- 2010年2月 1日
- [日本支部声明]
- 国・地域:日本
- トピック:取調べの可視化
報道によると、鳩山首相は2010年1月20日、取調べ可視化法案について、今は提出を考えていないと答え、その理由として「(民主党幹事長の資金管理団体の土地購入をめぐる)事件が起きたからといって、反作用的に行動すると、検察に対する批判と受け止められる可能性がある」と述べた。さらに、中井洽国家公安委員長は、私的研究会である「捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会」を発足させ、約2年をかけて検討する方針であると伝えられている。同研究会の第1回会合は、今月5日に開催される予定である。
そもそも全面可視化に関する法案は、民主党および社民党が野党だった時期に国会に提出し、2009年の通常国会では参議院で可決され、衆議院で審議未了のまま廃案となった経緯がある。
氷見事件、志布志事件、さらに最近再審が開始された足利事件、再審開始決定が確定した布川事件など、いずれの事件においても、強引な取調べによる自白強要が明らかになり、自白の任意性・信用性に疑問が呈された。日本の刑事司法制度の中では、弁護人の取調べへの立ち合いも認められず、代用監獄として警察留置場に身柄を確保した上での長期間にわたる取調べ(最大23日間の勾留ができ、別件によりさらに勾留することもある)が常態化しており、人権侵害の温床となっている。
警察庁を所管する国家公安委員会も、検察庁を所管する法務省も、第一に考えるべきは被疑者・被告人に対する捜査取調べが適正なものであるかどうかである。それを実現するためにも、被疑者・被告人の人権保障措置が必要不可欠である。捜査取調べの全面録音・録画の導入は、その最優先事項の一つである。
こうした点を踏まえ、国連の拷問禁止委員会、自由権規約委員会などは、繰り返し、取調べの全面可視化をはじめとする刑事司法の抜本的改善を日本政府に対して勧告している。
それゆえ、アムネスティは、新たな捜査手法の導入等の議論とは無関係に、まず被疑者の権利保障を図らなければ、日本の刑事司法は近代的、科学的なものとはなり得ないと考える。菅家利和さんをはじめとする冤罪被害者を、これ以上生み出してはならない。
アムネスティは、直ちに取調べの全面録音・録画を可能とする法案を成立させるべきであると考える。また、合わせて、取調べにおける弁護人の立ち合いの実現と、代用監獄制度の廃止を、改めて日本政府に要請するものである。
2010年2月1日
アムネスティ・インターナショナル日本声明
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