日本:鳩山邦夫法相発言を弾劾する

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2007年10月10日
[日本支部声明]
国・地域:日本
トピック:死刑廃止
 鳩山邦夫法相は、9月25日、安倍内閣総辞職後の記者会見で、死刑執行につ いて「法相が絡まなくても進むような方法を考えてはどうか」、「判決確定後6カ月以内に法相が執行を命令しなくてはならないという法律は守られるべきだ。しかし誰も死刑執行の署名をしたいとは思わず、法相に責任をおっかぶせる形ではない方法がないかと思う」と発言したと報じられている。

 この発言は彼の法相としての資質の欠如を示した暴言である。
 日本の刑罰制度の中で、唯一死刑だけは法務大臣が命令すると定められている。死刑は人の命を奪うという、いったん執行されれば取り返しのつかない刑罰である故に、法の機械的、画一的な適用を越えた、さらなる政治判断を法相に求めているのである。 
 判決のままに自動的に死刑執行せねばならないとする発言は、法相としての責任放棄の宣言に他ならない。恩赦をする実質的な権限も、死刑執行停止を発議する権限も法相は有している。そうした選択肢を眼中に置かず、「6カ月以 内に法相が執行を命令しなくてはならない」と鳩山法相はいう。しかし、確定 から6カ月以内の執行という規定は単なる訓示規定であり法的効力を持つものではない。それは法務省自身が一貫して説明してきたことであり、判例にもなっていることである。 
 鳩山法相はさらに「ベルトコンベアーといってはいけないけれど、(死刑確 定の)順番通りなのか乱数表か分からないけど、自動的に客観的に(執行が)進む方法を考えてはどうか」とも発言している。人の命を機械的に奪っていこうという非人権的な思想の持ち主が、法を司る法務省のトップに任命されることに私たちは慄然とせざるを得ない。

 1980年に26人、90年代は50人台で推移してきた死刑確定者は、2004年以降急 増し、現在104人に達している。裁判員制度と被害者参加制度の導入により、今後さらに死刑判決の急増が予想されている。死刑はあたかも格差社会のなか での鬱屈した怒りのはけ口のように取り扱われているからである。鳩山法相のベルトコンベアー発言はこうした風潮に乗り、さらにそれを煽るものである。

 本日10月10日は世界死刑廃止連盟が定めた世界死刑廃止デーである。隣りの国、韓国では死刑の執行停止が10年続き、事実上の死刑廃止国となったことを祝うセレモニーが行われている。この11月には国連で全世界へ向けた死刑執行 停止を求める宣言が出されようとしている。このように世界は死刑廃止に向かって歩んでおり、2006年において死刑を実際に執行したのは25ヵ国にすぎなかった。残念なことに日本は毎年執行を行っている数少ない国の一つとしての記 録を更新している。 
 私たちは、人権感覚の欠如を示した鳩山邦夫法相発言を弾劾し、日本が死刑 の執行を停止し、死刑制度を見直していくことを求めるものである。

2007年10月10日

呼びかけ団体:
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
アムネスティ・インターナショナル日本
「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク