- 2022年10月17日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:カナダ
- トピック:先住民族/少数民族
先住民族ウェトスウェッテンの人びとが代々暮らす土地で液化天然ガスのパイプライン建設が始まり、彼らの人権が危機にさらされている。
パイプラインの建設許可にあたっては、ウェトスウェッテン世襲首長への事前説明も同意の取得もなかった。このカナダ政府の対応は、先住民族の自決権の侵害であり、先住民との和解への道に逆行する。また、化石燃料の採掘とインフラの拡大は、気候変動で起こり得る最悪の事態から人びとを守るという同国の義務に違反する。
アムネスティ・カナダは、カナダ連邦政府とブリティッシュ・コロンビア州政府に対し、先祖伝来で手付かずの自然が残るウェトスウェッテンの人びとの土地でのパイプライン建設の中止を求めている。
ウェトスウェッテン法と1997年のカナダ最高裁判決は、世襲首長が民族の伝統的権威者であるとしている。先住民族の中から選ばれた代表者の何人かは、施工会社との契約に署名しているが、世襲首長がパイプライン計画に同意したことは、これまで一度もない。
ウェジンクワ川は、彼らの土地で飲料水の水源となる数少ない川のひとつで、鮭の産卵地でもある。世襲首長は、この川がパイプラインで汚染されることに懸念を表している。
2021年9月、開発に抗議したり土地の保護を求めたりする人びとが、掘削拠点を占拠した。ブリティッシュ・コロンビア州の公共安全省は、企業側が求めた排除命令を執行するために機動隊を出動させ、声を上げる人びとを逮捕するなどして強制的に排除した。
先祖伝来の自分たちの土地を守るために活動するウェトスウェッテンの人びとは、これまでに3度、重武装の警官による強制捜査を受けた。また、作業地を占拠する人びとの排除を警察に認める裁判所命令が出ており、命令に従わなかったとして19人が法廷侮辱罪で起訴されている。
ウェトスウェッテンの人びとは、「先祖伝来の自分たちの土地を守ろうとしただけで、警察や警備員から嫌がらせや脅しを受け、強制的に排除され、犯罪者扱いされた」と話す。
国連人種差別撤廃委員会は5月、カナダ政府への3回目の通達の中で、王立カナダ騎馬警察や住民産業間の事案に対応する警察関連のグループ、警備会社による住民への実力行使や監視、逮捕が増えていることに懸念を示した。
カナダ政府は、ただちにウェトスウェッテンの土地から警官や警備員らを引き揚げ、開発に反対する人びとに対する嫌がらせや脅し、強制排除などの人権侵害を捜査すべきだ。
世襲首長の一人はこう話す。
「企業は州から得た違法な許可に基づき違法な採掘を始めているが、世襲首長たちはこのプロジェクトを支持したことも同意したこともない。私たちは断固、このパイプライン建設に反対する。ここは私たちの伝統的な土地だからだ。カナダ先住民族会議の代表であろうと、企業であろうと、私たちの民族の決断を覆したり無視したりはできない。私たちは決して譲らず、屈服せず、契約にサインもしない」
アムネスティ国際ニュース
2022年10月3日
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