念を示してきた。不特定多数の民間人を殺傷する無差別な攻撃は戦争犯罪の可能性がある。

包囲されたガザ地区の人口密度は極めて高く、紛争に関わる全当事者にとってさらなる困難がともなう。ハマスなどの武装勢力は、支配下にある民間人を攻撃の影響から守るため、あらゆる予防措置を講じることが国際人道法で義務付けられている。可能な限り人口密集地内やその周辺に軍事目標を置かないなどだ。今回の調査では、攻撃時、ハマスによる人間の盾や攻撃を受けた場所に戦闘員がいた形跡はなかった。

しかし、武装勢力がこの義務を果たさなかったとしても、イスラエルが、無差別・不均衡な攻撃を禁じる国際人道法上の義務を果たさなくていいということにはならない。

すべての国は、たとえ他国の行動であろうと、国際人道法のルールの尊重を確保する義務がある。条約尊重と尊重確保を求めたジュネーブ条約共通第1条に関する赤十字国際委員会(ICRC)の解説は、「人道法違反行為に使用されると知りながら、財政的、物質的、その他の支援を行うことは、共通第1条に違反する」としている。したがって、今回の米国のイスラエルへの武器供与は、ジュネーブ条違反と言える。

さらに、すべての国は、他国による国際的に不正な行為に故意に加担しない義務を負うため、米国が提供した武器でイスラエルが犯した重大な国際人道法違反について、米国は責任を共に負うことになりかねない。国家責任に関する規則は国際慣習法の規則である。国連国際法委員会(ILC)の「国際違法行為に対する国家の責任に関する条文」(国家責任条文)に反映されている。「国家責任に関する条文」の第16条によれば、国際人道法違反を支援した、あるいは加担する国家は、違法行為の状況を知りながら行った場合、かつ当該行為を自国が行った場合に国際違法行為となるような場合には、国際責任があるとみなされる。

背景情報

2023年10月7日、ハマスその他の武装集団はイスラエル南部に無差別ロケット弾を撃ち込み、戦闘員を送り込み、民間人を意図的に大量殺害し、人質に取るなどの戦争犯罪を犯した。イスラエル当局によると、人質に取られたのは子ども33人を含む239人で、ほとんどが民間人だ。12月1日時点で、ガザで拘束されていた113人の人質が解放されている。11月24日から12月1日まで続いた「人道的戦闘休止」の合意のもと、イスラエルの刑務所に拘束されていた240人のパレスチナ人が解放された。

アムネスティは、イスラエル軍によるガザへの激しい砲撃において、直接攻撃や無差別攻撃、その他の違法な攻撃や民間人への集団懲罰など、戦争犯罪の証拠を記録してきた。ガザのパレスチナ保健省によると、こうした攻撃によって、5,500人の子どもを含む15,000人以上(ほとんどが民間人)が死亡したという。

アムネスティは、即時停戦、人質の解放、イスラエルによるガザ包囲の停止を求めている。また国連安全保障理事会に対しては、イスラエル、ハマスその他の武装勢力に対する包括的な武器禁輸の実施を求める。関連技術、部品、技術支援、訓練、資金援助などを含む、武器および軍事物資の直接的または間接的な供給、販売、移転が対象である。

アムネスティ国際ニュース
2023年12月5日

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