- 2024年8月29日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ミャンマー(ビルマ)
- トピック:
ミャンマーのラカイン州で国軍によるロヒンギャへの攻撃が激化しているが、この状況は2017年8月のロヒンギャへの残虐行為と酷似している。
ラカイン州の惨状は、7年前のロヒンギャ危機を彷彿させる。ロヒンギャの人びとが殺され、町は空っぽになり、彼らの歴史とアイデンティティの痕跡が消されつつある。その多くは、隣国のバングラデシュの難民キャンプに避難しているが、難民キャンプの経済、治安、生活状況は悪化するばかりだ。
数十年にわたって国家による迫害を受け、2017年8月には残忍な暴力にさらされたロヒンギャの人びとは現在、ラカイン州でのアラカン軍と国軍との対立激化の渦中に巻いる。国軍に強制的に徴兵され、戦闘に駆り出されている。
国軍は戦況が不利になると、ロヒンギャやラカインの市民に激しい空爆を加え、市街の家屋や市場、インフラ施設などを破壊してきた。
国軍は、市民を殺害する戦闘を直ちに停止すべきだ。市民は、ラカイン州だけでなく全土で戦闘の矢面に立たされており、数百万人が避難生活を余儀なくされている。
一方、アラカン軍はラカイン州内に進軍し、占領地を拡大するにつれ、数々の残虐行為を繰り返している。国際社会はアラカン軍に対し、国際人道法を遵守するよう圧力をかけなければならない。国軍や武装グループによる戦争犯罪の疑いがあれば、実効性ある捜査が欠かせない。
今年5月17日、アラカン軍がラカイン北部の町ブティダウンに進攻した際、多数の家屋が放火され、ロヒンギャ住民数千人が避難したという。また、8月5日にはバングラデシュとの国境に近いマウンドーの町で、生存者の証言によるとアラカン軍の攻撃でロヒンギャ市民が犠牲になったという。アラカン軍はこの攻撃を否定している。
ミャンマー国内の武力衝突が激化していることから、国連安全保障理事会が同国の状況を国際刑事裁判所に付託する段階にあることは明らかだ。責任の追及なしには前進はない。ミャンマーの未来は、同国のすべての人びとの人権の保護、促進、維持にかかっている。これには、ラカイン州のロヒンギャの人びとに対する差別的な法律や政策の撤廃や保健、教育、移動の自由の権利の回復が含まれる。
一方、バングラデシュはこの7年間で100万人近くのロヒンギャ難民を受け入れてきたが、難民キャンプは劣悪な環境で知られている。昨年は、火災とサイクロンで難民キャンプで暮らしていた1万2000人以上が住むところを失った。深刻な資金不足で食糧は不足し、医療や教育も満足に受けられなかった。
バングラデシュの暫定政府は、ロヒンギャ難民の人権と安全の確保を優先し、ノン・ルフールマンの原則を守り、ロヒンギャの権利を尊重する政策を実施すべきだ。
背景情報
2017年8月25日、治安部隊はロヒンギャの村々への組織的で広範な攻撃を開始した。アラカン・ロヒンギャ救世軍を名乗る武装集団が警察の施設を襲撃した後のことで、軍は超法規的殺害、財産破壊、性的暴行などを行った。この軍の「掃討作戦」の結果。74万人を超えるロヒンギャの人びとがバングラデシュに逃れた。ロヒンギャに対する迫害の過去を考えると、バングラデシュで暮らすロヒンギャ難民の数は推定100万人に達するとみられる。
アムネスティは、2017年の国軍によるロヒンギャ攻撃を人道に対する罪とみなし、ミン・アウン・フライン上級将軍ら高官に対する捜査を国際機関に勧告している。
国際刑事裁判所(ICC)は2016年と2017年の犯罪容疑を捜査しているが、ミャンマーがICC規程を批准していないため、捜査はバングラデシュを含む他の国での犯罪に限られている。国連安全保障理事会は、ミャンマーに関わる全事案をICCに付託し、ICCによる捜査ができるようにすべきだ。
2021年2月1日に軍事クーデターを起こしたミン・アウン・フライン国軍総司令官は現在、国家行政評議会の議長を務めている。クーデター以来、評議会を支持する勢力は5,000人以上の市民を殺害してきた。
アムネスティは、国軍による拷問、恣意的な拘束、違法な空爆を記録してきた、2022年11月には空爆を助長する航空燃料の供給停止を求める活動を開始した。その結果、複数の企業が航空機燃料のサプライチェーンから撤退したが、ミャンマーへの燃料の出荷は続いている。
アムネスティ国際ニュース
2024年8月21日
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