ロシア連邦:戦争に反対する子どもたちを迫害

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2024年6月10日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ロシア連邦
トピック:

ロシア当局は、ウクライナ侵略に反対する子どもとその家族に対する制裁を強めている。アムネスティの調査で、当局は子どもたちに表現の自由を認めず、戦争に反対する子どもやその家族を戦争プロパガンダを通じて洗脳しようとしていることが明らかになった。

当局は、戦争に反対する親に圧力をかけるために子どもを親から引き離し、親権はく奪や脅しや子どもの施設収容などの脅しをかけている。

国は家族の大切さを訴えながら、反対意見を抑え込むために親から子どもを奪うというなりふり構わない行動に出ている。学校と教師は、当局による迫害と干渉の道具に成り下がり、国が押し付ける主張を子どもたちに吹き込み、異論を唱える生徒がいれば、その生徒情報を当局に通報している。戦争反対の声を上げる人びとは、特に家族離散と親権はく奪の脅威にさらされている。

当局は、教育機関の場で、あるいは子どもの収容、捜索や逮捕、訴追などの手段で、市民に圧力をかけている。多くの人は当局の報復措置を恐れて戦争に関わる発言を控えている。

標的にされた家族の子どもは、ストレスによる病気やトラウマなど心身に不調をきたす。保護者が迫害を受ければ家計は厳しくなり、子どもに教育を受けさせるのが難しくなる。訴追や子どもとの引き離しを恐れて、国外に逃れる家族もいる。

いくつかの事例を紹介する。

2022年10月、モスクワに住むヴァルヴァラ・ガルキナさん(10歳)はウクライナへの支持を示す絵を描いて、警察から尋問された。母親は家宅捜索を受け、強制的に「予防プログラム」を受けさせられた。その後、迫害を恐れたガルキナさん一家は国外に出た。

2023年11月、サンクトペテルブルクのイェゴール・バラゼイキンさん(16歳)は、ウクライナへの侵攻に抗議して2カ所の軍関連施設に燃料入りボトルを投げつけた。軍事裁判所ではこれらの行為をテロ攻撃とみなされ、禁錮6年の判決を言い渡された。

ロシア中部イェフレモフのマリア・モスカルリョワさん(12歳)は、学校で反戦の絵を描いたために、1年後の2023年3月、ひとり親の父から引き離され、孤児院に入れられた。マリアさんの父親は罰金刑を受け、その後ソーシャルメディアでの発言が「軍の信用を失墜させた」として懲役2年を言い渡された。マリアさんは孤児院でストレスと孤独感に悩まされたが、世間の非難の声で親戚と暮らせるようになった。

2022年9月、西シベリアにあるブリヤート共和国の反体制活動家ナターリヤ・フィロノワさんはウクライナ戦争への予備役兵動員に反対して逮捕され、里子の息子(16歳)は孤児院に入れられた。フィロノワさんは、「当局の代表者に対する暴力」という身に覚えのない容疑で起訴され、昨年8月、2年10カ月の実刑判決を宣告された。

ロシアでは、子どもでも当局に刃向かえば警察・裁判所・学校から脅しを受ける。当局は、子どもたちの表現の自由・結社の自由・集会の自由を尊重し、報復を恐れることなくこれらの権利を享受できるようにすべきだ。また、アムネスティはロシア当局に、人権の行使や抗議活動に対する罰として、親権の制限・はく奪、国家による子どもの身柄の確保をやめるよう求める。

さらに、当局は軍事法廷で民間人、特に子どもを審理すること、法的手段を使って抗議活動を阻止することをやめるべきだ。学校での戦争プロパガンダや政治的洗脳もあってはならない。

アムネスティは、平和的に権利を行使して投獄されているフィロノワさんらの即時釈放とバラゼイキンさんら個人へのテロ関連罪の取り下げを求める。

アムネスティ国際ニュース
2024年5月31日

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