- 2005年6月23日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:日本
- トピック:難民と移民
日時:6月22日(水)午後3時45分より5時まで
場所:衆議院第一議員会館第2会議室
参加者:約70名
昨年5月に入管・難民法が改定され、今年5月16日から新しい難民認定制度が施行されました。日本政府が1981年に難民条約に加入して以来、初めての大幅な難民認定制度の改定でした。
特に、「不法滞在者である難民認定申請中の者の法的地位の安定化を図るため」(法務省入国管理局の案内より)に創設された「仮滞在許可制度」と、「難民認定手続きの公平性・中立性をより高める観点から、第三者を異議申し立ての審査手続きに関与させる」(同上)、「難民審査参与員制度」が設けられたことが、大きな特徴と言えます。
院内集会に先立ち、法務省担当者、UNHCR、NGO関係者および国会議員を交えた意見交換会が開催され、活発な議論が交わされました。
院内集会では、意見交換会の報告に続き、ビルマ、クルド、イラン、スリランカの難民申請者らがアピールし、法改正によっても改善されない難民申請者の現状について訴えました。また、アフガニスタンや中国からの難民申請者の現状についても報告がありました。集会の最後に集会決議文を採択し終了しました。
私たちは、1)難民への庇護提供が長年にわたり世界で蓄積された難民保護の経験とそれにもとづく国際基準が適用されるべき領域であること、2)昨年と今年の法改正において立法府が重要な附帯決議を可決していることに注目し、国際基準の適用と、国会附帯決議の行政府による遵守を求める観点から、UNHCRに協力を求めつつ、立法府ならびに行政府に以下のことを要望し、決議とします。
1. 仮滞在制度の創設にもかかわらず、その恩恵をこうむる難民申請者がごくわずかであることがすでに明らかになっています。むしろ私たちは、ビルマ人難民申請者、法輪功難民申請者、クルド人難民その他多くの難民申請者が、収容されたまま難民調査、司法での審査に臨んでいる現実に重大な懸念を抱いています。また、司法で難民該当性が首肯された難民申請者の配偶者が、明白な婚姻実態にもかかわらず収容されています。
UNHCRが繰り返し勧告している難民申請者の非収容の原則、そして「仮放免制度の柔軟な運用をするように努める」とした附帯決議を行政府がどのように履行しているか、検証をする機会を設けてください。
2. あわせて、附帯決議は「難民への生活支援に関しては、十分な予算の確保及びNGO等民間の諸団体との連携の推進に努める」ことを法務省に要請しています。法務省は、この付帯決議に答えるためにこの1年間、どのような努力をしたのでしょうか。仮放免後の難民申請者と支援者が直面する深刻な困難を克服するため、法務省、立法府はNGOとの継続的協議の場を設定してください。1人あたり1日4千円かかっているという強制収容のための費用を難民申請者への生活支援にあてることを検討してください。
3. 難民調査の公正性、独立性、専門性の確保が法改正の趣旨であることにかんがみれば、個々の申請者の評価以前に手続き自体について合意が成立しないことは制度への信頼を損ないます。異議申立手続きをふくめ法務省はあるべき手続きの具体的内容について再考し、またより一層UNCHRに助言を求めるべきです。また、従来法務省が規範的価値を否定してきた難民認定基準ハンドブックその他の指針の重要性が合意されるべきです。立法府は、法の趣旨が具体的な手続きを通じて体現されるよう、具体的な機会を設けて、手続きの再考プロセスを監視し、必要に応じて介入し、市民に報告してください。
4. 昨年の入管難民法の改正では「難民として認定されなかった人々への人道的見地からの在留資格の付与の審査」が、今年の改正では「在留特別許可、上陸特別許可、仮放免、在留資格更新などの出入国管理制度の運用については、今後も引き続き、その基準の作成や公表の可否について検討し、透明性の高い運用に努めること」が立法府において附帯決議されました。
UNCHRはすでに「補完的形態の保護」という概念によって、条約難民を狭く解釈している国にいるがゆえに認定から漏れている人々、変貌する国際情勢のなかで保護すべき人々への庇護を要請しています。
われわれは、人道的な見地から、庇護を必要とするすべての人々が救済されることを望んでいます。そのためにも、UNHCRに助言を求め、国際的保護ニーズの水準を反映した一定の規範化をすることが不可欠です。また、旧法の下で不認定とされた人々についても、同様の保護が速やかに提供されるべきだと考えます。国会の場においても、国際基準に準拠し、個々の事例の検証を通じて、基準づくりに継続的に関与されるよう求めます。
5. 法務省による難民申請者出身国での実名調査は、難民申請者の間に制度に対する深刻な不審を生じさせ、NGOと法務省との信頼関係の醸成に大きな障害となっています。何よりも、実名調査により、出身国の治安当局、取締機関に難民申請の事実などを把握された人々とその家族は、なおいっそう迫害を受けるおそれが高まっています。また、法務省は入管収容所に収容されている難民申請者の個人情報を、当該申請者の出身国大使館に提供し、難民申請の事実を漏洩させました。こうしたことが国際規範からの逸脱であることは、UNHCRの助言的見解などからすでに明らかです。
法務省は、ただちに被害者を救済するため、情報を漏洩された人々に在留資格を与えてください。また、立法府はあらためて国会の場で現地調査と情報漏洩の問題を取り上げ、救済に尽力してくださるよう要請します。
以上決議します。
2005年6月22日
院内集会「新しい難民認定制度と難民について考える」参加者一同
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