ミャンマー(ビルマ):国軍による戦争犯罪の捜査を

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2024年1月10日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:

ミャンマー国軍は、2021年のクーデター以来最も激しい武装抵抗を封じ込めようとする中、民間人を殺害し、恣意的に拘束し、金品を盗んでいる。

アムネスティによる住民への聞き取りや写真、動画、衛星画像の分析で、ミャンマー西部のラカイン州パークトウ郡区の民間人や民間施設が国軍の無差別攻撃を受けた可能性が高いことがわかった。また、北部シャン州では、国際的に禁止されているクラスター弾が使用されたことも明らかになった。

ミャンマー国軍の攻撃は、武装集団の攻撃に対する報復だったが、民間人・民用物への無差別攻撃やクラスター弾の使用に対しては、戦争犯罪としての調査が求められる。

国軍による2021年2月のクーデターから3年近く経ち、国際社会の関心度が薄れている一方、市民の苦しみが和らぐ兆しはない。

10月27日、3つの少数民族の武装勢力(アラカン軍、ミャンマー民族民主同盟軍、タアン民族解放軍)が中国との国境にある国軍拠点に対して連携攻撃を開始した。以来、戦闘は激しくなるばかりだった。

国軍と敵対する他の武装組織も活動を活発化させ、領地や国軍の拠点を奪い、兵士を拘束するなどしている。国連によれば、戦闘はクーデター以降で最も激しくなっている。10月27日以降の暴力で、少なくとも民間人378人が犠牲になり、505人以上が負傷した。66万人以上が避難を余儀なくされ、国全体の国内避難民は約260万人に上るという。

避難した民間人を拘束

11月16日朝、アラカン軍がラカイン州パークトウの警察署を占拠し、直後に国軍はこの町への空爆を開始した。

午前の空爆後、国軍は住民に1時間以内の退去を命じた。住民の話ではパークトウの住民2万人のほとんどは即座に避難したが、少なくとも数百人は、午後、国軍の攻撃再開までに避難することができなかった。

住民の避難を手助けする一方で自身は避難できなかった男性の地域支援員は、「ボランティアらが懸命に手助けしたが、多くの高齢者や障がい者が取り残された」と語った。

アムネスティが入手した動画や写真によると、11月16日午後、国軍はヘリコプターからロケット弾、船からは砲弾を住宅街に撃ち込んだ。いずれの兵器もミャンマー国軍しか保有していないものだった。

精度に欠ける武器を住宅地区への攻撃に使う国軍には、軍事目標と民間人・民用物を識別する能力があるのか、という疑問が生じる。今回の攻撃は無差別攻撃の可能性があり、戦争犯罪として捜査されるべきだ。

多くの民間人が町はずれの寺院に避難したが、11月16日の午後に攻撃がやむと、国軍兵士たちは寺院の境内に入り、隠れていた人たちを拘束した。証言によれば、女性3人が殺害された。その夜は大雨だったが、兵士たちは境内にいた100人以上の民間人を建物から閉め出した。後ろ手に縛られている人もいた。明け方になると、今度は彼らを寺院の建物内に閉じ込めた。礼拝堂に閉じ込められて、2日間、食べ物も水も与えられなかったという。金品や携帯電話は取り上げられた。避難していた人たちの拘束は、自由の恣意的剥奪に相当する。

拘束された男性数人は、露店に押し入って食料を奪うよう、兵士に命じられた。

また、両親と町中にいた女性(28歳)によると、11月16日の午後、他の家族と隠れていたところを兵士に見つかり、金品や携帯電話などを奪われた上、男性全員が連れ去られたという。女性と子どもも翌日、拘束された。

拘束した民間人に食事を与えない、大雨にさらすなどの扱いは、人道的扱いの原則に違反する。さらに私有財産の窃盗は、国際人道法で禁止され、戦争犯罪にあたる。

他の人たちの避難を手助けした後、町から出られなくなった男性によると、当初の5日間は夜中も銃声と爆発音が途絶えることはなかったという。男性は他の4人と家屋に隠れたが、携帯電話の充電が2日間で切れ、食料やペットボトルの水も乏しくなった。その後、男性らは近くの村に逃れた。

男性によれば、国軍は避難した人たちへの支援を妨害し、物の値段は上がるばかりだった。また、大雨が続く中、雨水を凌ぐ家屋がなかったり体を包む毛布が不足したりで、特に高齢者や幼子は体調を崩しがちだった。

砲撃の中の避難

11月21日、アラカン軍はパークトウから国軍を追い出し、寺院で囚われていた人たちを解放し、避難の手助けをした。証言によると、避難中も国軍は攻撃をやめなかった。

拘束から解放され、今は近くの村に避難している女性(28歳)は、「砲撃の中を逃げた。今は以前より安全だと思う。ただ、私の町はまだ燃えている」と語った。

その後数日間、国軍はパークトウの家屋や施設への砲撃を続けた。

アムネスティが確認した衛星画像は、12月1日の画像は、市場、民家、宗教施設などが焼け落ちたり破壊された様子を捉えていた。また、病院が破壊され、周辺には大きな穴ができていたことも確認できた。画像情報では、攻撃は11月21日から23日にかけてあったことがわかる。

クラスター弾の証拠

シャン州北部ナムカム郡区も、12月1日深夜から2日未明にかけて国軍によるクラスター爆弾によるとみられる空爆を受けた。アムネスティは現地で回収された破片の写真を分析し、クラスター弾の残骸であることを特定した。

クラスター弾は無差別に殺傷するとして国際的に禁止され、その使用は戦争犯罪を構成する。

さらに2本の動画から、ジェット機から約10回、爆弾が投下されたこともわかった。機体の形や爆発音から、投下されたのはクラスター弾であることは疑う余地がなかった。タアン民族解放軍によると、この攻撃で住民1人が死亡、5人が負傷し、家屋数戸が損壊した。

クラスター弾の違法な使用は、2022年7月のチン州での会合中の住民がいる校舎への攻撃、同年4月のカヤー州の村への攻撃、さらにカイン州での戦闘でも確認されてきた。

世界が傍観する中、ミャンマー国軍による民間人への残虐行為が続いている。民間人の犠牲者をこれ以上出さないためにも、国連安全保障理事会にはミャンマー国軍への武器禁輸措置を直ちに取ることが求められている。

国軍の行為への不処罰に終止符を打たなければならない。安保理はミャンマーの事案を国際刑事裁判所に付託し、戦争犯罪の加害者が国際法に基づいて裁かれるようにすべきだ。

背景情報

2021年2月のクーデター以来、ミャンマーは人権侵害に歯止めがかからない事態に陥っている。抗議活動への国軍の弾圧で、住民は武器を取って抵抗するようになり、緊張は高まるばかりだ。

アムネスティは2022年5月に発表した調査報告書で、広範な空爆、恣意的な拘束、拷問、略奪、村々の焼き討ちなど、軍が民間人に対して集団懲罰を行っていることを明らかにした。同年8月の報告書では、抗議活動に関与したとされた人びとの逮捕、尋問、拘禁で、治安部隊が拷問等を加えていたことを指摘した。

2022年11月に公表した報告書の中では、国軍による違法な空爆を止めるために、国際社会に対し航空燃料の供給停止を求めた。

2023年10月9日には、カチン州の国内避難民キャンプが国軍の攻撃を受け、子どもを含む28人以上が亡くなり、57人以上が負傷した

アムネスティ国際ニュース
2023年12月21日

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