- 2008年6月24日
- [日本支部声明]
- 国・地域:日本
- トピック:死刑廃止
死刑を巡っては、2007年に国連総会で歴史的な死刑執行停止決議が採択されたが、日本政府はこれに反対したばかりか、その後、中国や朝鮮民主主義人民共和国などの他の死刑存置国とともに口上書を提出し、死刑制度の問題は国内問題であり、犯罪抑止力などの観点から廃止できないと主張した。
2008年5月、国連人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)において日本の人権状況が審査され、とりわけ日本が死刑を執行し続けていることに対して、国際的な批判が集まった。各国政府は、人権理事国でもある日本に対し、人権を守る観点から死刑廃止に向けた執行停止を呼びかけた。しかし日本政府は、こうした批判に対し、6月、将来的に批准等を検討する条約のうちから明示的に自由権規約第2選択議定書のみを除外し、死刑廃止や執行停止を検討する余地は全くないとする態度を鮮明にした。
死刑に関するこれまでの科学的な研究の結果、死刑に固有の犯罪抑止効果は証明されていない。口上書を提出した各国政府も、抑止力があるという根拠は示していない。日本における最近の死刑判決の傾向をみても、凶悪犯罪が大きく減少してから死刑の適用数が増えており、一般に信じられているような、凶悪な犯罪を減少させるために死刑が適用されているという事実は存在しない。
現在日本では、来たる2009年5月21日から施行される裁判員制度に関する議論が盛んである。裁判員制度は、死刑相当犯罪を含む重罪に関して導入される予定だが、事実認定だけでなく、量刑に関しても裁判員の関与が求められており、裁判員の判断は多数決によるものとされている。裁判員の多数決により死刑が適用されるという制度に対しては、恣意的であるとのそしりをまぬかれない。
さらに、裁判員制度の導入を前に、市民が人の命を奪う決定を下す困難を配慮して、仮釈放の可能性のない終身刑の創設についての議論が起こっている。しかし最近の無期懲役・禁錮受刑者の実態をみると、ほとんど仮釈放が認められておらず、2007年末時点で約1670人が仮釈放の可能性をほとんど奪われた状態で獄中にある。
刑罰制度は、人権を保障した上で、適正に運用されなければならない。人の生きる権利を国家が奪うという死刑制度は、人の権利を守ろうとする立場からは決して許容できるものではない。人権を保障するためには、死刑を廃止することがまず最優先の課題である。死刑を存置したまま、それに替わるどのような刑罰制度を講じたとしても、人権の観点からは評価に値しない。命を奪うことに対する市民の当然のためらいを配慮するのであれば、死刑廃止こそが唯一の解答である。死刑について、廃止以外の選択肢はあり得ない。
世界人権宣言が1948年に採択されてから、今年は60年目にあたる。この人権の年にあたって、日本政府は、人権を守るというその公約を果たすべく、直ちに死刑の執行を停止し速やかに死刑廃止に向けた検討を開始しなければならない。アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府が、人権を保障するという約束をあらためて国際社会に示し、その第一歩として、死刑の執行を直ちに停止するよう、心から期待するものである。
アムネスティ・インターナショナル日本 声明
2008年6月24日
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