イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:人道支援をさらに制限 国際司法裁判所の命令を無視

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2024年3月13日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:

国際司法裁判所(ICJ)は1月26日、ガザ地区への十分な人道支援を保障し、支援物資を届けるために必要な「即時かつ効果的な措置」を命じたが、その後1カ月、イスラエルは最低限の対応すら取ってこなかった。

支援物資の提供は、ICJが命じた6つの暫定措置の一つで、イスラエルはこの措置の履行状況の報告に1カ月の猶予を与えられた。しかし、同国はその後、ガザのパレスチナ人の基本的なニーズを保障するという占領国としての義務を放棄し続けている。

16年におよぶ違法な封鎖と今回の容赦ない攻撃で、イスラエルはガザの民間人をジェノサイド(集団殺害)の恐怖に陥れ、飢餓寸前にまで追い込んできた。また、救命物資の搬入規制を解除せず、人道支援者を攻撃から守る手立てを打つこともなかった。

イスラエルは、最悪の人道危機を引き起こしただけではなく、ガザの人びとを、ICJの言葉を借りれば「ジェノサイド寸前にまで追い込む」状況を作り出し、さらに人道危機を回避する最低限の対策を取ることもなかった。

占領側としてガザの民間人の基本的なニーズを満たすという国際法上の義務があるにも関わらず、イスラエルは人びとの生活に欠かせない物資の搬入を妨害してきた。ICJの暫定措置命令を無視する対応は、ジェノサイドを防ぐ義務にも違反する。

イスラエルの爆撃、破壊、包囲による人道的被害で、ガザ地区の200万人以上のパレスチナ人が、取り返しがつかない状況に追い込まれている。ガザに入った荷積みトラックの1日平均台数は、ICJが暫定措置命令を発出する前の3週間は1日平均146台だったが、発出後は1日およそ105台に減った。

ハマスがイスラエルへの越境攻撃を始めた2023年10月7日までは、およそ500台のトラックが毎日ガザ地区に入り、食料、水、家畜の飼料、医薬品、燃料などの支援物資や商品を運んでいた。しかし、ICJの暫定措置命令後の3週間は、イスラエルの厳しい管理下にある燃料の搬入はごくわずかになった。

南アフリカはICJへの提訴の中で、「イスラエルがパレスチナへの人道的支援を否定するのは、ジェノサイド条約(集団殺害の防止および処罰に関する条約)の禁止行為にあたるおそれがある」と訴えている。

残り少ない飼料で飢えをしのぐ

ガザ地区での人道状況は、悪化の一途を辿っている。人道支援団体による2月19日の報告によると、急性栄養失調が急増し、子どもたちの命が脅かされ、2歳未満の子どもでは、北部で15.6パーセント、南部のラファでは5パーセントの幼児が、急性の栄養失調になっているという。

2月17日に4人目の子どもが誕生したという北ガザに住む男性は、家族6人が必要な食料の半分の確保にも苦労するという。小麦粉やとうもろこしが底をつき、大麦や家畜の飼料を挽いてパンを作るようになった。しかし、「今は、その飼料にも事欠く」と話す。

イスラエルの地上作戦が本格化すれば、一般市民120万が避難する南部ラファの人道状況は、一層悪化するおそれがある。ガザ地区南部のイスラエルとエジプトの境界にある検問所近くで地上戦が始まれば、わずかな支援物資の搬入が完全に途絶える可能性もある。

「みな打ちひしがれている」

2月後半、アムネスティは人道機関や団体の職員10人から話を聞いたが、だれもが「ICJの裁定以降、ガザへの市民の移動や支援物資の搬入が難しくなった」と話す。

支援物資の量を増やし搬入を急ぐには、搬入する検問所の開放やその数の拡大が必要だが、いずれも実現しないままだ。国連安全保障理事会は2023年12月の決議で、民間人に直接、支援物資を届けるために、ガザ地区への物資の搬入に利用できるあらゆる検問所の解放の呼びかけなどを関係機関や国に求めたが、イスラエルはこの要請を拒否してきた。

メンタルヘルス支援に携わる女性はアムネスティに、家庭や職場で直面する問題を語った。避難して以来、食料不足の理由を認知症の母親に理解させるのに苦労しているという。「母は、自分がないがしろにされていると思っている。そんな母の顔を見るくらいなら、母がいなくなってくれたほうがいいとさえ思う。家族を食べさせてやれなくて、周りの人たちもみんな打ちひしがれている」と嘆いた。

パレスチナを非難するイスラエル人の中には、人質全員が解放されるまでガザへの支援停止をイスラエル政府に要求し、ガザ地区北部のカレム・アブ・サレムの検問所の利用を何度も妨害してきた。妨害があるからといって、支援物資の迅速な搬入に必要な措置を講じるイスラエルの義務が免除されるものではない。

