インド:反政府デモ参加者の拘束や家屋破壊 即時停止を

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2022年6月21日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:インド
トピック:

インド当局は、反政府デモに対する武力弾圧を直ちにやめるべきだ。この数日間の平和的な抗議デモに治安部隊が過剰な力を行使し、デモ参加者2人が死亡、多数が負傷した。また表現と集会の自由の権利を行使した多数の市民が拘束されている。当局は、不当に拘束された市民を即時無条件に釈放すべきだ。

インドでは6月10日以来、ウッタル・プラデーシュ州、ジャールカンド州、西ベンガル州など8州で、与党バラティヤジャナタ党の元報道官2人の拘束を求める市民数千人が街頭に繰り出してきた。元報道官2人が、ゴールデンタイムのテレビ番組で預言者ムハンマドへの侮辱とも取られる発言をしたためだ。

当局は、自分たちに対する差別的発言に声を上げ、平和的に抗議するイスラム教徒を卑劣な手段で弾圧している。過剰な武力の行使、恣意的拘束、懲罰的家屋取り壊しなどの当局の対応は、国際人権法・基準に明らかに違反する。

インド中東部ジャールカンド州であった6月10日のデモでは、警官が居合わせた人たちを警棒で殴り、石を投げつけ、挙句は発砲する様子がメディアで報じられた。15歳の子どもとデモ参加者1人が、警官に頭部を撃たれて亡くなり、市場からの帰りに通りがかっただけの人も、銃弾6発を浴びた。

「法執行官による力および火器の使用に関する国連基本原則」では、警察による武器の使用は、その目的達成に必要とされる以外の目的で行使してはならないと定められている。さらに、警察による銃器の使用は、差し迫った危険から自らや他者の身を守る最後の手段としている。

複数のメディアが報じた映像には、北部ウッタル・プラデーシュ州で拘束されたデモ参加者数人が、警官に殴打されて恐怖と痛みで泣き叫ぶ様子が映っていた。この動画は、同州元首相ら多くの人たちにリツイートされた。警官によるこの行為は批判されるどころか、元警官やバラティヤジャナタ党議員らから賞賛を浴びた。

制圧した相手に棍棒を振るう行為は、行き過ぎた行為であり懲罰にあたる。国際法違反である、拷問など非人道的で品位を傷つける取り扱いに相当する。

平和的デモ参加者らを社会秩序への脅威とみなすのは深刻な問題であり、各州政府がイスラム教徒を標的とする措置を強めていることを示すものだ。

一国の首相や州の首相が、イスラム教徒を社会秩序の脅威とみなし、同教徒への差別や暴力を正当化する発言はこれまでもあった。一方でこれらの発言に対する批判は残念ながら、これまでほとんどなかった。本来なら首相らは、差別や暴力を肯定するいかなる言動も排除する姿勢を公に示すべきである。

罰としての家屋取り壊し

イスラム教徒への抑圧が続く中、ウッタル・プラデーシュ州であった6月10日のデモは暴力沙汰に発展し、暴力を主導したとされるイスラム教徒数人の家屋が当局に取り壊される事態になった。

同州で自宅が解体されるという事例は他にもあった。デモでイスラム教徒多数が拘束されたが、拘束された人の中に活動家のモハメドさんとその妻、娘の3人もいた。モハメドさんと学生活動家の娘は、差別的な市民権改正法をめぐる政府の対応を厳しく批判してきた。

デモ翌日の6月11日夜、モハメドさん宅の取り崩しを翌日執行するという文書が自宅外壁に貼られた。取り壊しの理由は「違法建築」ということだったが、そもそもモハメドさんはその家屋の所有者ではなかった。しかしモハメドさん宅の取り壊しは、予告通りに実施された。これは懲罰的措置に当たる。同州では、デモに参加した多数の市民が家屋を潰されている。

適切な協議も法手続きもない家屋の取り壊しは、インドが加盟する「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(社会権規約)」が定める適切な住宅を得る権利の侵害に当たる。市民の抗議に対する州政府の目に余る対応は、反対意見への抑圧が一層激しくなっていることを示している。

当局は、治安部隊や警察がデモ参加者らに加えたとされる人権侵害について、迅速で公正な捜査を徹底する必要がある。その上で、過剰な力を行使したことを示す明らかな証拠がある隊員らを訴追すべきだ。一方で被害者や犠牲者が、金銭を含む賠償を受けられるようにしなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2022年6月14日

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