ミャンマー(ビルマ):迅速な人道支援を行ない、制度的差別に目を向けよ

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2012年6月27日
[公開書簡]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:先住民族/少数民族

ビルマのラカイン州北部で緊張状態が続いている。当局は、避難民に対して全面的かつ公正な人道的支援を行ない、最近、民族や宗教的共同社会間で起こっている紛争について独立的かつ公平な調査を実施するべきである。アムネスティ・インターナショナルは6月19日、声明文でこのように述べた。

ビルマ政府はまた、ラカイン州における非常事態宣言を早急に停止し、国際監視団を受け入れ、少数民族ロヒンギャに対する長年の制度的、社会的差別に対処すべきである。

6月8日に少なくとも8地域で始まった広範な暴力事件は、その後かなり減少した。しかし、ラカインの仏教徒とイスラム教徒、ロヒンギャのイスラム教徒のそれぞれの間で人権侵害は引き続き発生し、治安部隊による人権侵害もまた続いている。とくに、マウンダウとラシダウンで多発している。

政府の発表によれば、少なくとも50人が殺害され、3万人以上が紛争で居住地を追われ、数千の家屋が破壊された。

多くの人びとが食料、飲料水、避難所や医療の不足に苦しんでおり、これらの人びとに対する基本的な人道的援助をただちに実施しなければならない。ビルマ当局は、地元や外国の支援団体がすべての避難民のために十分かつ遅滞なく活動できるように配慮するべきである。先週、バングラデシュは約1500人の国内での避難受け入れを不法に拒否したが、彼らも支援を必要としている。

6月18日、バングラデシュ国境警備隊は、小舟でナフ川を渡りバングラデシュに越境しようとした少なくとも150人のロヒンギャを同様に拘束した。彼らは、6月15日以来続いているマウンダウにおけるビルマ国境警備隊と陸軍による恣意的逮捕から逃れた人びとであった。

紛争の原因について、完全で独立的かつ公平な調査を実施するべきである。そして人権侵害の加害者は、治安部隊も含めて責任を問われなければならない。原因はその結果と同様に重要であり、ビルマ当局はその両方に公平に対処しなければならない、とアムネスティは述べた。

全世界におけるアムネスティの活動経験からすると、非常事態宣言が必要な場合もあるが、それが人びとを保護する一方で、ある種の人権を侵害していることもある。ラカイン州における非常事態を早急に解除して、ASEAN加盟国は監視団を紛争地域に派遣するべきである。

ラカインとロヒンギャの紛争地域が宗教によって分断されているとしても、民族間の平和を保つために宗教の自由が制限されることのないように監視団は努力するべきである。

ロヒンギャに対する制度的、社会的差別はビルマにおける長年の国家政策がもたらしたものであり、紛争以前の状態にもどすだけでは不十分だ、とアムネスティは強調してきた。

1991年から1992年にかけて、数万人のロヒンギャが治安部隊によって強制的に居住地を追われた。国連子どもの権利条約の締約国であるにもかかわらず、ビルマは依然としてロヒンギャの子どもに国籍を与えていない。1982年発布の国籍法により市民権の付与を拒否された人種的、宗教的少数民族は、程度に差はあるものの学習、就業、移動、結婚、信仰および医療への権利について制限を受けている。

元政治囚の人びとの最近の発言によれば、この差別はロヒンギャに対する偏見から生まれ、さらにその差別が偏見を助長してきた。

ビルマ当局は、ロヒンギャの当然の権利である市民権を認め、彼らに対するすべての差別的政策および慣習を廃止しなければならない。

背景

マウンダウで5月28日、27歳のラカイン仏教徒の女性が強姦され殺害された。翌日警察はイスラム教徒3人を容疑者として拘束したもようだ。6月3日、ラカインの人びと約300人がトウングップ地区に集まり、ヤンゴン行きのバスを止めて、加害者が乗車していると思いこんだらしく、イスラム教徒10人を殴打して殺害した。民族と宗教間の相違に根ざした激しい暴力行為が次々と起こり、6月14日まで続いた。6月10日、政府はラカイン州に非常事態を宣言したが、緊張状態は治まっていない。

アムネスティ・インターナショナル公開書簡
2012年6月19日