- 2006年10月 6日
- 国・地域:カナダ
- トピック:「テロとの闘い」における人権侵害
マハル・アラル氏は2002年10月9日から2003年10月5日の間、シリアで拘禁されていた。彼は無実で釈放されるまでの間、主にダマスカスにある軍の諜報局のパレスチナ支部の小さな灯りのない独房に、非人道的な状態で拘禁されていた。
シリアで拘禁されている間、アラル氏は、黒くて太い何本にも切り裂かれた鞭のような電気コードで打ちのめされた。そして、金属製の"ジャーマン・チェア"を使用し"タイヤ(tyre)と呼ばれる拷問および電気ショックによる拷問を受けるとの脅迫を受けた。アラル氏は他の囚人たちが拷問を受けて叫んでいる声を聞いた。カナダと米国の諜報機関から提供された情報に基いて活動していたと思われる尋問担当者は、アラル氏がアルカイダに関与していると主張した。今回の公開調査の結果はこのような情報のほとんどは不正確で、不適切にカナダや米国の警察によって共有されていたことを示している。広範囲に渡る調査によって、"アラル氏が犯罪を犯したこと、および同氏の行動がカナダの安全にとって脅威となることを示す証拠は何もないことが明らかになった"と、今回の調査は結論付けている。
34歳のシリア系カナダ人の通信コンサルタントであったマハル・アラル氏は2002年9月26日にチュニジアからカナダへの帰路の途中、米国で飛行機を乗り換える際に拘禁された。彼は米国に12日間拘禁された後、2002年10月8日の夜中に独房から連れ去られ、米国内の他の空港から民間機でイタリア・ローマへ、そしてヨルダンへ送還され、そこで暴行を受けた後、シリアへ運ばれた。
ヨルダン当局に対し、米国の拘置所からヨルダンの拘置所に移送された者、ヨルダンの拘置所から米国の拘置所へ移送された者、そして米国およびその他の国の諜報機関、治安当局の支援を得てヨルダンの拘置所を経由した者の氏名をすべて公表するよう、アムネスティは繰り返し呼びかけている。これらの人びとがヨルダンで拘禁された日付と場所に関する情報、および拘禁の法的根拠が示されなければならない。
背景情報:
カナダの調査委員会の調査結果はマハル・アラル氏の潔白を証明し、同氏に対する補償を要求している。そしてまたシリアでここ数年にわたり拘禁され尋問を受け拷問を受けた他3人のアラブ系カナダ人の事件―これらの事件についても、カナダもしくは他の国の諜報機関の関与または共謀の可能性が存在する―に対する独立した、確実な調査なされる必要があるとしている。:アーメド・アブ・エル・マーティ氏は2001年11月12日にシリアに到着してから11週間拘禁された。(その後エジプトに移され過酷な拷問を受け、告発や裁判を受けることなく、2004年1月11日まで拘禁された。)アブドル・アルマリキ氏は2002年5月3日から2004年の3月10日まで22カ月に渡り、ダマスカスのパレスチナ支部に拘禁された。そして、ムアイエッド・ヌレッディン氏は2003年12月11日から2004年1月13日までシリアで拘禁された。この調査の調査委員で、国連の強制失踪に関するワーキンググループの座長を務めたスティーブン・トーペ教授は、調査において、被害者全員と面接をした結果、全員がシリアで拷問を受けたという信頼性のある証言をしたと結論を出した。
アムネスティは引き続き米国当局に対して、同国の「テロとの戦い」に伴う拘禁政策と実践のすべての面に関する独立の調査委員会を設置するよう要求する。これには、「テロとの戦い」とは何を意味するかという解釈も含まれる。マハル・アラル氏の件に関するカナダの調査委員会の調査結果、ならびに、ブッシュ大統領が、最近、米国中央情報局(CIA)が国外で内密な「拘禁と尋問」のプログラムを実行していることを認めたことは、米国内での調査の必要性を指し示すものである。
また、これまで誰がCIAの計画で捉えられたのかを特定し、被拘禁者の安否と所在を明らかにするよう、米国政府に対して求めている。
アムネスティはマハル・アラル氏、アブドル・アルマリキ氏、アーメド・アブ・エル・マーティ氏、そして、ムアイエッド・ヌレッディン氏が、シリアに拘禁されていた間、およびカナダに戻った後のことについて、積極的に調査をしている。当団体は調査委員会に対し、マハル・アラル氏の事件に関する調査を再開するよう強く要求し、実際に調査が開始された後は、調停者として積極的に調査に参加している。アムネスティは調査委員に対して、その調査書に、他の被拘禁者への言及を加え、そして、今後のこれらのケースに対して独立した調査を実施するよう要求している。アムネスティはカナダ政府に対し、本件および報告書内の他のすべての勧告を今まさに実行するように求める。
アムネスティ国際ニュース
(2006年9月21日)
AI Index: POL 30/041/2006
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