ロシア連邦: チェチェン正常化には説明責任が不可欠

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2009年4月16日
国・地域:ロシア連邦
トピック:地域紛争
「チェチェン共和国は過去15年にわたる2度の戦争で荒廃し、耐え難い深刻な人権侵害が行われてきた。このことに対する説明責任が十分に果たされない限り、チェチェンの正常化は不可能だ」。ロシア当局による「対テロ作戦」の終結宣言をうけて、本日アムネスティ・インターナショナルはこのように述べた。

またアムネスティ・インターナショナルの事務総長アイリーン・カーンは、「チェチェンが正常化したという真の指標とは、十年来求めてきたものが人びとに与えられることだ。人びとは真実を、正義を求めてきた。そして失踪者のリストに加えられた親族や友人の運命、またはその居所の情報と同時に、このような事態を引き起こした者が責任を取ることを求めている」とも述べた。

「現在もつづく人権侵害や過去の出来事に対する徹底的かつ独立した調査だけが、チェチェンに正常化と秩序をもたらすことができる。このような調査は、今後も人権侵害に対する抑止力になるだろう」

「ジャーナリストや独立した監視団に対してこの地域を開放することは、当局が透明性を確保しようとする兆候かもしれない。しかし状況の変化は、現実を変えようとする政治的な意志がなければまったく無意味である」

ロシア連邦軍およびラムザン・カディロフ現大統領政権下の軍隊やチェチェン武装集団が犯した戦争犯罪を含む人権侵害のケースについて、アムネスティは長年にわたって継続的に調査してきた。こうした人権侵害には無差別の殺害、過剰な武力行使、身柄拘束中の死亡や拷問・虐待、違法な殺害の疑い、恣意的な拘禁、秘密裏の拘禁、拉致、強制失踪、人権活動家への脅迫、戦闘員と疑われる者の親族への狙い撃ち、国内避難民となった人びとの強制退去などがある。

アムネスティは公正な調査と責任者を法廷の場に立たせることを繰り返し求めてきた。これまで当局が行っていた調査は効果がなく、法の執行機関が犯した権力の濫用に関して、慣例的に免責することにつながっていた。

アムネスティが知る限り、強制失踪の事例で有罪判決を受けたのはわずかにひとりであり、その被害者の行方は今もわからない。武装戦闘員が犯した犯罪の捜査は、被疑者への拷問・虐待や、公正な裁判に関する国際基準に対する尊重を露骨に欠いていることにより、まったく信頼が損なわれている。

ロシア連邦内では正義を得ることができないため、人びとは救済を求めて欧州人権裁判所に申し立てをするようになっている。提訴した人びとは、脅迫や威嚇に始まり失踪にいたるまでさまざまな報復をうけることが多い。 

今日まで欧州人権裁判所は、チェチェン紛争のなかでおきた人権侵害に関して、約100事例の判決を下している。こうした事例の大半で、欧州人権裁判所はチェチェンの人びとの死亡、拷問、強制失踪、またこうした犯罪の捜査が行なわれないことについて、ロシアに責任があるとしている。

「欧州裁判所の判決、とりわけ立証された人権侵害の調査および将来の人権侵害を阻止する方策に関して、ロシアが十分な執行措置をとることが不可欠である」と、アイリーン・カーンは述べた。

「すべての面において法の支配を尊重し、ありとあらゆる深刻な人権侵害を防止し罰する全面的な政治的意志が明らかに欠如していたために残された腐敗しきった負の遺産に対し、あらゆるレベルで真剣に取り組まない限り、チェチェンはもとよりロシア連邦の他の地域において、人びとの安定と安全を得ることはできない」

「チェチェンとロシア全土の人権侵害の被害者は、「テロ」対策の作戦行動中に行なわれた犯罪について、裁きと当局および司法機関が真実を明らかにすることを長年待ち望んでいる。今こそ、彼らの権利を回復するときなのだ」。

背景:
1991年、チェチェンはロシアからの独立を宣言した。その後2度にわたる大規模な武力紛争があった。1度目は1994年から1996年にかけてであり、事実上チェチェンの独立という形で終わった。2度目は1999年から始まり、2003年に同地域に親モスクワ政権が樹立されることで収束した。

2度目の武装紛争のさい、3000人から5000人が強制失踪させられた。さらに多くの人びとが無差別爆撃や居住地域への大規模な侵攻で殺害され、捕虜になった後または爆弾によって死亡している。これらの犯罪に対する全面的な調査は、国内・国際レベルいずれにおいてもいまだに実施されていない。

アムネスティ発表国際ニュース
2009年4月16日

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