インド:ダウ社は「Run For Water」のスポンサーになることでボパールの負の遺産から逃れることはできない

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2010年5月26日
国・地域:インド
トピック:企業の社会的責任
ダウ・ケミカル社は、ライブ・アースの主催するイベント「Run For Water(水資源のためのマラソン)」のスポンサーになることにより、1984年にボパールで発生したガス漏出の現在までも継続している影響に対する責任から逃れることはできない。アムネスティ・インターナショナルはそのように述べた。

インドのボパールで発生した1984年のユニオン・カーバイド社の殺虫剤工場からの有毒化学物質の致死的な漏出の結果として、数千人が死に、10万人以上が今でも深刻な健康被害に苦しみ続けている。ダウ社は2001年にユニオン・カーバイド社(UCC)の100%親会社となった。

それ以来、生存者と人権団体は、ダウ社に対して、化学廃棄物による水の汚染を含む災害の継続的な影響に対処するように求める運動を展開してきているが、同社は、ボパールにおけるUCCの法的責任に対する同社の責任を否定しており、一貫してこれらの要求を無視している。

ダウ社は、4月18日に環境団体のライブ・アースが水不足に関する関心を高めるため世界中で開催する一連のマラソン・イベントのスポンサーを務めている。

「ボパールにおいていろいろな問題がある中で、清潔な水や医療へのアクセスに関する継続的な問題を無視しつつ、水不足に焦点が当たるイベントのスポンサーとなることは、良く解釈しても偽善、悪く解釈すれば、ダウ社がそのイメージを水に流そうとする言語道断の試みである」と、アムネスティ・インターナショナルのグローバル・イシュー担当ディレクター、オードリー・ゴーグランは述べた。

「ダウ社は、ボパールの負の遺産から逃れようとしているのかも知れないが、『Run For Water』イベントのスポンサーになることによって責任逃れをすることは許されない」

25年以上の間、インド政府も関連企業も、ボパールのガス漏出事件に端を発し長く続く負の遺産となっている人権侵害に対処してこなかった。

「ボパール事件は企業の説明責任と能力、そして企業が絡む人権侵害に政府が取り組む意思があるかどうかについて、根本的な疑問を投げかけている」と、オードリー・ゴーグランは述べている。

「長年の間、インド政府、UCC及びダウ社は責任という問題に関して荷物を押し付け合ってきた。その一方で、ボパールの人びとは清潔な水といった基礎的な救済すら得るのに苦労してきた」

アムネスティは、ライブ・アースに対して、ダウ社が、ボパールにおいて近日予定されている政府の浄化プロセスに対して公式に約束をしない限り、スポンサーシップを再考するように求めてきた。ダウ社はまだ態度を表明していない。

アムネスティは、ライブ・アースの懸念している気候変動の影響や水に対する権利を含む人権を守るために緊急の行動を起こす必要性については、意見を共有している。しかし、アムネスティは、ダウ社のスポンサーシップが、ライブ・アースの「Run for water」イベントの信頼性に深刻なリスクを与えることになるのではないかと危惧している。

「企業は、ある地域での人権侵害の責任を、他の地域で前向きな行動を起こしているからと言って逃れることはできないと理解しなければならない。企業は、『カーボンオフセット』のように慈善活動で人権侵害を相殺することはできない」と、オードリー・ゴーグランは述べた。

「ダウ社及びUCCがボパールにおける負の遺産を解決するための唯一の方法は、被災地域及びインド政府とともに、災害の人権への影響に対し、十分かつ効果的な取り組みをすることである」

背景:
1984年12月2日の真夜中の少し前に、インド中央部のボパールにあるユニオン・カーバイド社の殺虫剤工場から致死性の化学物質が数千ポンド漏出した。50万人近い人びとが有毒ガスにさらされた。事故発生直後に7,000から10,000人の間の人が死亡し、続く20年の間にさらに15,000人が亡くなった。25年以上経っても、事故現場は汚染除去がされておらず、漏出自体やその影響についても適切に調査がされていない。100,000人を超える人が、必要な医療処置を受けることができない状態で健康被害に苦しみ続けている。そして、生存者は、公正な補償と被害への十分な救済を待ち続けている。漏出した廃棄物は、数千人の住民が飲料用や家事のため使用している地下水を汚染した。

ダウ社は一貫してボパールにおけるUCCの法的責任を負うことを認めていない。しかし、それとはまったく対照的に、ダウ社はUCCが1972年に引き起こした米国におけるアスベスト関連の法的責任については認めている。

アムネスティは、ボパール問題の公正な解決をめざす国際運動(The International Campaign for Justice in Bhopal)などの組織と協働して、法の正義、説明責任を求め、そして25年に渡る人権侵害を終わらせるために、生存者や活動家をサポートする活動を行っている。

十分な汚染除去、清潔な水へのアクセス、適切な医療、賠償金及び説明責任を求めるキャンペーンとして、子どもたちや障がいを持つ人びとを含む生存者や支援者グループによるボパールからニューデリーへの800kmの行進が、繰り返し行われている。

100人を超えるボパール事件の生存者は、4月16日、インド政府に対しボパールにおける責任問題を解決するよう求める無期限の抗議行動をニューデリーで開始した。

アムネスティのボパール災害に関する活動は、貧困に追いやり、貧困を悪化させるような人権侵害の終結を求めるアムネスティの国際キャンペーン「人間らしく生きたい」(Demand Dignity campaign:尊厳を求めて)の一環である。このキャンペーンは、世界中の人びとを動員して、政府、企業、その他の権力に対して、貧困下で生きる人びとの声に耳を傾け、そのような人びとの権利を認め、保護するように求めるものである。

2010年3月26日に、アムネスティは、ダウ社が「Run for Water」のイベントに関与することについてライブ・アースに対して懸念を書面で伝えた。その書面に対する返答はまだ受け取っていない。

アムネスティ・インターナショナル プレス・リリース
2010年4月16日

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