- 2010年7月 9日
- [日本支部声明]
- 国・地域:ミャンマー(ビルマ)
- トピック:
特命全権大使 グエン・フー・ビン 閣下
大使閣下、
東南アジア諸国連合(ASEAN、アセアン)の加盟国であるベトナムの全権大使である閣下に、この機会にお手紙を差し上げたく存じます。
ご存知の通り、ビルマ(ミャンマー)では、人権侵害の加害者に免責を与える新たな憲法に基づき、今年後半に20年ぶりとなる選挙が行われる予定です。この政治プロセスの結果は、ビルマの将来にとって、またASEANにとっても重大な意味を持つと思われます。2010年がビルマの人びとにとって意義深いものになるためには、選挙期間を通じて人権が緊急に保護される必要があります。この点で、アセアン憲章と、新たに創設された人権の枠組みを持つASEANは、重要な役割を担っております。
去る4月にハノイで開催された第16回首脳会合において、アセアンは、ビルマの選挙が「自由で公正、かつ包含的な方法で」行われるべきであると強調しました。しかしビルマ政府は、そのお粗末な人権状況を改善する対策をいまだに講じておりません。
2200人を超える政治囚が、いまだ囚われの身となっています。この政治囚の数は、2007年8月から9月に起きた、同国の悲惨な人権状況を訴える、大規模で平和的な反政府抗議行動以来倍増しているものです。
3月に成立した選挙関連法のもと、アウンサンスーチーさんを含む政治囚は一人として選挙に参加することができません。これらの法には他にも数多くの罰則が定められておりますが、それらの中には、選挙で投票する・しないについて他人に「強く勧める」ことを違犯とする、広くあいまいに解釈できる規定が含まれるなど、表現の自由に対する甚だしい違反があります。
さらに、選挙管理委員会が発行した6月21日付の指令は、政党による「治安や法の支配および地域の安寧を損なう」活動を禁止しています。これらの規定は、「治安」への脅威の構成要件について、当局による過度の拡大解釈を許すことになります。数十年にわたり、ビルマ政府は、平和的に政府を批判する人びとを恣意的に有罪とするために曖昧な表現の法を繰り返し利用してきました。
それゆえアムネスティ・インターナショナルは、活動家たち、その中でもとりわけ民族的少数者や選挙ボイコットを呼びかけている国民民主連盟の活動家に対する抑圧が、選挙が近づくにつれて増すのではないかと大変懸念しています。
これらの規制は、ビルマの人々の「3つの自由」を総がかりで否定しています。「3つの自由」とはすなわち、表現、平和的集会、結社の自由の権利です。そのため、各国政府が「静観」の態度をとることはまったく不十分です。
人びとが選挙に参加することを選ぶにせよ、ボイコットするにせよ、「3つの自由」をはじめとする人権はすべての人びとのために守られなければなりません。
ハノイにおけるアセアン外相会議を控え、私は、貴国が他のアセアン加盟諸国と協力し、基本的自由の尊重、人権の促進と保護、社会正義のためにASEAN憲章の原則を遵守することを要請します。この目的を達成するために、ビルマ政府に以下の点について圧力をかけなければなりません。
・平和的な政治活動や民族、宗教のみを理由として逮捕されたすべての政治囚を即時かつ無条件に釈放すること
・選挙期間中およびその後も、ビルマのすべての人びとが表現、平和的集会、結社の「3つの自由」を享受できるよう保証すること
加えて加盟国は、アセアン外相会議において、アセアン政府間人権委員会(AICHR)がこれらの人権の促進と保護に関する情報をビルマから得て、AICHR運営規約第4条10項と12項にしたがって、同国の表現、平和的集会、結社の自由に関する課題に関する調査の準備を促すべきです。同様に、女性と子どもの権利の促進と保護のためのアセアン委員会(ACWC)に、同委員会の規約第5条6項に基づいて、ビルマの女性と子ども、そして少数民族を含む、もっとも社会的に弱い立場にあり周縁化された人びとのための権利擁護をすすめるよう奨励しなければなりません。
これらの緊急の課題に対処しなければ、アセアンは国際的な信頼を損なうことになるでしょう。それゆえ、アセアンがこの機会をしっかりと捉え、長年の懸念となっているビルマの人権状況の改善を実現することは極めて重要であり、またそれはアセアンの地位に利することです。
この重要な年に、ビルマとアセアンのために、貴国がビルマにおける「3つの自由」および人権全般のために最善を尽くすことを切に願っております。
2010年7月7日
アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 寺中 誠
※同様の書簡を、その他のアセアン加盟諸国(ブルネイ、タイ、フィリピン、シンガポール、インドネシア、ラオス、マレーシア、カンボジア)の駐日大使に送付しました。
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