他の検問所の中にはすでに閉鎖されたものもある。イスラエルは違法な封鎖の一環として、ガザへの人の移動や物資の搬入を厳しく制限してきたが、ここ数カ月でその対応は一層厳しくなった。

ガザ地区の中でも他の地域から事実上遮断されている北部の状況は、とりわけ厳しい。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、1月1日から2月12日までの間に多数の人道支援者や団体がガザ北部への移動を求めたが、イスラエルはその半数以上を認めなかったという。また、国連が検問所を早朝に開門するよう22回求めたが、イスラエルは拒否するばかりだった。

支援関係者は2月21日、「北部への物資の移動は基本的にはない。11月の戦闘停止時は、多くのトラックが北に物資を運んだが、その後は物資の移動は減り、今年に入ってからはさらに少なくなっている。すでに飢えている人もいる」とアムネスティに語った。

人びとが飢える中、最低限の物資の搬入も阻止される

イスラエルは、ガザ地区への物資の搬入を厳しく制限してきた。搬入はすべて、イスラエル当局の事前承認を得なければならないが、2月に入っても、人道支援団体は、明らかに恣意的な拒否や制限を受け続けている。

一方でイスラエル当局は、支援物資が届かないのは支援団体のせいだとの非難を繰り返してきた。支援物資の運搬能力やガザ地区内での略奪に問題があると主張する。しかし、複数の人道支援者によると、イスラエル当局は、物資の定期的な搬入や検問所の早朝開放、支援物資の輸送車隊や支援要員らに対する安全の保障などを認めてこなかったという。

さらに、ガザの人びとは水の浄化、調理、医療機器の利用などで燃料を必要とするが、2023年10月11日以降、イスラエルによる電力供給の停止で停電が続いている。また、2023年10月初旬から11月18日まで、燃料の搬入がまったくできなかった。その後、一部の搬入は認められたが、その量は極めて少なかった。

イスラエル当局は2024年2月下旬時点で、ソーラーパネル、発電機、バッテリーなどの電源やエネルギー源を持ち込みたいという人道的要請を拒否している。

ガザの民間人が強いられている非人道的な状況は、あってはならないものだ。だが、イスラエル当局は、過酷な封鎖を解除するどころか、ラファへの軍事作戦での戦闘の強化を目論んでいる。

即時かつ継続的な停戦がなければ、人びとの命を守り、人びとが生きる上で欠かせない医療品、食料、水などの必需品の搬入などを求めるICJの暫定措置は実現しない。

ところが米国は、即時停戦を求める国連安全保障理事会の決議に拒否権を3度発動し、パレスチナ人の殺戮と苦痛の拡大を事実上、容認してきた。米国、英国、ドイツなどイスラエルに影響力を持つ国は、パレスチナの民間人が、現在直面している悲惨な状況を直視する必要がある。

ガザ地区の人道的大惨事に目を向ければ、「即時かつ効果的な措置」を講じることを命じたICJの暫定措置を受け入れず、イスラエルの行動を支持する米国をはじめとする同盟国の対応は、ジェノサイドを防止する義務に違反している可能性がある。

また、国連パレスチナ難民救済事業団(UNRWA)の一部の職員がハマスによるイスラエルへの攻撃に手を貸したという疑いで、多くの国がUNRWAへの拠出金を停止した。UNRWAは、パレスチナ難民にとって欠かせない人道支援、住まい、教育などを提供する唯一の生命線としての役割を果たしてきた。アムネスティは、活動継続に向けUNRWAに十分な資金を拠出するよう各国に呼びかけている。

すべての国は、イスラエルがICJの暫定措置に従うよう働きかけ、ジェノサイドを防ぐという義務を果たさなければならない。その一つには、イスラエルにガザ地区の検問所の開放と過酷な封鎖の全面解除を実現させる圧力をかけることがある。また、国連専門家も要請しているように、各国はイスラエルへの武器移転を即時に停止する必要がある。

背景情報

今日のガザ地区の人道危機は、16年にわたるイスラエルによる封鎖とその強化、繰り返される軍事作戦により生まれた。

2007年以来、イスラエルはガザの領空や国境、領海を支配し、物資や人の移動を厳しく制限してきた。ガザ市民はますます厳しい状況に置かれ、2023年10月以来、ガザの人道危機は悪化の一途を辿り、全市民が人為的な飢餓に直面している。

イスラエルによる封鎖は集団的な懲罰であり、戦争犯罪だ。この懲罰は、イスラエルがパレスチナ人に対するアパルトヘイト体制を維持する上で重要な手段であり、人道に対する罪だ。

2023年10月7日、ハマスその他の武装組織がイスラエルを急襲し、戦闘員を送り込み、戦争犯罪を犯した。イスラエル当局によれば、少なくとも1,139人が死亡し、ほとんどが民間人の200人以上が人質に取られた。12月1日時点で、113人の人質が解放された。

アムネスティ国際ニュース
2024年2月26日

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