日本:抜本的な難民保護のための制度の確立を

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2009年4月28日
[日本支部声明]
国・地域:日本
トピック:日本の難民・移民
アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府が、難民認定申請中で生活に困窮している者に提供している生活費などの保護措置について、難民申請者の合法的な滞在を支給条件とする方針を発表したことに対し、重大な懸念を表明する。

日本政府は、外務省の所管法人であるアジア福祉教育財団難民事業本部を通じて支給している難民申請者に対する保護費について、2009年4月より、重篤な病気の人、妊娠中の人や子ども(12歳未満)、合法的に滞在している人で、就労許可を有しない人を優先するとの通知を行った。

難民保護には、難民条約第33条第1項により、深刻な人権侵害の恐れのある国への送還を禁止する原則(ノン・ルフールマン原則)の適用が、国際的な義務として含まれる。一方で、難民申請者の多くは正当な旅券や査証を取得することが難しく、庇護国に不法に到着または入国することを余儀なくされることが多い。そのため、入国や在留の合法違法に関わらず合法的なもしくは事実上の暫定在留を許可した上で、難民認定手続を迅速に進める必要がある。日本においても難民申請者の法的地位を安定化する必要性から、改正入管法(2005年施行)に仮滞在許可制度が創設された。しかし、その運用は極めて限定的であり、結果として、難民申請者の多くが在留資格を持つことができない状況が続いている。

近年の難民申請数の急増に伴って保護措置の必要性も高まる中、昨年末には保護費予算が底をついたために支給が一時停止される事態が生じた。在留資格を持たない難民申請者は、難民申請の結果を待つあいだ長期間に渡って就労を許可されず、生活保護をはじめとする社会保障の多くから除外されるため、特に苦境に置かれる。今回の保護費支給対象者を限定する決定により、深刻な困窮状態に陥る者が一層増えることは明らかである。

アムネスティ日本は、保護費支給の判断において、難民申請者の合法的滞在資格を要件として支給対象者を限定するのではなく、難民申請者数の増加に見合った保護費予算を確保すべきであると考える。

2008年10月、自由権規約委員会は、第5回日本政府報告書審査の最終見解パラグラフ25において、当局に対し、「すべての難民申請者に対し、弁護士、法律扶助、通訳のほか、手続の全期間にわたる適当な国庫による社会保障あるいは雇用へのアクセスを確保すべきである。」と勧告した。

アムネスティ日本は、日本政府が自由権規約委員会の勧告を完全に実施し、抜本的な難民保護のための制度を確立するよう要請する。

背景情報:
日本での難民申請数は、2003年まで毎年400人以下で推移していたが、2007年には816人、2008年には1599人と急増している。一方、仮滞在許可を受けた者は、2008年に57人に留まり、その許可率は9%を下回る。

難民申請数の増加は審査期間の長期化も招いており、現在では異議申し立て手続までを含めると平均約2年を要しており、2007年度に難民認定を受けた41人のうち、7人は4年以上かかっている。仮滞在許可制度によって難民申請者には上陸後6カヶ月間の在留許可が認められ、原則としてその間に決定を下すこととされたが、審査期間の短縮に向けた改善努力にも関わらず、難民申請数の増加の速度が、審査期間の短縮のそれを上回っているのが現状である。

アムネスティ・インターナショナル日本声明
2009年4月28日