- 2008年10月28日
- [日本支部声明]
- 国・地域:日本
- トピック:死刑廃止
今回の執行は前回から約1カ月半しか間をおいていない。今月の15日と16日には、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の日本政府報告書審査が自由権規約委員会によって行われた。10年ぶりとなる今回の審査では、死刑制度が大きく取り上げ
られ、委員からの厳しい批判が集中した。特に世論を理由として死刑存置を主張した日本政府の態度に対しては、委員からは締約国の責任を果たさない、論外の主張だとの厳しい意見が相次いだ。10月28日(現地時間)にジュネーブで規約人権委員会が採択する最終見解でも厳しい勧告が出ることが予想される。今回の死刑執行は、こうした国際的な批判に対して敵対的な態度をあえてとったものである。人権諸条約の締約国としての日本政府の資格が問われる。
法律上、事実上の廃止を合わせると世界の70%以上の国が死刑を廃止している。存置国の中でも2007年に死刑執行を実際に行った国はわずか24カ国である。東アジアを見ても、韓国では10年間、台湾では2年半の間死刑執行は行われておらず、中国でも近年執行数は激減している。G8諸国で日本のほかに唯一死刑を執行している米国でも死刑執行は抑制傾向にある。アムネスティ・インターナショナルは極めて深い失望と重大な懸念を表明する。
今回執行された高塩正裕さんは、犯行後4年半あまり、死刑確定後1年10カ月強で死刑を執行された。一審は無期懲役判決が出ており、量刑不当を理由に検察が控訴し、高裁で逆転死刑判決となった。弁護士が上告したが、本人が取り下げたため死刑が確定した。検察官上訴の問題点と、必要的上訴制度がない日本の制度的欠陥が如実に表れた事例である。
久間三千年さんは、2006年9月に死刑が確定しており、確定から2年あまりで執行された。現在70歳である。久間さんは一審より一貫して無罪を主張した。公判においては自白、物的証拠もなく、動機も明らかにされないまま死刑判決が下された。唯一の根拠となったDNA鑑定も、複数の鑑定結果がそれぞれ異なっていた中で、科学警察研究所のおこなった1つの鑑定結果のみが採用された。
従来と同様に今回の執行も、本人を含め誰にも事前の予告はなく、突然の執行であった。今回も、執行後に昨年12月の執行以来6回目となる死刑囚の氏名及び罪状の公開が行われた。しかしそれ以外の情報は一切公開されていない。死刑確定のプロセスや、確定後の再審請求、恩赦請求の棄却時期などの死刑囚の基本的人権の尊重において極めて重要な情報が開示されていない。
日本政府は、人権諸条約の締約国として、死刑に頼らない刑事司法制度を構築すべき国際的な義務を負っていることを再確認するべきである。日本政府が、一刻も早く人権保障の大原則に立ち戻り、死刑の執行を停止し、近い将来に全面的に廃止することを、アムネスティは心から期待する。
2008年10月28日
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
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