日本:市民が死刑判決に参加する社会に反対し、死刑廃止に向けた議論を求める

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2010年11月16日
[NGO共同声明]
国・地域:日本
トピック:死刑廃止
私たちは、すべての人びとの人権を保障するという観点から、いかなる場合においても、国家が市民の名の下に死刑という判断を下してはならないと考えます。

そして、死刑制度について十分な情報公開や議論もなされないまま、市民が直接関与して多数決で死刑を言い渡すことができる現在の裁判員制度が進んでいくことに対し、改めて強い懸念を表明します。そして、日本政府および国会に対し、ただちに死刑執行を正式に停止し、死刑廃止に向けた公的な議論を進めるよう要請します。

死刑は、生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的かつ尊厳を傷つける刑罰です。いまや、世界の7割の国ぐにが、この死刑という刑罰を拒否し、法律上あるいは事実上の廃止に踏み切っています。死刑は、暴力を制圧するために暴力を用いるという、憎しみと報復の文化を広げるだけです。そして、このような制度への協力を市民に求めることは、暴力の文化を社会のすみずみに広げることに他なりません。国家がなすべきことは、あらゆる人びとの人権を尊重しつつ、犯罪が起こりにくい社会を作ることであり、死刑という国家の殺人によって、悲しむ遺族を増やすことではないはずです。

日本の死刑制度は、依然として秘密主義のベールで隠されています。例えば、死刑確定者の日々の処遇状況や健康状態、死刑執行命令を出すに至る一連の手続き、さらに死刑執行に関わる刑務官や医務官にのしかかる精神的な負担など、死刑制度の現実は不透明なままです。裁判員に選ばれる市民に対して、死刑制度の問題性や残虐さなどを十分に認識した上で、量刑を適切に判断することができるような情報はほとんど提供されていません。

また、日本の刑事司法制度では冤罪事件が相次ぎ、捜査取調べ中の自白強要や捜査当局による証拠改ざん事件など、数多くの問題が明るみに出ています。国連などからも、再三にわたって日本の刑事司法が国際人権基準を満たしていないとして、強い懸念表明や改善勧告がなされています。死刑制度についても、戦後4件の再審無罪事件があり、無実を叫びながら死刑を執行された飯塚事件のように、死後再審の請求も申し立てられています。

私たちは、日本政府に対し、ただちに死刑執行を正式に停止するよう要請します。また同時に、人の命を奪うという重大な判断と責任を裁判員に負わせることで死刑制度を社会に広げるのではなく、今こそ立ち止まって、死刑制度の現実についてきちんとした情報公開を行い、死刑廃止に向けた公的な議論を進めるよう要請します。

2010年11月16日

呼びかけ団体
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
NPO法人 監獄人権センター

共同声明・賛同団体: 21団体
国連・憲法問題研究会
ビデオプレス
死刑廃止国際条約の批准を求める四国フォーラム
ハンドインハンド岡山
出版労連 三一書房労働組合
死刑廃止を求める市民の声
日本基督教団東京復活教会
かたつむりの会
死刑廃止フォーラムinおおさか
林眞須美さんは無実! あおぞらの会
日本消費者連盟関西グループ
日本キリスト教婦人矯風会「法制度を考える会」
NPO法人青森ヒューマンライトリカバリー
憲法9条世界へ・未来へ秋田連絡会
日本キリスト教団 北松戸教会
全国「精神病」者集団
無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会
東京拘置所のそばで死刑について考える会(そばの会)
大道寺将司くんと社会をつなぐ交流誌 キタコブシ
「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク
永山子ども基金