日本:国際刑事裁判所加入へ

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2007年4月27日
国・地域:日本
トピック:国際人権法
本日、国際刑事裁判所設置規程(ローマ規程)および、国際刑事裁判所(ICC)に対する協力等に関する法律案が、参議院本会議で可決・承認され、日本のICC加入が決定された。

日本政府は、ICC予算への分担金支払いをすでに決定しており、今回の決定により、ICCの財政基盤が今後大幅に強化されることになる。

アムネスティ・インターナショナルは、ジェノサイドや人道に対する罪、戦争犯罪などの重大な人権侵害の免責と闘う国際的な枠組みを強化する大きな一歩として、今回の決定を歓迎する。

今回の決定により、日本は、人道上最悪の犯罪への免責を絶つ新しい国際司法制度に参加することになる。それにより、日本に暮らす人びともそうした犯罪から守られることになる。

アムネスティは、米国が各国と締結しようとしている、重大な人権侵害を犯した米国民をICCに引き渡さないとする内容の二国間協定について、日本政府が締結しない意向を示していることを評価する。重大な人権侵害についての責任を問われる個人に対する免責を目的とする協定を、締結するようなことはあってはならない。

アムネスティは、日本政府が、ICCのさらなる拡大に向けて、特にアジア地域のICC加入促進のために積極的に動き出すことを期待する。

一方で、アムネスティは、日本政府が重大な人権侵害の加害者に対する免責と闘う国際的な取り組みへの参加と協力に向けて、克服すべき障害が残されていると考えている。

第一に、今回の加入に伴う国内法整備は、ICCへの協力と引渡しに関する最低限の法整備にとどまっている。日本政府は、重大な人権侵害の免責を許さないために、ICCの対象犯罪を日本の国内法において犯罪化すべきである。また、ICCの対象犯罪に限らず、国際人権法上の重大な人権侵害に関する普遍的管轄権を、日本の刑法に盛り込むべきである。

第二に、ローマ規程では、被疑者・被告人の取り調べ過程への弁護人の立ち会いや録画・録音、被害者・証人の保護や社会復帰など、国際人権基準に沿った、被害者・被疑者・被告人・証人の保護規定を定めている。日本の国内法においては、こうした保護規定は十分でない。アムネスティは、ICCへの適切な協力を確保し、国際的な人権基準に基づく被害者・被疑者・被告人・証人の保護を行うために、刑事手続きの改正、被害者・証人保護の法制度の整備を行うよう要請する。

同時に、ICCへの適切な協力のために、同裁判所職員等に関する「国際刑事裁判所の特権免除に関する協定」(APIC)への早期加入も検討されるべきである。APICは、国際刑事裁判所の職員に重要な特権や免除を与え、ICCに関連する弁護人、専門家および証人への適切な地位と権限を与えるものであり、ICCの機能を補完する重要な協定である。

また、日本政府は、重大な人権侵害の被害者への支援を積極的に行うべきである。ICCには、被害者救済信託基金が併設されており、人権侵害の被害者への賠償などを行うことが予定されている。日本政府も同基金への出資を通じて、国際的な被害者支援の強化と促進に貢献するべきである。

アムネスティは、日本政府が今後こうした問題を解決し、ICCの活動を全面的に支援することによって、日本国憲法の前文にうたわれているように、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占める」ことを期待するものである。

背景
ローマ規程は、1998年7月17日、ジェノサイド、人道に対する犯罪、戦争犯罪の疑いのある人物を取り調べ、訴追するため、新たな常設の国際刑事裁判所を設立しようとして採択された。その後4年も経たないうちに、圧倒的な国際的支持を受け、裁判所が設立された。以来、裁判所は、コンゴ民主共和国、ウガンダ北部とスーダンのダルフールでおこなわれた犯罪の調査と訴追に焦点を当ててきた。コンゴ民主共和国における紛争で15歳以下の子どもを徴兵、徴募、または使用した罪で起訴されているトマス・ルバンガ・ディーロの最初の裁判が2007年中に始まる予定である。

現在、ローマ規程を批准・加入している国は104カ国。APICを批准した国は48カ国にのぼる。

アムネスティはこれまで、ICCが重大な人権侵害に対して、公平で中立な司法手続きによって平和的に解決する道を示し、加害者の免責の歴史に終止符を打ち、被害者の権利の回復を実現する、新しい国際司法システムであるとして、日本政府の早期の加入を求めてきた。今後、日本政府からICCに批准書が寄託され、2007年度中に、正式に加入する見通しである。

なお、本日、日本政府は3名の死刑確定者への死刑を執行した。ICCは重大な人権侵害の責任者を裁く機関として、死刑を採用していない(最高刑は終身拘禁刑)。このICCの規定は、国際的な人権基準を遵守したものである。

2007年4月27日